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俺を好きなやつの魔力を吸い取って奇跡を起こせる件。奴隷少女よ、だからといってそんなに俺にくっつくな  作者: 羽黒楓


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第91話 舞踏会

 テネスティア王国の女王、リリアーナは全土の実権を握った。

 シャイア派に属する貴族たちの多くは、その所領の一部かもしくは全部を没収され、功のあったものに分配された。

 もちろん、俺にもだ。

 それなりの広さの、豊かな土地をもらっちゃったぜ。

 俺は白金貴族として認められ、これで正式な貴族となった。

 シュリアも同じく白金貴族となり、父親とは別に自分の所領を与えられていた。

 そして。

 ココ。

 彼女は正式に女王の姉として認定された。

 女王リリアーナは断絶したライラネック家を復活させ、ココを当主に据えた。

 こうして、ココはついに本当のココ・ライラネックとなった。


 一か月後。

 王都に全貴族が集められ、改めてリリアーナへの忠誠を誓わされた。

 論功行賞とか領地の配分とかが終わり、勝利を祝う晩さん会が行われた。

 料理は絶品だったぜ。

 俺の席は女王に一番近く、反対の隣にはシュリア、それに父親のデール卿やミラリスまで。

 みんなで和気あいあいと最高級料理を楽しんだ。

 若くして宰相に任じられたメールエが向かいの席でココとおしゃべりをしている。


 あれから、ココとはほとんど会話していない。

 なんなら、少し避けられている気がする。


 ココから、俺の記憶だけがすっぽり抜け落ちていて、全然思い出してくれなかった。

 これがココの好感度をすべて吸い取って自分の力にしてしまった代償か。

 少し、いやかなり、寂しい。

 ココを見つめる俺の横顔をちらりと見て、


「ね、トモキ。どうすんの?」

「どうすんのってなんだよ」

「だから。もう一度、ココちゃんにアタックすれば? あんなに仲が良かったんだから」

「でもなあ……。俺が話しかけてもキョトンとしてるし。傷つくよなあ」

「男がなにを情けないこと言ってるの。ココちゃん、待ってるかもしれないわよ。グイグイ行きなさいよ。ココちゃんに行かないなら……ほかの女の人、でもいいけど」


 少しうつむきかげんに、頬を染めてそう言うシュリア。

 今日はすごくきれいなドレスを着ている。赤い髪をアップにしていて、きらめくイヤリングがすごく似合っている。

 この子も、最高に美人だよなあ……。

 でも、やっぱり……。

 

 そんな俺の顔を見て、リリアーナが、


「うひゃひゃ」


 と笑った。


     ★


 晩さん会のあとは舞踏会だ。

 もちろん、俺はダンスなんてできないから、壁にはりついていよう、と思ったのだが。

 なんと、女王に指名されて、一番最初に女王と踊らされてしまった。

 へたくそだから、最高に恥ずかしかったぜ。


「踊ってくださる?」


 女王のピンチを救った救世主として、俺の名声は貴族の間にも轟いていて、次から次へと貴族の令嬢が誘いにくる。

 こういうのは男が誘うもんだと思ってたけど、この国の文化ではどちらから誘ってもいいらしい。

 昨日、シュリアに一夜漬けで無理やり習わされた足元のおぼつかないダンスだけど、しょうがない。

 名前も覚えていない令嬢とダンスを踊る。

 どの令嬢も、うっとりと俺の顔を見てダンスする。

 なにしろ俺は国家の英雄だからな。

 うーん。

 みんな綺麗な女の人だけど。

 でもなあ。

 俺はチラチラと、壁の花になっちゃってるココに視線を送る。

 ココも、何度か誘われてるけどみんな断っているようだった。

 ステータスが見える。


身体能力 E

教養 C

戦闘能力 E

魔力 SSSSS


 教養がDからCになっているな。

 最近はいろいろ勉強しているみたいだ。

 いや、それはともかく。

 好感度が見えなくなっている。

 ずっと盲信的に俺になついていたココだけど。

 今はもう、ココが俺に対してどんな感情を持っているのかさっぱりわからない。


 ココを見つめていると、ふと視線が合った。

 彼女はすぐに目を逸らして顔を伏せる。


 胸の奥が痛んだ。

 なんだろう、この感情。

 ココは、俺のこと、嫌いになっているのだろうか?

 なにしろ好感度を限界まで吸い取っちゃったからなあ。


 でも、それでも、俺は。

 俺は、どうしたら……。

 胸がズキズキする。

 全身がザワザワする。


 俺は、ココを失ってしまったのだろうか……。


 と、そこに。

 紫色のドレスを着た女性が一人、俺に近づいてきた。

 メールエだった。

 あいかわらずこの子も美人だなあ。

 赤みのかかった金髪に、色を合わせたのか、赤い花飾りをしている。

 メールエは言った。


「うひゃひゃ! どう? 楽しんでるかい!?」


 うわ。

 こいつ、メールエじゃねえじゃねえか。

 ちらっと玉座の方を見ると、女王陛下はダンスを見ることも音楽を聴くこともなく、手鏡で自分の姿を見て恍惚とした表情を浮かべている。

 あっちが本物のメールエだな。


「……なんでメールエの姿でいるんです?」


「うひゃひゃ! だって、私、ダンス超苦手だから! でも舞踏会って女王が一番最初に踊らなきゃでしょ? だから変わってもらった」


 ぶっちゃけて言うと、一番最初に踊った女王の相手って俺なんだが……。

 あれ、メールエだったのか……。

 ていうか、舞踏会とかけっこう重要な行事なはずだけど、女王陛下が身代わり使うとかアリなのかそれ。


「で、どうするどうする?」


 ウキウキとした表情でメールエの顔をしたリリアーナが言う。


「なにがです」

「お姉さんだよ! ほらほら、誘ってあげなって!」


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