第38話「リュミエル、魔法学園に呼び出される(またか)」
「……また呼び出されたわよ。学園から」
朝の納品を終えたばかりの夜明け堂で、リュミエルがカウンターに肘をついて嘆息した。
「え、もしかして……前の講義の“焼きそばパンで心が浄化される”やつ?」
「その“やつ”が大ウケだったらしくて、学内で“焼きそばパン信仰”が流行ってるらしいの」
レンはフライヤーの火を弱めながら思い出す。
確か、講義の最後に“焼きそばパンをかじると心が清まる”と言い切っていた気がする。
「……ちょっとは反省しない?」
「してるわよ。あれ以来、講義資料が“宗教”カテゴリに分類されてるもの」
翌日、リュミエルは再び魔法学園へ。
ところが呼び出されたのは説教ではなく――
「ぜひ、夜明け堂からもっと講師を派遣してほしい!」
魔法学園の教師陣からの正式な依頼だった。
「うちの生徒たち、授業より夜明け堂のパンの話ばっかりで……でも、それで集中力が上がってるんですよ!」
「焼きそばパンで授業に出てくれるなら、それでいいのかもしれない……」
どこか壊れかけている教師たちの目に、リュミエルは渋々うなずいた。
その晩、リュミエルは夜明け堂に戻ると、ため息混じりに言った。
「……これ、もう焼きそばパン教団よ」
「いやいやいや! そんなもの開く気ないからね!?」
だが、翌日から「焼きそばパン入荷時間」を狙って学園生が一斉に来店するようになり――
夜明け堂の客層が、また一段とカオスになったのだった。