表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された万能薬師は、隣国の冷徹皇帝に溺愛される  作者: La Mistral
第6章:【新生の神話編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/84

第72話:【言霊】漆黒の産声、あるいは死の宣告

いつも『聖女監禁録』をお読みいただきありがとうございます。

前話では、産み落とされた「新王」がついに言葉を発し、エルサを自らの『濾過器フィルター』として定義しました。もはや母ですらなく、ただの機能的な部品へと堕とされた彼女。

第73話では、成長を遂げた青年(新王)と、その父である魔王ゼノスが、一人の女を「分け合う」という、あまりに身勝手で背徳的な遊戯が始まります。

「どちらに、壊されたい?」

左右から迫る二人の王。その熱量に浮かされ、自分という境界線が溶けていくエルサ。

三人の歪な会話と、そこに漂う肌を刺すような緊張感を、どうぞ最後までお愉しみください

少年の唇が、寄木細工の仕掛けが解けるように、不自然なほど滑らかに弧を描いた。


人の形を借りているだけの、完成された「魔性」がそこにある。


「――お前が、母か」


その一言が、私の空洞になった胸を物理的な衝撃を伴って震わせた。


かつての私なら、その響きに救いを見出しただろうか。


だが今の私に去来したのは、自らの存在を根本から否定されるような、鋭利な刃の感覚だった。


「いいえ……。私は、ただの器です」


「器?」


少年は首を傾げ、黄金の瞳で私の内側を値踏みするように射抜く。


「はい。あなたの糧となるための……土に、過ぎません」


私は感情を排し、事実を淡々と述べる精密機械のように答えた。


少年はその答えを吟味するように目を細め、玉座に深く腰掛けるゼノス様を見上げた。


「父上。この女は、空っぽだ。名も、心も、もう残っていない」


ゼノス様が、私の髪を無造作に掴み、仰け反らせるように顔を上げさせた。


頭皮が引きちぎれるような痛みが、唯一、私がまだ生きていることを思い出させる。


「そうだ。お前のために、俺がすべて削ぎ落とした。……気に入ったか?」


少年の冷たく、しかし底知れぬ魔力を孕んだ掌が、私の首筋をゆっくりと這い上がる。


その指先が触れるたび、肌に刻まれた漆黒の紋様が、毒を流し込まれたように疼いた。


「父上の魔力は、私にはまだ……強すぎる」


「……あ、……っ」


私の喉から、抗いきれない鳴き声が漏れる。


少年の指が、私の頸動脈を圧迫し、血流とともに魔力を逆流させていく。


「お前の体を通せ。毒を抜くフィルターのように、私へ差し出せ」


それは、死を宣告されるよりも過酷で、効率的な「処理」の通告だった。


ゼノス様から供給される神の如き魔力を、私の脆い肉体という「ふるい」にかけて不純物を取り除き、少年に捧げ続ける。


私という個の価値は、今、完全に「部品」へと定義し直された。


ゼノス様が、私の耳元で低く囁いた。その吐息だけで、私の回路が焼き切られそうになる。


「聞こえたか、エルサ。この子が欲している」

「ですが、ゼノス様……。それでは、私の回路が……」


「壊れたら直してやる。……やれ」


主君の非道なまでの期待に、私の体は反射的に震えた。


「……っ、はい。……喜んで、捧げます」


少年の手を通じ、暴力的な魔力の奔流が私の中に逆流し始める。


「あ、……ああぁぁぁ……っ!」


血管が沸騰し、視界が真っ白な火花に覆われる。


少年の小さな掌は、私の命を啜るたびに、より濃厚な闇を纏い、より不遜な王のオーラを放ち始めた。


「……もっとだ。もっと、純くしろ」


「……壊れ、る……私、が……消えて……っ」


激痛の中で、少年の黄金の瞳が目前に迫る。


それはもはや、かつて私の胎内にいた愛しき生命ではなく、私という存在を完全に消し去るための「深淵」そのものだった。


「消えればいい。お前は、私の一部になるのだから」


少年の声が、脳髄に直接響く。抵抗する意志さえ、その響きの中に溶けていく。


「……あ、……あ……。そう、……ですね。……私は、……あな、たの……」


「お前は、俺たちの影だ。名も無き、永遠の影だ」


ゼノス様の宣告が、白濁していく私の意識に最後の一撃を加えた。


私は、ただ熱い魔力の奔流に身を任せ、自分という境界線が溶けて、一滴の雫となって彼らの海へ消えていくのを、深い、深い恍惚とともに受け入れていた。

第73話、完結までお読みいただきありがとうございました。

ゼノス様と新王。二人の主君によって「共有される玩具」となったエルサの末路。

かつての聖女としての尊厳は、二人の魔力が激突する奔流の中で、跡形もなく焼き切られてしまいました。

「お前は、俺たちの影だ」

その宣告を受け入れ、自ら道具であることを望む彼女の姿に、皆様は何を感じられたでしょうか。

「二人の王に翻弄されるエルサの絶望にゾクゾクした!」「親子で一人の女を弄ぶ関係性が最高に背徳的!」と思われましたら、ぜひ【★評価】や【ブックマーク】で応援をお願いします!

次回、第74話。

二人の主君による「共有」は、さらに具体的な『調教』へと段階を移します。完全に自我を漂白されたエルサに、ゼノス様が命じる「最後の奉仕」とは。

引き続き、深淵へと堕ちゆく物語にお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ