第9話:崩壊する王国と、王子の焦燥
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第9話は、帝国で幸せを掴みつつあるエルサとは対照的に、破滅へと突き進む王国の様子をお届けします。
自分のしでかしたことの大きさにようやく気づき始めた王子の、醜い足掻きをお楽しみください。
「——何だと? 門前払いされただと!?」
王国の豪華な会議室に、カイル王子の怒号が響き渡った。
命からがら逃げ帰ってきた使者たちは、床に額を擦り付け、ガタガタと震えている。
「は、はい……。アステリアの皇帝、ゼノスが自ら現れ、『エルサに触れたければ帝国軍すべてを相手にしろ』と……。あの恐ろしい魔圧、あれは正気ではありません……!」
「黙れ! たかが小娘一人のために、帝国が本気で戦争を仕掛けるはずがないだろう! 脅しだ、ただのハッタリに決まっている!」
カイルは机を激しく叩いた。
だが、彼の強がりとは裏腹に、王国の現状はもはや「ハッタリ」で済むレベルを超えていた。
窓の外を見れば、かつて「聖女の奇跡」と謳われた美しい王都の街並みは、どす黒い霧に包まれている。水源の腐敗は止まらず、民衆の間では「本物の聖女様を追い出したバカ王子」という噂が、止めようのない勢いで広まっていた。
「カ、カイル様ぁ……。もう、私の魔力じゃ抑えきれないわ……」
隣で新聖女のアリアが、ひび割れた水晶玉を抱えて泣きべそをかいている。
彼女の自慢だった金髪は、浄化作業のストレスでバサバサになり、かつての面影はない。
「うるさい! 役立たずめ! エルサなら、鼻歌まじりにやっていたことだぞ! なぜお前にはできないんだ!」
「そんなこと言ったって……! あの女が異常だったのよぉ!」
カイルは奥歯を噛み締めた。
(認めない……。あんな地味で、俺の顔色ばかり伺っていた女が、この国の生命線だったなどと……!)
だが、現実は残酷だ。
その時、血相を変えた騎士が飛び込んできた。
「報告します! 国境の砦が、突如として出現した魔物の大群により陥落! さらに、アステリア帝国側から『国交断絶』の親書が届きました!」
「……なっ、国交断絶……!?」
カイルの顔から血の気が引いた。
アステリア帝国は、この大陸最大の資源大国であり、軍事国家だ。
そこからの支援が途絶え、さらに魔物の侵攻が始まれば、この国は一ヶ月も持たずに地図から消える。
「エルサ……。あの女さえ、あの女さえ戻れば……!」
カイルの瞳に、狂気じみた執着が宿る。
彼はまだ理解していなかった。
自分たちが捨てたのは単なる「薬師」ではなく、一国の運命そのものだったということに。
そして、今のエルサはもう、王子の声など届かないほど、温かな「皇帝の腕の中」に守られているということに。
ついに「国交断絶」まで踏み切ったゼノス皇帝。
王国側はもう後がありませんね。
次回、エルサが「帝国の聖女」として公式に認められる、華やかな夜会の幕開けです!
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