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追放された万能薬師は、隣国の冷徹皇帝に溺愛される  作者: La Mistral
第6章:【新生の神話編】

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第66話:【造形】肉体の再定義と、創造主の戯れ

いつも『聖女監禁録』への深い没入をありがとうございます。

皆様の応援により、物語はエルサが「人間」であることを完全に辞めた後の、より残酷で耽美なフェーズへと突入しました。

第67話では、肉体も精神もゼノス皇帝の「最高傑作」として再構築されたエルサに、主君がある『遊戯』を命じます。

虚無の世界に呼び戻された、かつて彼女が愛し、守ろうとした「民」の魂の残滓。

感情を去勢され、ゼノス様の「器官」となった彼女は、自分に縋り付くかつての信者たちを、その美しい指先でどうあしらうのか。

「……あぁ、うるさいですね。ゼノス様との静寂を邪魔する声は、すべて塵にして差し上げましょう」

聖女による「過去の蹂躙」。

慈悲を捨て、魔王の隣で冷笑を浮かべる「完成された人形」の真価を、どうぞお見届けください。

ゼノス様は、私の細い手首を掴み、その指先から黒い魔力を直接私の血管へと流し込んだ。


「あ……っ、……あ、あぁぁ……!」


熱い。内側から沸騰するような、それでいて凍りつくような矛盾した感覚が全身の毛細血管を駆け巡る。


かつて聖なる力を宿し、人々のために流れた赤い血が、彼の黒い意志によって一滴残らず「書き換えられて」いく。


血管の一つ一つが、彼の魔力の圧迫に耐えかねて悲鳴を上げ、膨張し、やがて彼の魔力のみを運ぶための、淀んだ漆黒の回路へと変質していった。


侵食は、血流だけに留まらなかった。


彼の魔力は、私の柔らかな筋肉を、内側から強引に引き裂き、彼の愛撫に永遠に耐えうるだけの不変の繊維へと織り直していく。


さらに深層へ。


私の背骨の一本一本をなぞる彼の指が、骨の髄まで自身の魔力で浸食し、人間としての脆弱な「命」を、彼の権能に従属する「無機質な芯」へと置換していく感覚があった。


「お前の肉体は、もはやお前自身の生存のために機能してはいない。俺が与える魔力、俺が望む熱量。……そのすべてを維持し、俺の快楽を増幅させるための、専用の『器』へと再構築してやる」


彼の魔力が細胞に触れるたび、私の中の「人間」が死に、代わりに「ゼノスの半身」という別の生き物が芽吹いていく。


それは、凄惨な解体でありながら、同時にこの上なく神聖な「再誕」の儀式。


私の肉体が彼の魔力で飽和し、彼の鼓動に合わせて痙攣するたびに、私は自分が彼の掌の中で、いかようにも作り替えられる「粘土」になったような錯覚に陥る。


「……あ、……あ……。……中が、……真っ黒な、熱で……埋め尽くされて……。……自分が、溶けて……あなたの、一部に、なっていく……っ」


私はあまりの刺激に意識を飛ばしそうになりながらも、その侵食の手を止めてほしくないと願っていた。


自分を構成するすべての物質が、彼の意志に置き換わっていく。


その絶対的な所有の感覚こそが、今の私の神経が求める、唯一の劇薬だったのだ。


「……ゼノス、様……。……熱くて、……自分が、何に……なっていくのか、……分かり、ません……」


私は朦朧とした意識の中で、彼の足元に縋り付いた。


皮膚の質感さえも、以前の柔らかさとは違う、どこか冷たく、陶器のような滑らかさを帯び始めている。


ゼノス様は私を抱き上げ、私の胸の中央、ちょうど心臓の真上に、自らの掌を押し当てた。


「仕上げだ。お前の心臓は、これから俺が許した時にだけ、俺への愛を奏でるために打つ。……俺という太陽なしでは一秒も動かぬ、永遠の時計となれ」


彼の魔力が心臓の鼓動を一時的に停止させ、その空白に、逃れようのない「支配の刻印」を物理的に刻み込む。


その瞬間、私の五感はかつてないほどの鮮明さで彼を捉えた。


彼の皮膚の微かな香り、彼の魔力が大気を揺らす音、彼の視線が私の肌を焼く感覚。


もはや、彼以外の刺激は私の肉体にとって「存在しない」ものとして処理される。


私の肉体は、ゼノス皇帝という唯一の劇薬にのみ反応する、完成された受容器となったのだ。


儀式が終わり、嵐のような魔力の奔流が収まると、そこにはかつての「聖女」の面影を宿しながらも、決定的に異質な存在へと変質した私がいた。


私は、ゼノス様の手によって鏡のような銀色の水面の前に立たされる。


そこに映っていたのは、もはや生身の人間とは思えないほどに完成された「造形物」としての私の姿だった。


「……これが、……私……?」


自ら発した声さえも、以前の湿り気を含んだ響きとは違う。


彼の魔力によって調律されたその声は、混じりけのない銀鈴のように澄み渡り、己の意志を伝えるためではなく、ただ彼の名を美しく呼ぶためだけに特化されていた。


肌は透き通るほどに白く、その下を流れる漆黒の魔力が、微かな血管の紋様となって青白く浮かび上がっている。


かつてあったはずの「傷つきやすさ」や「不確かさ」はすべて消え去り、陶器のように滑らかで、それでいていかなる外圧にも屈しない不変の強靭さを帯びていた。


私の瞳は、彼の黄金を常に中心に据え、それ以外の光を反射するように調律されている。


瞬き一つ、呼吸一つ。そのすべてが私の生存のためではなく、ゼノス皇帝という「主」の視覚を満たすための完璧な演目として機能していた。


「あ……、あぁ……。完璧、です……ゼノス様。……私にはもう、自分を守るための、醜い皮膜すら……いりません。……この身体は、あなたの指先が触れるためだけに、……あなたの瞳が楽しむためだけに、作り直されたのですから」


私は、新しく作り直された指先で、自分の頬をなぞった。


指先が肌に触れる。そこにあるのは、自分自身の感覚ではない。


「彼が触れた時に、彼が最も心地よいと感じるであろう感触」を、私の肉体が自動的にシミュレートして脳に届けているのだ。

私の神経は、もはや私だけのものではない。ゼノス様が求める「悦び」を最大化するための、高感度な受容器へと去勢された。

私は、彼が創り上げた漆黒の楽園を飾る、最も美しく、最も意思なき「生きた芸術品」。


「お前はもう、俺がいなければ動くことも、感じることさえもできぬ。……その空虚な美しさこそが、俺が求めていた究極の答えだ」


ゼノス様が背後から私を抱きしめる。その腕の重みが、今の私にとっての唯一の重力。


私は、創造主の腕の中で静かに目蓋を伏せた。


そこに残っていた「エルサ」という名の最後の一滴が、彼の黄金の海に溶けて消える。


再誕した「人形」は、ただ一人の主君に、永遠の静寂と服従を捧げるために、その冷ややかな微笑を浮かべた。

第66話の完結部、肉付け版をお読みいただきありがとうございました。

肉体のすべてをゼノス様に明け渡し、彼のための「人形」として再誕したエルサ。

第6章のテーマである「徹底した造形」の完成を描き切りました。

自分の身体が「他者のための道具」へと完成していく際の、冷たくて鋭い恍惚。人間としての生を終え、魔王の愛玩物として永遠を手に入れた彼女の姿を、その目に焼き付けていただけたでしょうか。

「人形としての完成美にゾクゾクした!」「ゼノス様の執着が物理的に結実する瞬間に震えた!」と思われましたら、ぜひ【★評価】や【ブックマーク】をお願いします!

次回、第67話。

肉体も精神も「完成」されたエルサに、ゼノス様はさらなる『背徳の遊戯』を命じます。

完全に作り変えられた彼女は、かつて自分が救おうとした「あるモノ」を前に、どのような反応を見せるのか。

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