第39話「謎の騎士、ポイントカードを拾う」
早朝の夜明け堂。
レンはふと、地面に落ちた“ある物”を見つけた。
「……誰かのポイントカード?」
夜明け堂のスタンプカード。それも、スタンプ99個まで押されている。
あとひとつで、トートバッグがもらえる貴重な1枚だ。
「このまま捨てるのも悪いし……」
そのときだった。レンの背後から、静かに影が差し込んだ。
「……それ、預かろう」
黒銀の甲冑に身を包んだ、謎の騎士がそこにいた。
「いや、え、いいけど……何に使うのそれ?」
「……このカードの主を、探す」
「え、今から!?」
騎士はカードを静かに受け取ると、店内を――ゆっくり、だが確実に歩き始めた。
レジ前、ドリンク棚、パンコーナー……通る先々で、無言でカードを掲げる。
まるで「この者のものか」と訴えるように。
最初は客たちも不審そうに見ていたが、
「謎の騎士が落とし物探してるって!」と、いつしか店内がちょっとした“騎士応援ムード”に。
「私じゃないけど、あと1個なんて惜しいわね~」
「ぷる……」(見つかるといいね)
そしてついに――
「あっ……それ、わたしのです!」
小さな声が響いた。
持ち主は、いつもおにぎりだけを買っていく少女。今日もポケットから、うっすらスタンプで汚れた指を出していた。
騎士は黙ってうなずき、カードを差し出す。
受け取った少女は、ぺこりとおじぎし、その場でおにぎりを1個購入。
店内に、スタンプ100個達成のチャリーンという音が鳴り響いた。
「……これが、正義だ」
騎士はそれだけ言って、また静かに炭酸コーナーへ向かっていった。
レンは微笑んで、つぶやいた。
「やっぱあの人、夜明け堂の騎士って呼ばれてもおかしくないな」
「ぷるぷる……かっこいいぷる……」
そして今日も、夜明け堂は静かに賑やかだった。