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現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~  作者: はぶさん


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第213話:陽だまりの言語学と、盟主の算盤

####

**陽だまりの朝、二人の仕事**


陽だまりの街は、フィンとリーリエという「次の世代」の使節団を送り出し、新たなる日常の歯車が力強く回り始めていた。

その朝、領主の館の書斎は、大陸の未来を創る『二人の英雄』の、それぞれの仕事場となっていた。


「……ディアナ殿への、この『陽だまりマルカ』第二期鋳造の許可状だが、ローラン殿の確認は取れているか?」

「ミカエラ殿が進めている、連合共通の法典編纂の進捗は?西方の職人気質と、南方の慣習法をどうすり合わせるか、落とし所を見つけねば…」

盟主アルフォンスは、玉座ではなく、巨大な執務机に山と積まれた羊皮紙の束と格闘していた。創造主アークが知の探求を進める裏で、守護者アルフォンスが現実の国を動かす()。その顔には、もはや弟への劣等感など微塵もなく、連合の未来をその双肩に背負う、若き王の自信と責任感が満ち溢れていた。


その、数メートル隣。

アークは、アカデミーから運び込まれた『共鳴の竪琴』と、無数の『結晶体』を前に、全く別の戦いに挑んでいた。

彼の前には、蒼の賢塔のアズライト、そして、星からの使者『エコー』が、真剣な面持ちで座っている。アカデミーの『異星文化交流学部』、その記念すべき最初の研究会だった。

「……アーク様。この波形パターン、昨夜解析した『郷愁』の響きと酷似している。だが、振幅が僅かに違う…。これは、もしや…『後悔』か?」

アズライトが、水晶板に映し出された光の紋様を指し、興奮気味に問う。

「近いですね」アークもまた、その瞳を探求者の光で輝かせていた。「でも、僕には、もっと切実な…『謝罪』の響きに聞こえる。エコー、君はどう思う?」

アークが竪琴にそっと触れ、その旋律を奏でる。エコーは、その蒼い複眼を静かに明滅させると、自らの胸のコアを使い、より正確な、星屑の言語ひびきを返した。

(――ソレハ、償イ。故郷ヲ守レナカッタ、我ラノ、罪)

その、あまりにも哀しい響きに、アークとアズライトは息を呑んだ。


####

**聖なるマスコットの、最重要任務**


アークは、その言語の奥深さ、そして、彼らが背負う悲劇の重さに、時間を忘れて没頭していた。永い眠りから目覚めたばかりの、まだ万全ではない()体力と魔力を、その探求心だけで酷使している。その額に、玉のような汗が浮かび始めた、その時だった。


「きゅぅぅん!(ダメ!)」


それまでアークの足元で静かに丸くなっていたウルが、突如として行動を起こした。

彼は、机の上に軽やかに飛び乗ると、アークが書き留めていた、最も重要な設計図の上に、**どしん!と、その神々しい毛皮の体を投げ出し、座り込んでしまったのだ**()。

「わっ!?こら、ウル、今いいところなんだから…」

「きゅぅぅん!(ダメなものはダメ!休んで!)」

ウルは、一歩も引かない。それどころか、設計図の上でくるりと丸まると、まるで「僕を撫でるまで、絶対にどかないよ」とでも言うかのように、アークの顔を、その漆黒の瞳でじっと見つめ返した。


その、あまりにも可愛らしく、しかし、あまりにも絶対的な妨害行動()。

「……ははっ、降参だよ」

アークは、苦笑いしながらペンを置くと、その温かい毛皮を優しく撫で始めた。ウルの喉から、満足げなゴロゴロという音が響き渡る。

その光景を見ていたアルフォンスが、山積みの書類から顔を上げ、呆れたように、しかし、どこまでも優しく笑った。

「**ほら見ろ、アーク。結局、ウルの方が、お前の扱い方を一番よく分かってるぞ**」()

そこへ、セーラが、ウルの行動を予測していたかのように、完璧なタイミングで、湯気の立つ滋養満点のスープ()を持って現れた。「ほら、創造主様!あんたの仕事は、休むのも含めて仕事さね!さあ、飲んだ、飲んだ!」


アークは、兄の温かい視線と、仲間の差し入れ、そして、膝の上で満足げに眠り始めた(そして絶対にどこうとしない)ウルの重みに、苦笑しながらも、心の底から満たされた幸福を感じていた。(…そうだ。僕はもう、一人じゃないんだ)


####

**二つの世界の、最初の芽吹き**


その日の夕刻。

アルフォンスが、ディアナと連携し、フィンとリーリエが旅する『始まりの村』への、最初の支援物資(『魔力バッテリー』の試作品と、アカデミーの新しい教科書)の輸送ルートを確保()した、まさにその時だった。

『陽だまりの小鳥』が、評議会の窓から、一通の手紙を携えて舞い込んできた。

それは、旅立ったフィンとリーリエからの、記念すべき『第一報』だった。


ローランが、その手紙を、集まった仲間たちの前で、誇らしげに読み上げる。

『――盟主様、アーク様。我々は、ついに『始まりの村』へ到着いたしました。道中は、アズライト様が創ってくださった『道標の水晶』のおかげで、一度も迷うことなく。村は、アーク様がかつて癒やされた時のまま、貧しいながらも、懸命に生きていました』

『そして、リーリエ先生が、村の子供たちの前で、あの『月光花』の種を植えたのです。アーク様から託された『陽だまりの根っこ』の種と共に。すると、信じられない奇跡が起きました。種は、彼女の弟君を想う心に呼応し、その場で、小さな、しかし、どこまでも温かい光の花を咲かせたのです!』

『村の人々は、その、あまりにも神聖な光景に、涙を流してひれ伏し、そして、今、リーリエ先生の周りには、一人、また一人と、その奇跡の育て方を学ぼうと、村中の人々が集まってきています。――アーク様。兄さん。僕らが蒔いた種もまた、確かに、この地で芽吹いています!』()


その、あまりにも温かい報告に、評議会の間に、歓喜のどよめきが広がる。

アルフォンスは、弟の顔を見た。アークもまた、心の底から嬉しそうに、兄に頷き返した。


街の「外」で、フィンたちが蒔いた『陽だまりの種』が芽吹いた。

そして、街の「内」では。

アークが、ふと、机の上の『結晶体』に視線を戻す。

彼の、言語の解析が進んだことで、これまでとは違う、一つの、新しいパターンが、その光の紋様の中に浮かび上がっているのに、彼は気づいた。()


(――ソノ光…アタタカイ…『陽ダマリ』…我ラニモ…ワケテ…ホシイ…)


それは、彼らからの、初めての、明確な『願い』の言葉だった。

アークは、兄と、仲間たちを見回した。

(兄さん。どうやら、僕らのアカデミーに、もう一人、新しい『留学生』を、迎え入れる時が来たみたいだ)


***


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