第29話「スタンプ100個、最初に貯めたのは誰だ!?」
「ふふふふ……ついに……ついに……」
レジカウンターの前で、ラティナ=ノクト=バロルは震える手でスタンプカードを差し出した。
カードには、びっしりと100個のスタンプが押されている。
「これで……わたしがスタンプ100個達成、**第一号**よね!? レン!」
誇らしげに笑うラティナ。その目には、魔王の娘としての威厳と執念が光っている。
しかし、レンは申し訳なさそうに眉を下げた。
「あー……ごめんラティナ、それ……**二人目**」
「…………え?」
「昨日、町のセリナさんっておばあちゃんが先に100個貯めててさ……。朝昼晩、毎日来てるから、かなり前に達成してたみたい」
ラティナの口が半開きのまま、しばらく動かなかった。
「え、だって私、夜明け堂のヘビーユーザーだよ!? 毎日パンと唐揚げと……あと、飲み物も……!」
「セリナさんはね……朝のコーヒー、昼の焼きそばパン、夜はおでん……って**一日三回来てる**からね……」
「…………」
「それに、セレナさんはスタンプ2倍になる廃棄寸前の商品も買ってくれていたから.........」
ラティナ、崩れ落ちる。
「ま、まあ……二番目でもすごいよ。これ、**オリジナルトートバッグ**。ほら、猫のロゴが可愛いでしょ」
レンが差し出すバッグを、ラティナはしばらくじっと見つめた。
「……べ、別に一番にこだわってたわけじゃないし……!」
震える声に、コンビニの片隅で見ていたスラ(スライム)はぷるぷる震えながら「いや、めっちゃこだわってたじゃん」とツッコミたげに揺れていた。
---
こうして、スタンプ100個を達成したラティナは、魔王の娘の威厳を保ちつつ(?)、
**世界で二番目に**トートバッグを手に入れたのであった。