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現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~  作者: はぶさん


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第97話:目覚めた創造主と、星への道標

静寂。

兄の、あまりにも気高い戦いの全てを、魂で見届けた弟。

その閉じた瞼から、一筋の温かい涙が流れ落ちた。


アルフォンスは、息を呑んだ。

ベッドの上で。

雪と金が混じり合った、神秘的な髪を持つ少年が、その、森の深淵と、二本の世界樹の叡智を宿した、深緑と白銀の瞳を、ゆっくりと、開けていた。

そして、その、乾いた唇が、数ヶ月ぶりに、世界で最も懐かしい響きを、紡ぎ出した。


「……うん。見てたよ」


その声は、まだ、か細く、掠れていた。

だが、その瞳には、兄の、あまりにも気高い戦いの全てを、見届けた、絶対的な誇りと、感謝の光が、確かに宿っていた。

そして、その隙間から、一本の、とても小さな、しかし、確かな意志を持つ手が、伸びてきて、彼の、震える手に、そっと、触れていた。

**その手に触れた瞬間、アルフォンスの魂に、戦闘の疲労も、心の傷も、その全てを洗い流すかのような、どこまでも優しく、そして懐かしい、陽だまりそのもののような温もりが、流れ込んできた。**


「……お帰り、兄さん。――**僕の、英雄**」


その、たった一言が。

アルフォンスが、その生涯で抱えてきた、全ての劣等感と、焦燥感を、完全に、そして永遠に、浄化していった。

彼は、込み上げる熱いものを、もはや堪えることができず、ただ、子供のように、その場に崩れ落ち、声を殺して泣いた。


#### 兄と弟の朝


翌朝。

アルフォンスが目を覚ました時、彼は自室のベッドの上にいた。

窓の外を見れば、ミカエラの聖槍から屋敷を守った、あの『生命の大盾』が、もはや魔法の産物ではなく、まるで最初からそこに在ったかのように、美しい白銀の木々として、屋敷の一部に穏やかに根付いていた。


「……目が覚めたか、兄さん」

ベッドの傍らには、簡素な衣服に着替えたアークが、静かに座っていた。

その姿は、眠る前よりも少しだけ成長しているように見えたが、何よりも違うのは、その瞳に宿る、世界の理そのものを見通すかのような、賢者の深みだった。

「アーク……お前の体は」

「大丈夫。まだ少し、ふらふらするけどね」アークは、穏やかに微笑んだ。「眠っている間、ずっと見てた。兄さんの戦いを。兄さんが、僕の知らないところで、あんなに強くて、あんなに気高い魂を持っていたなんて……」

アークは、兄の手を、そっと握りしめた。

「兄さん。君は、僕が持っていない強さを持っている。ただ人を守るだけじゃない。人の心を、その覚悟で動かす、本物の『王』の強さだ。**僕は、世界を創ることはできても、一人では、それを守り抜けなかった。兄さんがいてくれて、初めて、僕の創った世界は、完成したんだ。**ありがとう、兄さん。僕の世界を、守ってくれて」


その、あまりにも真っ直ぐな、弟からの尊敬と、絶対的な承認の言葉。

アルフォンスは、照れくさそうに頭を掻きながら、心の中で、兄として、ようやく弟と、本当の意味で肩を並べられたことを、確かに感じていた。


#### 聖女の誓い


その日の午後。

領主の屋敷の広間には、奇妙な緊張感が漂っていた。

父とローラン、そしてアークとアルフォンス兄弟。その向かいに、ミカエラが、ただ一人、静かに座っている。

彼女は、自らの聖剣を、テーブルの中央に置くと、深く、頭を下げた。

「……私の処遇は、皆様に委ねます。この剣と共に、私の命を絶つというのなら、甘んじて受けましょう」


その、あまりにも潔い覚悟。

だが、アークは、静かに首を横に振った。

「僕らは、君を裁かないよ、ミカエラさん」

彼は、窓の外で、村の子供たちと、おずおずと、しかし楽しげに遊んでいる、鎧を脱いだ神殿騎士たちの姿を指し示した。

「**君が信じてきた神も、僕が信じる生命も、きっと、その根っこは同じなんだと思う。人を裁くだけの冷たい光だけが、神様じゃない。自ら血を流し、誰かを守ろうとする、その温かい魂の光の中にこそ、本当の聖なるものは宿るんじゃないかな**」

アークは、ミカエラに、その美しい手を差し伸べた。

「だから、僕らの村に、残ってくれないかな。君の信じる『聖』の理と、僕らの信じる『生命』の理。その二つを繋ぐ、最初の『架け橋』として」


その、あまりにも温かく、あまりにも壮大な提案に、ミカエラは、息を呑んだ。

(この方こそ、私が生涯をかけて仕えるべき、本当の光。この方の創る『陽だまり』を、今度は私が守護する剣となるのだ)

彼女は、差し出されたアークの小さな手を、震える両手で、固く、固く握りしめた。

「……はい。この、熾天使ミ-カエラ、いえ、ただのミカエラが、あなたの『架け橋』となることを、我が魂に誓います。――**我が、新たなるあるじ、アーク様**」


#### 星への道標


教会との戦いが、最も美しい形で終結した、その夜。

書斎には、再び、アークと、彼の「最初の仲間」たちが集っていた。

祭壇に置かれた、三つの『陰の世界樹の破片』が、互いに共鳴し、静かな光を放っている。

「……アーク。お前が目覚めたいま、いよいよ、最後の儀式を始めるのだな」

父の言葉に、アークは頷いた。

「うん。眠っている間に、わかったんだ。この三つの破片を、ただ植えるだけじゃダメなんだ。この星の、マナの流れ――『龍脈』が、最も強く、最も清浄な場所でなければ、陰の世界樹は、本当の意味で、再生できない」


「……そんな場所が、この世界のどこに」

ローランの問いに、アークは、部屋の隅に置かれていた、巨大な世界地図の前へと立った。

彼は、その地図の、一点を、静かに指し示した。

大陸の遥か西。いかなる国の領土でもなく、ただ、天を突くように連なる、険しい山脈地帯。

地図には、ただ、こう記されている。

**『龍の背骨山脈』**。


「眠りの中で、原初の賢者と、少しだけ話をしたんだ。彼が言うには、そこにあるらしい。この世界の、全ての龍脈が流れ着き、そして、天の星々の魔力と交わる、唯一の場所。**『星見のほしみいただき』**が」

それは、古の竜たちが、死ぬために登ると言われる、伝説の、世界の天井。

「そこが、僕らの、最後の旅の目的地だよ」


アークは、仲間たちを振り返った。その、深緑と白銀が混じり合う瞳には、世界の夜明けを創るという、創造主の、揺るぎない覚悟が宿っていた。

彼は、最高の英雄となった兄に向かって、悪戯っぽく笑った。


「――準備はいい、兄さん? 世界で一番、美しい日の出を、見に行こう」


***


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