突如婚約破棄されてしまった私を待っていたのは……楽園でした!? ~彼となら楽しく暮らしていけそうな気がします~
先日、浮気を繰り返していた婚約者アバンから突如婚約破棄を告げられ、困惑しているうちに話は進み、あっという間に関係は終わりを迎えてしまった。
しばらくバタバタしていて若干疲れていた私のもとへ飛び込んできたのは、次なる婚約話で。
またややこしいことになったら嫌だなぁ、と思いつつも、理由もなく拒否することもできなくて、言われた通り青年ライヴェンスのもとへ向かったのだが――。
「はじめまして!」
ライヴェンスは明るく迎えてくれた。
「はじめまして、いきなり失礼いたします。ラピスと申します」
「もうご存知かもしれませんが、ライヴェンスです!」
赤茶の髪が印象的な彼は陽気な人だった。
「ラピスさんが来てくださるとお聞きしましたので、クッキーを色々作ってみました!」
「く、クッキー……ですか?」
「はい。実は噂で聞いたのです、ラピスさんはクッキーがお好きだと。それで、お迎えするにあたり、たくさん作ってみようと思ったのです」
「そうでしたか……それは、嬉しいです、ありがとうございます」
クッキーが好き、それは事実だ。
だがまさかこんな形でクッキーを用意してもらえるとは思っていなかったので今はまだ戸惑っている。
「ではこちらへ!」
案内された先には――大量のクッキーは並べられている部屋があった。
「す、すごいっ……!!」
香ばしい匂いに満たされた部屋。
何もせずそこにいるだけでも幸福感が湧き上がってくる。
「では一種類ずつ紹介しますね」
「お願いします」
ライヴェンスは柔らかく頬を緩め「では右端から」と紹介を開始する。
「まずこちら。ハートの形のものですが、ココアパウダーをふんだんに練り込んだものです。このココアパウダーは、この国で一番人気のあるお菓子店で販売されているココアパウダーなのです」
「そうなのですね……!」
「そしてこちら、赤いものですが、ザウルスフルーツの果汁が入っているクッキーです。酸味が爽やかです。あと、怪獣が吐く炎のような形にしてみました」
「形も可愛いです」
「そしてこのリンゴの形のもの、これは、世界中から集めた百五十種のリンゴの果実で作ったジャムが中に入っています」
「百五十種も!?」
「はい。種類が多い方が厚みのある味わいになりますからね」
「そ、そうなのですね……」
手作りクッキーについて語るライヴェンスは子どものように真っ直ぐなすごく楽しそうな顔つきになっていた。
「ちなみにこのリンゴクッキー、ここの部分が外れます」
「わっ」
「ここを外すと中のジャムが見えるようになっているんです。宝箱、と言うと、表現が変かもしれませんが、そういったようなイメージで作ってみました」
「素敵ですね」
「で、これは、右から順に……チョコチップ、キャンディチップ、バナナ、キャラメル、です。形は一緒ですが味を色々変えてみたものです」
「キャラメルもあるのですね! 美味しそう!」
「そしてこちらは食用ラメを入れた宝石クッキーです。この食用ラメは安全なものですから健康への影響はありません」
「キラキラしてますね」
ああ、この人は、本当にクッキー作りが好きなんだなぁ……。
そんな風に思った。
「で、これはですね、東国で人気のお餅という食べ物を小さくして練り込んだ大きめのクッキーです。外はパリパリですが中は若干もちっとしています。放置していたから湿気たわけではありませんよ」
「食感の違い、楽しそうですね」
「まだまだあります! 引き続き紹介します! この虹色のものは――」
話は永遠に終わりそうにない。
けれども私は少しホッとしていた。
こういう人となら一緒に生きていけそうだと思えていたから。
クッキー作りが大好きな人との毎日、何だかとても楽しいものとなりそうだ。
……ちなみにアバンはというと、私との関係を終わらせた後も平気で八股くらいしていたらしく、激怒したその中の一人の女性に襲われ落命したようだ。
◆終わり◆




