第55話「ラティナ、店員一日体験!」
「ねぇ、レン。私、このお店で働いてみたい!」
いつものように焼きそばパンを買いに来たラティナが、突然そんなことを言い出した。
「えっ、働くって……お姫様が?」
「だって、いつもこっち側から見てるだけじゃ物足りなくなってきたのよ。どうせなら、レジも、揚げ物も、ぜんぶ体験してみたいじゃない!」
レンが返事に詰まっていると、リュミエルがコーヒー片手にひょいと現れた。
「……面白そうじゃない。いいんじゃない? 一日店員ってことで」
「なにそのノリで決める感じ!?」
というわけで――
ラティナ、期間限定! 夜明け堂の「体験バイト」スタート!!
まずはレジ研修。
「いらっしゃいませ~♪」
この挨拶は以前体験済みだ、、しかし、、、
「声でかっ……!? あ、袋いりますか? はい、合計が――って、あ、ラティナ、それお釣り多い! 多いって!」
「ごめん、、!」
つづいて、フライヤー体験。
「わ、これめちゃくちゃ跳ねるじゃない! 魔法で油跳ね止めるわね!」
「ダメダメダメ、火災起きるからそれだけはやめてえええ!!」
バックヤードでの商品補充。
「この冷蔵庫……広すぎない? え、ユノが住んでるの!? おじゃまします~」
「お断りよ」
「ひぃぃっ冷たい!!」
そして夜。
一日が終わり、制服のエプロンを脱いだラティナは、ちょっとだけ得意げに笑った。
「……ちょっと甘く見てたわ。大変なのね、コンビニって」
「まぁね。でも、けっこう向いてたと思うよ。接客以外は」
「それフォローじゃないわよね!?」
「また働きたくなったら、いつでも言って」
そう言うレンに、ラティナはにやりと笑った。
「ふふ、じゃあ次は“副店長”の座でも狙おうかしら!」
「頼むからやめて……」
こうして、夜明け堂は今日も平常運転――
いや、ちょっとだけいつもより騒がしかった。