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追放された万能薬師は、隣国の冷徹皇帝に溺愛される  作者: La Mistral
第5章:【終末の楽園編】

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第41話:【侵食】聖女を失った世界の腐敗

いつも熱烈な応援をありがとうございます!

昨日2/20は、なんと 2,474 PV という驚異的な記録を達成いたしました!

読者の皆様の期待がこれほどまでに膨らんでいる今、物語は離宮内の静寂を突き破り、崩壊の一途をたどる「外の世界」へと視点を移します。

第41話では、浄化の源であるエルサを失った地上が、いかに無残に腐り果てていくかを徹底的に描写しました。

「聖女を出せ!」と醜く叫ぶ民衆。

だが、その声は数千フィート上空の、ゼノス皇帝の腕の中にいる彼女には届きません。

絶望が偽りの聖女を生み出し、さらなる混沌を呼ぶ。

離宮の「甘美な地獄」と、地上の「現実の地獄」の対比を、特大ボリュームでお楽しみください。

ゼノス皇帝がエルサを「歴史」から抹消し、空中離宮という名の神域に閉じ込めてからというもの、皮肉にも彼女がかつてその祈りと自己犠牲によって抑え込んでいた「世界の毒」が、せきを切ったように各地で噴出し始めていた。


聖女という浄化の装置を自らの手で破壊し、追放した人類に、もはやその毒を浄化する手段は残されていなかった。


エルサという唯一の、そして絶対的な浄化の根源を失った地上では、地脈が急速に黒く腐敗し始めていた。


かつて彼女が素足で歩くだけで枯れ木に芽が吹き、泥水が清流へと変わった奇跡の大地は、今や粘り気のある黒い泥が這いずる死の荒野へと変わり果てている。


アステリア帝国の辺境、かつて豊穣を誇った村々では、井戸から噴き出すのは水ではなく、鼻を突く腐敗臭を放つ黒濁の液体だった。


作物は植えるそばから黒く変色し、収穫を待たずに腐り落ちる。飢えた民衆は、かつてエルサを「災厄の聖女」と呼び、地下室へ追いやった自分たちの過去を、今さらになって…


「あれは間違いだった」と、


身勝手な悔恨の言葉で塗り替え始めていた。


「聖女を出せ! 彼女がいなければ、我々の子供は飢え死にする! 皇帝陛下はどこに彼女を隠されたのだ!」


生き残った民衆は、自分たちがエルサの心をどれほど深く傷つけ、追い詰めたかなど棚に上げ、再び彼女の「力」だけを求めて、空に向かって醜い叫び声を上げる。


だが、その声が数千フィート上空に浮かぶ、静寂に包まれた離宮に届くことは、永遠に、二度とないのである。


凄惨を極める混乱の最中、各地でエルサの名を騙り、その容姿を模した「偽聖女」たちが雨後の筍のように現れ始めた。


彼女たちは、絶望に打ちひしがれた民衆の弱みに付け込み、偽りの奇跡と甘い言葉で、ゼノス皇帝への反乱を企てる。


だが、それはゼノス様にとって、離宮内の平穏を彩る、退屈しのぎの「余興」に過ぎなかった。


離宮の中央に鎮座する、外界を映し出す巨大な水晶。


そこに映る、泥にまみれ、偽物の希望に縋り付いては裏切られていく民衆の姿を、ゼノス様は愉悦を含んだ瞳で見下ろしていた。


「……見ろ、エルサ。外ではまた羽虫どもが、お前の名前を汚しながら騒いでいる。あいつらはお前を救うなどと口では抜かしているが、その実、お前の血を一滴でも啜り、自らの延命に利用したいだけの、強欲で浅ましい亡者どもだ」


ゼノス様は、エルサを背後から抱きしめ、その耳元で冷たく、しかし慈しむように囁く。


エルサは、水晶に映る地獄絵図を眺めても、もはや「かわいそうに」という同情も、「自業自得だわ」という憤りさえも感じなかった。


彼女の情緒は、ゼノス様が与える過剰なまでの快楽と、徹底した隔離によって、彼以外の対象には反応しないよう、精緻に作り替えられていたのだ。


「……はい、ゼノス様。あの方たちの声は、もう私には聞こえません。……ただ、あなたの声だけが、私の耳を満たしていれば、それでいいのです」


外の世界がどれほど絶望に叫び、救いの手を求めようとも、ゼノス様は救済の手を差し伸べるどころか、その腐敗をさらに加速させるべく、容赦なく軍を動かした。


彼が行っているのは統治ではなく、エルサ以外のすべてを灰にするための「大掃除」であった。


「エルサがいない世界に、守る価値など、最初から一分もない。……すべてが滅び、文字通り灰塵に帰せば、誰もお前の存在を思い出すことすら、願うことすらできなくなる。世界が消えて、お前と俺だけが残れば、それが真の『完結』だ」


彼の目的は、もはや帝国の繁栄や権威の誇示ではない。


エルサという存在を、人類の記憶からも、歴史の文脈からも、そして物理的な大地からも完全に引き剥がし、この空中離宮という、宇宙の孤島に浮かぶ唯一の「生きた概念」にすること。


ゼノス様の手が、エルサの首筋を優しく、しかし確実に絞めるように這う。


「お前を苦しめた世界は、今、俺の手によって丁寧に破壊されている。嬉しいだろう、エルサ? お前を傷つけた連中が、お前の名前を叫びながら、絶望の中で死んでいくんだ。……さあ、俺を見ろ。俺だけを愛し、俺だけのために呼吸しろ」


外の世界で広がる、黒い泥による侵食。


それはゼノス様の執着が、形を変えて世界を呑み込んでいく様そのものだった。


光を失い、死の臭いに満ちた地上とは対照的に、離宮の中では、かつてないほど濃密で、むせ返るような狂愛の花が、永遠に枯れることなく咲き誇っていた。

第41話をお読みいただきありがとうございました!

物理的な監禁を超え、ついに「世界そのものを滅ぼす」ことでエルサの価値を独占しようとするゼノス様の狂気。

執着の深淵を描き切るために、今回は徹底的な肉付けを行いました。

おかげさまで、本日も PV数 が凄まじい勢いで伸び続けております!

「外の世界の絶望っぷりがもっと見たい!」「ゼノス様のやり過ぎな愛に溺れたい!」と思われましたら、ぜひ【★評価】や【ブックマーク】での応援をお願いします!

次回、偽聖女たちへの無慈悲な裁きと、それを他人事のように眺めるエルサ。

物語をどこまでも長く、深く伸ばしていくために、皆様の熱い反応をお待ちしております!

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