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魔術都市と天を裂く魔術

統一暦2003年 第12月 第32日

地点:王都マギアベルク 記録タイトル:王国 王都観察初日

執筆:記録支援型アーキナル 〈Akhina-L.Ver.1.32〉


本日より、共和国魔術理論局第七分室より派遣された我々三名は、現地文化・魔術制度・歴史的遺構および魔力インフラに関する複合調査を目的とした王都マギアベルクへの調査を開始した。


【街の構造と初期印象】

マギアベルクは円形段階構造を持つ都市であり、中心に王城、その周囲を貴族区、魔術研究区、職人区、商業区、平民区が取り囲む。地形は緩やかな丘を活用し、階層を自然と形成しており、各階層間は舗装された大通りで繋がれている。


入城後すぐに感じられるのは、空気に混じる魔力の濃度だ。共和国都市の中心区と比較して、濃度は平均して1.4倍強と記録。街の構造物にも小規模な魔術が常時稼働している兆候が見られる(例:照明、地熱管理、監視結界の一部など)。王国の魔術はやはり実地に強い。


我々は調査許可を得た範囲で第三区画、すなわち魔術学院区画までの移動を許された。宿は第四区画=職人区に隣接する高級旅舎「ガーネット樹亭」にて確保済み。


【王城と女王の姿】

到着時、王城高層部からの極大魔力反応を検出(魔力変動係数:9.7)。内容は解析不能。ただし、対霊峰圧制用の術式と推測。天頂部にて赤い魔力閃光が視認され、民衆の一部が祈りに似た仕草をしていた。王の権能が視覚的に示される演出的意味合いを含んでいると思われる。


地元住民いわく「女王陛下が見渡しておられる」時間帯であったらしく、この時期、昼刻過ぎに不定期で行われるという。この“見下ろし”は、象徴的な宗教儀式ではなく、魔術による実際的な処理を伴っているようである。


なお、王城高層部は雲とほぼ同等の高度に達しており、そこから魔術を行使するという事実自体、共和国側理論における術式限界を逸脱している。


【市民の気質と文化】

街の住民は、上下関係を自然に受け入れる風潮が強い。これは、魔術的才能と血統が密接に関わっている王国社会の構造的特徴だろう。旅人や異国の者に対しては好奇心を示すが、一定の距離を保つ態度が見られる。共和国出身の我々にも一種の“魔術偏差”を感じている節があるようだ。


街並みは石造中心で、荘厳さと規則性が支配的である。路地にも魔力街灯が灯っており、治安維持用の魔術装置が各所に見られる。特に第四区画の職人工房には、マイスター(王国における職人資格保持者)による防犯結界が多層的に張られており、アーキナルをかざしても通れない路地も多かった。


【備考:会話記録より抜粋】

地元少年:「女王さまが今日も空から魔を砕いたんだ! 俺も魔術師になれるかな」


工房番:「共和国の道具理論も嫌いじゃないが、王国では“血”が伝統だ。誇りが違う」


【所見と今後の課題】

王国は“血”と“継承”を重視する文化の上に魔術文明を築いている。その中核が王家であり、女王個人の魔術能力が都市全体、さらには国家の権威として象徴化されている印象を受けた。明日以降は、魔術学院および図書館へのアクセスを通じ、魔術理論と教育体制の比較調査に入る予定。


以上、本日の観察記録を終了する。


記録者:アーキナル補助演算機 No.7

再構築:共和国理論局第七分室監修下ログ保存完了


以下、調査員の所感

【調査主任:イーラ・カス=ノード(手書き追記)】

「王国の魔術が持つ歴史的背景と実践的応用の融合は、共和国の理論とは一線を画している。これを正確に理解し、解析の精度を高めることが今後の課題である。」


【調査員:ボルネス・クラヴォア(手書き追記)】

「ここで得た断片的な情報を糧に、次の調査地である霊峰周辺の実態確認に備えたい。魔物や瘴気の話は伝承以上の現実味を帯びているようだ。」


【調査員:エル=ヴァレンテ(手書き追記)】

「解析機材の稼働状況は良好。今回得られた魔力反応のデータは予想を超えて複雑であり、後続の解析にはさらなるリソースが必要とされる。」



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