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第7話『冷蔵庫の奥に住んでる精霊さん』
「おかしい……最近、プリンがよく減る」
ある日、冷蔵庫の奥に謎の気配を感じたレン。扉を開けて覗くと――
「……ん? 見つかった?」
ちっちゃな女の子の姿をした、冷気の精霊が、プリンを抱えて座っていた。
「名前は?」
「……ユノ。冷気の精霊。引っ越し先がなくて、ここに住んでる」
「なんでうちの冷蔵庫なの……」
「ここ、ちょうどいいの。静かで寒くて、プリンあるし」
このユノ、
氷系の高位精霊なのに――プリンとレジ袋にだけ異常な執着を見せる。
「袋カシャカシャってするの、なんか好き」
ちなみに、ラティナとはプリンの取り合いで日々バトル勃発中。
でもある日――
「……寒くない?」
「……ちょっと、寂しいだけ」
そうぽつりと言ったユノに、レンはそっと毛布を差し出した。
冷蔵庫ごと温まったその夜、店内の温度が2度ほど下がった。
ユノが“心から嬉しかった”ときにだけ起こる、氷精の反応だった。