第32話「スラ、唐揚げにされかける?」
――昼下がりの夜明け堂。
レンはフライヤーの前で腕を組んでいた。
「うーん、やっぱロックチキンは火が通りにくいな……もうちょい薄く切るか?」
異世界産の鳥肉「ロックチキン」。旨味は強いが、肉質が硬くて熱が入りにくい。
レンは鍋の火加減を調整しながら、鶏肉の切り身を油に投入する。
「ジュワアアア……っと、いい音だ」
そのとき。
「ぷるっ!」
カウンターからスラが跳ねてきて、レンの足元にすり寄ってきた。
「ん? どうした、スラ。腹でも減ったか?」
「ぷる♪」
(訳:いい匂い~♪)
スラはフライヤーの縁にぴょんと飛び乗った。
「こらこら、危ないって! そこは熱――」
――ぴとっ
スラ、うっかり衣をつけた状態の唐揚げ肉に触れる。
「お、おい! スラ、それ以上動くな、やめろ、落ちるな……!?」
「ぷる……?」(とろ~ん)
ふわっと、スラの半分が油の中に――
ボンッ!
「ぎゃあああ!? じゅわっ!? ぷぷぷぷ!!」
レン、慌ててトングで救出。
油まみれでふるえるスラ。床に転がされ、じゅるじゅると体表から泡が出ていた。
「や、やばい……唐揚げにするところだった……」
「ぷ……ぷるる……(泣)」
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その後、冷蔵庫のユノに預けて体温を下げ、スラは無事回復。
ちなみに、スラを少し食べたラティナいわく、
「カリッとしてるけど、なんか後味がスライムだった」とのこと。
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教訓:
コンビニの厨房にスライムを近づけてはいけない。
そして、スラには絶対にパン粉を付けてはいけない。