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追放された万能薬師は、隣国の冷徹皇帝に溺愛される  作者: La Mistral
第4章 : 監禁愛と世界を統べる奇跡

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37/58

第37話:【断罪】身勝手な救済と、終わりの口付け

昨日2/19は、日間 2,198 PV という最高の応援をありがとうございました!

第37話は、ロザリア王国の生き残りが「エルサを救い出す」という身勝手な正義を掲げて現れます。

ですが、今のエルサにとって、その手は救いではなく「静寂を壊すノイズ」でしかありません。

ゼノス皇帝が、その「希望」をいかに無慈悲に踏みにじるのか。

逃げ場のない愛の深化を、どうぞご覧ください。

バルディア公国が消滅し、外界との接触を完全に断たれた空中離宮。


窓を失い、黄金のシャンデリアが放つ永遠の光だけが支配するその空間は、ゼノス皇帝がエルサのために作り上げた、完璧なまでの閉鎖的楽園へと変貌していた。


深い静寂が横たわる離宮の深奥。ゼノスが公務で席を外したわずかな隙を突き、寝所の影から一人の男が這い出した。


カイル。


かつてロザリア王国でエルサを「妹」として慈しむ振りをしながら、彼女が地下室へ家畜のように送られる際、自らの地位を守るために沈黙し、目を逸らし続けた騎士団の生き残りだ。


「エルサ……! 無事か! 今、助け出してやる!」


カイルは、己の過去の罪悪感を「正義」へと身勝手にすり替え、英雄然とした顔でエルサの細い手首を掴もうとした。


彼にとって、これは「悲劇の聖女を救い出す自分」という物語に酔い痴れるための、吐き気を催すほど独りよがりな救出劇だった。


だが、カイルの手が彼女の肌に触れるより早く、エルサは冷めた、氷のように無機質な瞳で彼を射抜いた。


その瞳には、再会の喜びも、ましてや彼が期待していたような「救いへの渇望」も、欠片ほども存在しない。


「……カイル様? なぜ、ここにいらしたのですか。誰の許可を得て、私の安寧を乱すのですか」


その声は、平穏な監禁生活を汚されたことへの、決定的な拒絶。


「何を言っている! 狂った皇帝に囚われ、窓もない部屋に押し込められているんだろう!? さあ、こんな地獄から今すぐ……!」


カイルが叫び、無理やり彼女を連れ出そうとした瞬間、寝室の温度が急激に下がり、重苦しい死の魔力がその場を圧殺した。


「外、か。……俺の許可なく、俺の庭に泥足で踏み込んだ報いが、それほど軽いと思ったのか」


闇の中から染み出すように現れたゼノス様は、エルサを背後から抱きしめ、その喉元に鋭い爪を立てるような危うさで彼女を独占した。


カイルは剣を抜こうとしたが、指一本動かすことができない。ゼノス様が放つ圧倒的な威圧感が、彼の魂を直接握り潰していた。


「ゼノス様。……この方は、私を『救い出す』と言っています。かつて私を見捨てたその手で、今さら私に触れようとしているのです」


エルサが、ゼノス様の胸に頬を寄せながら淡々と告げる。


その言葉は、カイルにとって、どんな極刑よりも残酷な絶望だった。


「救う? 飢えさせ、蔑み、地下室に放り込んだ貴様らが、どの面でそれを口にする。お前たちが求めているのは彼女の救済ではない。自分たちが生き残るための、薄汚い『許し』という自己満足だろう」


ゼノス様が指先を僅かに動かすと、カイルの足元から這い出した影の触手が、彼の四肢を容赦なく絡め取った。


「エルサ、見ろ。これが『正義』を語る者の末路だ。奴らはお前を愛しているのではない。お前という『偶像』が欲しいだけだ。だが、お前は偶像ではない。……俺という獣に飼われる、一人の女だ」


影に消えゆくカイルの絶望的な悲鳴が響く中、ゼノス様はエルサの顎を強く掬い上げ、逃げ場を塞ぐように深く、深く口付けた。


「お前を救うのは、俺だけだ。お前を愛し、お前を閉じ込め、お前を壊すのは、俺一人でいい」


エルサは、その狂おしい執着に身を任せ、自分を救おうとした亡霊のことなど、一瞬で記憶の彼方へ追いやった。


この窓のない、光さえ選別された檻こそが、彼女にとって唯一の真実となったのだ。

第37話をお読みいただきありがとうございました!

「助けに来た」という言葉が、今のエルサには届かない。

ゼノス様の独占欲が、彼女の精神すらも完全に塗り替えてしまった瞬間でした。

本日2/20も、皆様の熱いアクセスに支えられています!

「ゼノス様の執着が恐ろしくも美しい!」「救いようのない愛が最高!」と思われましたら、ぜひ【★評価】や【ブックマーク】をお願いします!

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