第25話:【寵愛】解けた毒と、皇帝の至高なる贈り物
第24話の濃厚な深夜エピソード、お楽しみいただけたでしょうか?
削除からのリカバリーもいよいよ大台、第25話の更新です!
夜の「嫉妬の毒」が解けたはずのゼノス様ですが、その愛は癒やされるどころか、より純粋で、より逃げ場のない「静かなる狂気」へと進化してしまいました。
「お前を誰の目にも触れさせたくない」
そんな皇帝の歪んだ独占欲が、ついに国家の理(と予算)を無視して、とんでもない「贈り物」を形にしてしまいます。
聖女エルサを閉じ込める、美しくも残酷な「黄金の檻」。
二人の愛が神話の領域へと踏み出す瞬間を、どうぞ見届けてください!
昨夜の熱狂が嘘のように、帝宮の朝は穏やかな光に包まれていた。
重いカーテンの隙間から差し込む朝陽が、寝室の豪華な絨毯を黄金色に染め上げているが、室内を支配する空気は、いまだに昨夜の余熱を含んで重苦しい。
「……ん、……っ」
微かな光に目を覚ますと、すぐ目の前に、整った、けれどどこかあどけなさを残して眠るゼノス様の顔があった。
……そう思ったのは、ほんの一瞬のことだった。
私がわずかに身じろぎをした瞬間、腰を拘束していた彼の太い腕に、骨が軋むほどの力が込められた。
「……逃がさんと言ったはずだ、エルサ」
ゼノス様は目を開けていなかった。けれど、その声は寝起きとは思えないほど低く、そして逃れられない魔力を帯びていた。彼はゆっくりと瞼を持ち上げ、黄金色の瞳で私を、まるで自分の所有物を検分するかのようにじっと見つめる。
「昨夜、あんなに何度も俺の名前だけを呼ぶと誓ったのに。目覚めて一番に考えるのが、俺の腕から逃げ出すことか?」
「そ、そんな……。ただ、喉が渇いたので、お水を……」
「水なら俺がやる。お前は、一指たりとも動く必要はない」
ゼノス様は上半身を起こすと、指先一つでテーブルの上の水差しを宙に浮かせた。魔法で満たされたグラスが私の唇に運ばれる。彼はそれを自らの手で持ったまま、私が飲み干すまで一瞬たりとも視線を逸らさなかった。
昨夜の「嫉妬の毒」は確かに消えている。だが、代わりに居座ったのは、私を指一本分も外の世界に触れさせたくないという、より純粋で、より強固な「監禁に近い溺愛」だった。
ゼノス様は、飲み終えた私の唇を指先でなぞり、そのまま自らの唇を重ねた。朝の光の中で交わされる、深くて長い口付け。
「……昨日のゴミ共のことだが」
唇を離した彼が、事も無げに言った。
「すでに対処は済ませた。……あのような汚らわしい存在をお前の前に出した属国の王たちは、今頃、自国の宝物庫をすべて空にして、這いつくばってこちらへ向かっている。……そして、あの男たちは、二度とお前の視界に入らぬよう、光の届かない地下深くで一生を過ごさせることにした」
彼の声には、一片の慈悲もなかった。
私にとっては、ただの「困った贈り物」でしかなかった彼らを、ゼノス様は徹底的に、再起不能なまでに踏み潰したのだ。すべては、私の瞳に一瞬でも自分以外の存在が映ったことへの復讐のために。
「ゼノス様……。そこまでしなくても……」
「いいや、足りないくらいだ。……エルサ。お前は美しすぎる。そして優しすぎる。だから、俺が守らねばならない。……世界中の男たちの目を潰し、お前を高い塔の上に隠してしまいたいという衝動を、俺がどれほど必死に抑えているか……お前には想像もつくまい」
彼の指が私の髪に絡みつき、引き寄せられる。その瞳の奥にある狂気にも似た愛情に、私は抗うことなどできなかった。
ゼノス様は私を抱き上げたまま、バルコニーへと歩を進めた。
戸惑う私を抱いたまま彼が指し示したのは、広大な帝宮の庭園の一角。そこでは、何千人もの魔導士と石工たちが、異様な熱気で巨大な建造物を組み上げていた。
「見ろ、エルサ。あれがお前への『朝の贈り物』だ」
「……あれは、何ですか?」
「お前のための新離宮、『黄金の揺り籠』だ。……壁のすべてに最高級の防御魔法を刻み、お前が愛する薬草園も、誰にも覗かれない空中に配置した。あそこなら、お前は裸で歩き回っても、俺以外の誰にも見られることはない」
一晩で城の骨組みを作り上げるという、アステリアの国力を無駄遣いしたかのような暴挙。
けれど、ゼノス様にとっては、私のプライバシーを完璧に守ることこそが、国家の運営よりも優先されるべき「正義」なのだ。
「あそこが完成すれば、もうお前をあのような醜い献上品に晒すこともない。……お前はただ、俺の愛だけを食べて、俺が与える宝石に囲まれて笑っていればいい」
ゼノス様は、私の背後から首筋に顔を埋め、深く、深く呼吸をした。
王国で「無能」と捨てられた私が、今、一人の皇帝の理性を狂わせ、地図を書き換え、巨大な城まで建てさせている。
「……エルサ。お前は、俺だけのものだ。永遠にな」
耳元で囁かれたその言葉は、甘い呪いとなって私の全身に溶けていく。
第25話、書き直し版をお読みいただきありがとうございました!
「朝の溺愛」をさらに重く、独占欲をマシマシにして、ゼノス様の狂気的な一面を際立たせてみました。
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皆様の一票が、エルサを閉じ込める……いえ、守るための黄金の檻をさらに輝かせます!




