第29話:【渇望】世界からの祈りと、独占の鎖
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おかげさまで、2/19も深夜3時時点で既に 93 PV を記録しており、皆様の期待を肌で感じております。
第29話は、前話で放たれた「愛の奇跡」が引き起こした余波の物語です。
エルサを聖女として崇め始める世界。
しかし、それはゼノス様にとって「大切な宝を奪おうとする敵」が増えたことに他なりません。
「俺以外の誰にも、その光を見せるな」
激化するゼノス様の監禁愛と、空の上の密室劇。
逃げ場のない黄金の檻で、二人の愛はさらに深く、歪に加速していきます——。
空から降り注いだ「光の雨」は、一晩にして帝都アステリアを、そして世界を変えてしまった。
黄金の離宮が放った輝きは、救済を求める人々の瞳に、消えることのない「聖女の残像」を焼き付けてしまったのだ。
翌朝。空中離宮の窓から下界を望んだ私は、息を呑んだ。
遥か下、雲の隙間から見える帝都の広場には、蟻の群れのように無数の人々が集まり、この天空の城に向かって祈りを捧げていた。
「聖女様……。私たちの光、エルサ様……!」
その祈りの声は、物理的な距離を超え、魔力の共鳴となって私の耳に微かに届く。
だが、その敬虔な祈りが私の心に届くよりも早く、私の視界は漆黒の外套によって遮られた。
「……目障りだな」
背後から伸びてきたゼノス様の逞しい腕が、私の視界を、そして自由を奪うように抱きすくめる。
彼の顎は私の肩に乗せられ、耳元で低く、地這うような声が響いた。
「あいつらはお前を見た。お前の姿も見えず、名前すら知らないはずの連中が、昨夜の光を見ただけで、お前が俺のものであることも忘れ、救いを求めて縋り付いている」
ゼノス様の魔力が、怒りと嫉妬に反応して離宮の空気をピリピリと震わせる。
彼は私の細い指を取り、その一本一本を、確かめるように執拗に愛撫した。
「エルサ。俺は、お前を誰にも見せたくないと言ったはずだ。……例えそれが、救済の光であってもな」
ゼノス様が指を鳴らすと、離宮を包む結界が、これまでの倍以上の密度で再構築された。
純白だった光の壁は、不純物を一切通さない、外側からは中を覗き見ることすら叶わない「鏡面」の盾へと変貌していく。
「これでいい。地上の連中がお前の光にどれほど焦がれようと、お前に触れることはおろか、その姿を幻視することすら許さん。……ここはお前と俺、二人だけの聖域だ」
ゼノス様は私を翻弄するように向き直らせると、逃げ場を塞ぐように壁に押し当てた。
彼の黄金の瞳には、昨夜の情事の余韻よりも深い、底なしの「渇望」が渦巻いている。
「エルサ、お前も望んでいるだろう? あの下劣な人間たちがいる地上へ戻るよりも、俺の腕の中で、愛だけを享受して生きることを」
「……はい。私は、ゼノス様が望まれるなら、この雲の上から一歩も出なくて構いません」
私の答えを聞き、ゼノス様は満足げに、けれどどこか危うい笑みを浮かべた。
彼は私の両手首を片手で軽々と捕らえ、頭上へ固定すると、首筋に深く、自分の所有物であることを刻むように牙を立てた。
「お前がそう言うなら、もっと深い場所へ連れて行ってやろう。……光さえ届かない、俺の愛だけが満ちた、本当の『檻』の中へな」
離宮の外では、いまだに数万の人々が「聖女の奇跡」を仰ぎ見て涙している。
だが、その奇跡の根源である私は今、世界から最も遠い場所で、一人の男の圧倒的な暴力に近い愛に飲み込まれようとしていた。
ゼノス様の手が、私のドレスの襟元に掛かる。
彼の執着は、もはや理性の範疇を超えていた。
世界が私を求めれば求めるほど、彼は私を深く、重く、自分だけのものにしようと縛り付ける。
「エルサ……。お前が世界を救いたいなら、まず俺だけを救ってみせろ。その慈悲で、俺のこの焼き付くような独占欲を、今すぐ癒やしてみせろ」
地上の人々の祈りは、もう聞こえない。
ここにあるのは、狂おしいほどに濃厚な、皇帝と聖女だけの秘められた時間。
誰にも見せない、誰にも渡さない——。
世界を統べる皇帝が選んだのは、世界を救うことではなく、ただ一人の聖女を自分の腕の中で永遠に監禁することだった。
第29話をお読みいただきありがとうございました!
世界がエルサを求めれば求めるほど、ゼノス様が彼女を奥へ奥へと隠してしまう……。
そんな「皇帝vs世界」の構図が、この第3章の醍醐味です。
昨日18日の合計 1,217 PV という勢いをそのままに、ここからさらに物語を加速させていきます!
「ゼノス様の独占欲、もっとやれ!」「エルサが可愛すぎる!」と感じていただけましたら、ぜひ【★評価】や【ブックマーク】で、二人の愛の後押しをお願いいたします!
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