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現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~  作者: はぶさん


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第153話:目覚めの食卓と、二人の最初の設計図

#### 陽だまりの朝餉


創造主が、陽だまりの街へ完全に帰還した、その翌朝。

領主の館の厨房は、夜明け前から、かつてないほどの幸福な喧騒に包まれていた。

「違う、違うよ!今日のスープは、アーク坊ちゃんが最初に創ってくれた、あの頃の味を再現するんだ!余計なものは一切入れるな!土の香りと、芋の優しさ、それだけでいいんだよ!」

料理長セーラが、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、しかしその手つきは寸分の狂いもなく、若き料理人たちに檄を飛ばしている。

目覚めた創造主の、最初の朝餉。それは、彼女にとって、生涯で最も重要で、最も誇らしい仕事だった。


やがて、食卓に、全ての仲間たちが集う。

父と母、そして、少しだけ緊張した面持ちのアルフォンス。その向かいに、仲間たちに支えられながら、アークが静かに座っていた。彼の、完全に金色を取り戻した髪が、窓から差し込む朝日に照され、キラキラと輝いている。その足元では、主の目覚めが嬉しくてたまらないといった様子で、ウルがそわそわと尻尾を振っていた。

テーブルに運ばれてきたのは、豪華な料理ではなかった。

湯気の立つ、温かいアークイモのスープ。焼きたての、素朴な黒パン。そして、搾りたての、新鮮な牛乳。ウルのための小皿にも、湯気の立つアークイモが特別に盛られている。

全ての始まりとなった、あの日の食卓の再現。


アークは、震える手で、ゆっくりと木のスプーンを握った。そして、その、あまりにも懐かしい香りのスープを、一口、そっと口に運んだ。(……ああ、温かい……)芋の、優しい甘み。土の、力強い香り。そして何より、この一杯に込められた、セーラの、仲間たちの、温かい想い。その、あまりにも優しい味が、永い眠りで凍てついていた彼の魂を、内側から、ゆっくりと溶かしていく。

「……美味しい」

その、か細く、しかし、心の底からの呟きに、その場にいた誰もが、ただ、静かに涙を拭った。


#### 新しい世界の散歩道


その日の午後。アークは、まだ自力で長くは歩けないため、ダグがこの日のために徹夜で作り上げた、美しい木製の車椅子に乗り、兄アルフォンスに押されながら、初めて、生まれ変わった街を巡った。彼の膝の上では、ウルが気持ちよさそうに丸くなり、主と共に新しい世界の景色に目を細めている。

それは、創造主が、自らが創った世界の、最初の答え合わせをするための、静かなる旅路だった。


アカデミーの庭では、フィンに代わり、西方のヴォルカンが、子供たちに、熱を込めて鉄の理を教えていた。「いいか!鉄は、ただの塊じゃねぇ!叩けば応える、最高のダチなんだ!」その、魂の授業に、子供たちは目を輝かせている。

『共同工房』では、南方の農夫と灰嶺の木工職人が、新しい農具の設計について、真剣に、しかし楽しげに議論を交わしていた。

街角のベンチでは、エルフの老婆が、人間の若者に、古の詩を静かに語り聞かせている。


アークは、その全てを、ただ、言葉もなく、目に焼き付けた。

彼が蒔いたのは、ただの『種』だった。だが、兄と仲間たちは、その種を、彼の想像など遥かに超える、色とりどりの花が咲き乱れる、美しい『森』へと育て上げてくれていたのだ。

彼は、車椅子を押す、兄の、あまりにも広く、頼もしい背中を見上げた。

「……すごいよ、兄さん。僕が創ったのは、ただの家だった。でも、君は、そこに、最高の『家族』を創ってくれたんだね」

その、あまりにも真っ直ぐな、弟からの最大級の賛辞。

アルフォンスは、照れくさそうに頭を掻きながら、最高の笑顔で応えた。

「当たり前だ。お前が安心して帰ってこられるように、俺たちが創った家族だからな」


#### 二人の最初の設計会議


領主の館に戻ったアーク。彼の机の上には、アルフォンスたちが格闘していた、『偽りの陽だまり』問題に関する報告書が置かれていた。

アルフォンスは、盟主として、これまでの経緯と、自らが考案した『証明印』と『宿木』の計画を、弟に説明した。

アークは、その報告を、静かに、しかし、誇らしげな笑みを浮かべて聞いていた。

「……素晴らしいよ、兄さん。守るだけじゃない。新しい価値を創り出し、文化で世界を繋ぐ。完璧な、守護者のための設計図だ」

その言葉は、弟から兄への、ただの賞賛ではなかった。自らが不在の間、たった一人で世界を守り抜き、見事に盟主という大役を果たしてみせた、一人の英雄に対する、創造主からの、最大級の賛辞であり、絶対的な信頼の証だった。

そして、彼は、悪戯っぽく笑った。

「だから、その、兄さんの完璧な設計図に、僕からの、ほんの少しの『悪戯』を、加えてもいいかな?」


アークは、久しぶりに、その手に羽根ペンを握った。そして、アルフォンスの設計図の隣に、創造主としての、最後の仕上げを書き加えていく。

「『証明印』は、光るだけじゃない。僕の聖浄樹から採れた特別な香油をインクに混ぜるんだ。本物の陽だまり製品は、人の手の温もりに触れると、陽だまりの森の、清浄な香りを、ふわりと放つ。視覚だけじゃない、嗅覚にも訴えかける、魂の証明だよ」

「そして、『宿木』には、ただ僕らの文化を伝えるだけじゃなく、世界中の知恵を集めるための『窓』を創ろう。アカデミーに、連合国外からの優秀な若者を受け入れるための、特待生制度――**『陽だまりの奨学金』**を設立するんだ。僕らが一方的に教えるんじゃない。世界中から、僕らがまだ知らない、新しい物語の種を、この街に集めるんだよ」


兄が描いた、現実的で、力強い骨格。

弟が、そこに、詩的で、どこまでも優しい、魂の血肉を与える。

創造主と、守護者。二人の英雄が、初めて共に描く、完璧な設計図が、そこに完成した。


#### 陽だまりの凱歌


その計画は、緊急の評議会で、満場一致で承認された。

評議会が終わり、アルフォンスは、少し疲れた顔で再び眠りについた弟の部屋を訪れた。その穏やかな寝顔は、数ヶ月前とは比べ物にならないほど、血色が良い。

アルフォンスは、そっと、窓を開けた。

街から、心地よいざわめきが流れ込んでくる。それは、工房の槌音、アカデミーの子供たちの声、そして、ミカエラの教会で、練習が始まったばかりの、新しい『陽だまりの聖歌』の、温かい旋律だった。

ベッドの傍らでは、ウルが静かに丸くなり、主の穏やかな寝息に合わせて、その小さな胸を上下させている。アルフォンスは、その聖なる番人の頭を一度だけ優しく撫でると、言葉なくとも互いを認め合い、主を守るという静かな誓いを交わした。

(……聞こえるか、アーク)

アルフォンスは、眠る弟の金色の髪を、優しく撫でた。

(これが、俺たちが、これから創っていく、新しい世界の音だ)


創造主は、帰ってきた。

そして、その傍らには、もはや彼の影ではない、対等な光を放つ、最高の守護者がいる。

二人の英雄が奏で始めた、新たなる時代の凱歌が、陽だまりの街の、どこまでも澄み切った青空へと、高らかに、響き渡っていった。


***


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