第40話:【神域】不変の檻と、唯一の信仰
いつも熱烈な応援をありがとうございます!
皆様の熱い視線をひしひしと感じております。
第40話、物語はついに「究極の静止」へと至ります。
歴史から消され、世界に忘れ去られた聖女エルサ。そんな彼女にゼノス皇帝が与えたのは、老いも死も寄せ付けない、狂気的なまでの「永遠」でした。
「お前は、この閉ざされた永遠の中で、俺だけの神殿に祀られた唯一の神だ」
窓のない楽園で完成する、神をも恐れぬ独占愛。
アステリア帝国の歴史から「ロザリア」の名が消え、世界がエルサという聖女の存在を忘却してから、離宮の時計は完全にその拍動を止めた。
黄金の魔力によって満たされたこの神域において、移ろいゆく季節や老い、そして死という概念さえも、ゼノス皇帝の傲岸な意志によって否定されていた。
「エルサ、鏡を見るがいい。お前の瞳も、その透き通るような肌も、俺が初めてお前を見出したあの日のままだ。……いや、俺の愛を注ぎ込み続けた分、今の方がより完璧に、より美しく結晶化している」
ゼノスは、寝台に横たわるエルサの頬を、壊れ物を愛でるような手つきでなぞった。
彼の指先から放たれるのは、対象を「最高の状態」で固定し続ける、禁忌の静止魔力。
エルサの肉体は、食事も睡眠も、あるいは時間による劣化さえも必要としない、生きた芸術品へと昇華されていた。
「……ゼノス様、私は……今、生きているのでしょうか。それとも、あなたの夢の中で、ただ形を保っているだけなのでしょうか」
「生きているさ。俺の腕の中で、俺の心臓の鼓動を糧にしてな。外の世界で朽ち果てていく凡夫どもとは違う。お前は、この閉ざされた永遠の中で、俺だけの神殿に祀られた唯一の神なのだ」
ゼノスは、彼女の手首に刻まれた自らの魔力の痣に口付けた。
それはもはや痣ではなく、彼女の血管を巡る魔力そのものがゼノスの色へと完全に置換された証だった。
離宮を包囲する魔力の障壁は、今や物理的な盾としての機能を越え、空間そのものを切り取っていた。
かつては窓のあった場所に、ゼノスは「真実」という名の虚像を投影する。
そこには、エルサが救おうとした民衆が醜い争いの末に自滅し、荒野となった偽りの風景が映し出されていた。
「見ろ、エルサ。お前が命を削ってまで愛した者たちの末路だ。奴らにお前を救う資格などなかった。お前を愛せるのは、お前を理解し、そのすべてを奪い取った俺だけだ」
エルサは、投影された滅びの情景を、どこか遠い国の出来事のように眺めていた。
彼女の脳裏にあるはずの「故郷の記憶」は、ゼノスが日々注ぎ込む甘い忘却の魔力によって、霧の向こうへと追いやられている。
彼女にとって、外界とは「恐ろしく、汚れ、価値のない虚無」であり、この狭く甘美な檻こそが、唯一安全な世界のすべてとなっていた。
「……はい、ゼノス様。あんなに暗い場所へ……私を戻さないでください。あなたがいない世界は、私にとって死よりも恐ろしい……」
「ああ、約束しよう。お前が望まなくとも、俺が死んでも、お前をこの腕から放しはしない」
ゼノスはエルサを抱き上げ、彼女の細い首に、自らの魂の一部を分け与えるような深い接吻を贈った。
エルサの足首を繋ぐ黄金の魔力鎖は、今や彼女の肉体と一体化し、皮膚の一部として黄金の紋様を描いている。
それはもはや拘束ではなく、彼女という存在をこの世界に繋ぎ止めるための、唯一の錨であった。
エルサの意志は、もはや彼女自身のものではなかった。
彼女が何かを望むとき、それはゼノスが彼女に望ませたことであり、彼女が彼を愛するとき、それはゼノスが彼女の魂に刻み込んだ愛の反響でしかない。
だが、その事実に絶望する自我さえも、今の彼女には残されていなかった。
「お前の唯一の信仰は、俺であればいい。お前の唯一の呼吸は、俺の吐息であればいい。……エルサ、お前は俺の欠片であり、俺はお前を抱くことで、ようやく完成する」
光さえも選別され、時間すらも凍りついた黄金の神域。
二人は、終わりなき「静止」の深淵へと、さらに深く、深く沈んでいく。
世界が滅び、宇宙が灰になろうとも、この閉ざされた離宮だけは、ゼノス皇帝の狂おしいまでの独占欲によって、永遠の美しさを保ち続けるのであろう。
そこに、聖女と呼ばれた少女の涙は、もう一滴も残されてはいなかった。
第40話をお読みいただきありがとうございました!
ついにゼノス様の愛は、エルサの肉体そのものを「静止」させ、世界から完全に切り離す「神域」へと到達しました。
自分のためだけに時を止め、記憶さえも塗り替えていく……この救いようのない、しかし甘美な監禁劇を楽しんでいただけたでしょうか。
おかげさまで、過去最高の密度でお届けすることができました。
「この執着、もっと浴びたい!」「ゼノス様の狂愛がたまらない!」と思われましたら、ぜひ【★評価】や【ブックマーク】をお願いします!
皆様の応援が、この「黄金の檻」をより深く、より美しく完成させる糧となります!




