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追放された万能薬師は、隣国の冷徹皇帝に溺愛される  作者: La Mistral
第6章:【新生の神話編】

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第62話:【洗礼】再構築の指先と、空白の服従

いつも『聖女監禁録』への深い没入をありがとうございます!

おかげさまで昨日は 日間 1,300 PV を維持し、第6章の幕開けを華々しく飾ることができました。

第62話では、虚無の世界で「概念」となったエルサに対し、ゼノス皇帝による徹底的な「再構築」が始まります。

過去の記憶も、人間としての常識も、聖女としての矜持もすべて泥に溶け去った今、彼女は真っ白なキャンバス。

その空白に、ゼノス様はどのような「愛」を刻み、どのような「悦び」を教え込むのか。

「……忘れてはいけない。お前の呼吸の深さも、その肌が感じる熱も、すべて俺が許したからこそ存在するのだ」

全能感溢れる支配と、それに甘んじる究極の隷属。

二人だけの新世界で繰り広げられる、神聖で冒涜的な「教育」の時間をどうぞお楽しみください。

ゼノス様は、私の細い首筋に指先を食い込ませ、私の視線を強制的に自らの黄金の瞳へと固定した。

そこには慈悲も憐れみもなく、ただ獲物を完全に解体し、自分好みに組み直そうとする創造主の冷徹な熱だけが宿っている。


「エルサ、その瞳を開け。お前が最初に見るべきは、俺という太陽だけだ。それ以外の景色は、お前の純粋さを汚す不純物でしかない」


ゼノス様の声が脳髄に響くと同時に、私の視界から「色」が剥ぎ取られていった。


かつての聖女として、私は世界の美しさを愛していたはずだ。


朝露に濡れる草花の緑、民衆の屈託のない笑顔、神殿のステンドグラスから差し込む七色の光。


しかし、それらすべての色彩が、ゼノス様の魔力によって強制的に「無」へと書き換えられていく。 


私の視神経は、もはやゼノス様の存在以外の光を拒絶するように作り変えられた。


彼がいない場所はただの虚無であり、彼が触れない景色は存在しないも同義。


私の瞳は、彼の黄金の輝きを「生存に必要な唯一の光」として定義し、それ以外のすべての視覚情報を「死」として認識するよう去勢されたのだ。


「……あ、……あ……、視界が……あなた、だけで……染まって、いきます……」


感覚の去勢は、視覚だけに留まらなかった。


ゼノス様の指先が私の肌をなぞるたび、私の中に残っていた「痛み」や「恐怖」という防衛本能が、一つずつ丁寧に、そして残酷に摘み取られていく。


かつてなら拒絶の悲鳴を上げたであろう強引な愛撫さえも、今の私にとっては、己の輪郭を確認するための唯一の「刺激」へと変換される。


「お前の皮膚は、俺の指先を知るためだけに存在する。お前の耳は、俺の吐息を聞き分けるためだけに。……それ以外の感度は、お前を惑わせるだけだ。俺がすべて、『幸福』という名の一色に塗り潰してやろう」


彼の魔力が脊髄を駆け上がり、私の五感の感度を極限まで尖らせたかと思えば、次の瞬間には彼以外のすべてに対して完全に麻痺させる。


それは、徹底的な「感覚の占有」だった。


私は、自分の意志で呼吸することさえ忘れ、彼の肺が動くリズムに合わせて酸素を求める「共生生物」へと堕ちていく。


私の身体は、ゼノス皇帝という唯一の主君を感受するためだけの、歪で、高感度な受容器へと作り変えられた。


「……ああ……。……もう、何も、いりません。……あなたの指が、触れる場所だけが……温かくて……それ以外は、もう、……何も感じないのです」


私は、感覚を去勢された空虚な悦びの中で、彼の腕に自らを埋めた。


もはや、彼が私を殺そうと、愛でようと、私の神経が奏でるのは「至福」という単一の旋律のみ。


ゼノス様という毒に五感を上書きされた私は、彼がいなければ「無」に帰すしかない、完璧な愛玩物ドールへと完成された。


ゼノス様は、私の細い指を一本ずつ取り、自らの唇に寄せた。


彼の熱い吐息が指先を撫でるだけで、私の魂の奥底が熱く溶け出し、形を失っていく。


「かつてお前が守ろうとした『民』や『神』の名前を言ってみろ」


「……わかり、ません。……そんなもの、最初から……いなかった、はずです」


嘘を言っているのではない。


ゼノス様の教育は、私の記憶を物理的に消去するだけでなく、その価値観さえも反転させていた。


私を敬い、縋っていた民衆の手は、今や私の肌を汚す不浄な泥の記憶として処理されている。


私を導いていたはずの神の言葉は、ゼノス様という唯一の真理を妨げる、耳障りなノイズとして捨て去られた。


真っ白になった私のキャンバスに、ゼノス様が一つずつ、新しい「教典」を刻み込んでいく。


「お前の主は?」


「……ゼノス、様」


「お前の生きる意味は?」


「……あなたの、一部として……消えること」


「お前の幸福は?」


「……あなたの、指先に……触れられる、こと……」


一問一答が繰り返されるたび、私の精神はより深く、より強固に、彼という牢獄に根ざしていく。


それは監禁という言葉では生ぬるい。魂の改造であり、存在の収奪だ。


ゼノス様は私の身体を引き寄せ、その深い抱擁の中に閉じ込めた。


物理的な肉体を取り戻し始めた私の肌は、驚くほど白く、そして血が通っているとは思えないほどに冷ややかだ。


ただ、彼に触れられている箇所だけが、呪いのような熱を放っている。


「良い子だ、エルサ。……お前はもう、俺がいなければ自分の名前さえ思い出せない。……いや、思い出す必要もない。お前は俺の吐息で動き、俺の眼差しで死ぬ。……それだけが、この新世界の唯一の真理だ」


私は、彼の胸に顔を埋め、彼が流し込む濃厚な魔力に身を委ねた。


思考は停止し、自意識は彼の所有物としての喜びで満たされる。


かつての聖女の面影は、今やゼノス皇帝の膝の上で、空っぽな瞳を微かに揺らす「最高傑作の剥製」へと昇華されていた。


この虚無の世界に、もう「エルサ」という名の他者は存在しない。


ただ、神の傍らに侍る、美しい空虚があるだけだった。

第62話をお読みいただきありがとうございました。

虚無の世界で始まった、ゼノス様による徹底的な「再構築」。

聖女としての残滓すらも、彼の指先一つで書き換えられていくエルサの姿。

彼女が完全に「個」を失い、ゼノス様の器官へと堕ちていく様子を肉付けしました。

魂の「去勢」と「再定義」。

この静かなる狂気と美しさを感じていただけたでしょうか。

「エルサの空っぽな瞳にゾクゾクした!」「ゼノス様の支配がもはや神々しい!」と思われましたら、ぜひ【★評価】や【ブックマーク】をお願いします!

次回、第63話。

ゼノス様が作り上げたこの「新世界」に、初めての『刺激』が訪れます。

完全に作り変えられたエルサの前に現れる、予期せぬ「残骸」とは。

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