第4話:ここが私の「仕事場」ですか?
お読みいただきありがとうございます。
第4話からは、いよいよ帝国での新生活がスタートします!
エルサにとっては「ただの掃除」のつもりが、周囲を驚愕させていく……そんな無自覚無双をお楽しみください。
アステリア帝国の皇城に到着した私を待っていたのは、想像を絶する光景でした。
「エルサ、今日からここがお前の住まいだ」
ゼノス様が指し示したのは、白亜の壁と繊細な彫刻で飾られた、王宮の敷地内にある独立した離宮でした。一つ一つの窓には最高級の魔導ガラスが嵌め込まれ、庭園には見たこともない珍しい花々が咲き乱れています。
「……あの、ゼノス様。私、馬小屋の隣の物置とかで十分なんですけど。掃除用具と、薬草を乾かすスペースさえあれば……」
「馬鹿を言え。お前は俺の命の恩人であり、この国の最重要賓客だ。それとも、この部屋では不満か?」
ゼノス様は呆れたように溜息をつき、私の背中を優しく押しました。
一歩足を踏み入れると、部屋の空気がわずかに「淀んでいる」のが気になりました。長く使われていなかったのか、魔力の流れが滞り、部屋の隅に薄暗い気配が溜まっています。
(あら、ここも少し『魔力の通り』が悪いみたい。……これじゃあ、ゼノス様が遊びに来た時にリラックスできませんわね)
私は歩きながら、足元にほんの少しだけ——私にとっては指先を振る程度の魔力を流しました。
それは、王国で毎日行っていた「床掃除のついで」の動作です。
すると、どうでしょう。
埃をかぶっていた魔導ランプが、まるで太陽のように温かな光を放ち始め、暖炉には魔法の火がパチパチと勢いよく灯りました。窓ガラスの曇りは一瞬で消え去り、部屋全体が春の陽だまりのような澄んだ空気に包まれます。
「……おい、エルサ。今、何をした?」
背後で、ゼノス様が信じられないものを見るような声を出しました。
「えっ? 床を少しだけ、魔力でサッと拭いただけです。……勝手なことをして、すみません」
私は慌てて謝りましたが、ゼノス様は目を見開いて固まっています。
実は、この離宮は数百年前から魔力回路が複雑に絡まり合い、どんな一級魔導師も修復できなかった「死んだ離宮」だったのです。
ですが、私にとっては「少し散らかった部屋」を片付けるのと、何ら変わりはありませんでした。
伝説の「呪われた離宮」を秒で浄化してしまったエルサ。
ゼノス様はもう彼女を手放す気はなさそうですね。
次回、エルサが淹れた「ただのお茶」が、とんでもない事態を引き起こします……!




