第85話 最終決戦①
「貴様!」
シャイアが杖をメールエに向け、即座に火炎放射の魔法を発動した。
ゴォォォッ!
という音とともに燃えさかる火炎がメールエを襲う。
「迅雷の盾」
メールエの目の前に雷で編まれたような壁が出現し、その炎を防ぐ。
俺も黙ってみているわけではない。
「くおおおお!」
気合を入れる。
キュキュイーン!
ココ
魔力 SSSSS⇒SSSS
リリアーナ
魔力 S⇒E
シュリア
魔力 A⇒E
アリア
魔力 S⇒E
皆の魔力が俺に注ぎ込まれる。
同時に、魔力を吸われた副作用だろうか、リリアーナとシュリア、それにアリアはその場にへたり込んだ。
みんな、サンキューだぜ。
絶対にこれでシャイアを倒す。
そう思ったら、手の中の青い光球がさらに輝きを増していく。
「うおおおお!」
さらに気合を入れると、その光球は剣の形へと変貌を遂げた。
そして、その剣を腰だめに構えると、思いっきりシャイアに向かって突撃をする。
「ぬぅん!」
シャイアは自分の目の前に魔法障壁を作り出すが。
俺の、俺たちの奇跡の力はそんなもんで防げはしない。
剣先は一瞬だけ障壁に阻まれて止まるが、
「おおおおおおおお!」
さらに力を入れると、バリンッ! という音をたてて障壁が割れた。
そのままシャイアの腹部にその剣を突き立てようと――したとき。
シャイアが杖を振った。
瞬間、シャイアの姿がそこから掻き消え、3メートルほど離れた場所に出現した。
テレポートかよ。
なんでもありだなこいつ。
そのシャイアに向けて、
「女神の一撃」
メールエが魔法を放つ。
それを再び障壁で防ぎつつ、シャイアも攻撃魔法を繰り出す。
と、そのときだった。
なにかが俺の目の前を飛んでいく。
それは、メイド服姿の人間だった。
メイドのニッキーがジローモに吹っ飛ばされたのだ。
ニッキーは壁に激突して床に落ちると、ぐったりして気を失っているようだった。
「ニッキー! 大丈夫!?」
シュリアがニッキーに駆け寄る。
とどめを刺すために剣を持ったジローモがニッキーに向かって駆けてゆく。
「させるかぁ!」
俺はニッキーとシュリアをかばうようにして、ジローモの前に立った。
「どけ! エセ救世主が!」
ジローモが剣を俺に向ける。
俺は青く光り輝く剣を構える。
剣術なんてやったこともないが。
だが、みんなの魔力を取り込んだ俺は、動体視力も身体能力も大幅に向上していた。
ジローモが俺に襲い掛かる。
普段の俺なら防ぎようもないくらい高速の太刀筋。
だが、今の俺にはそれが、まるでスローモーションのようにはっきりと見えた。
一撃、二撃、三撃。
剣と剣がぶつかり合うたびに、ギャリギャリッ! と鼓膜が破裂しそうなほどの音が鳴り響く。
俺はジローモの攻撃をすべてはじき返す。
今度は俺の番だ。
「うおらぁぁぁぁっ!」
剣を横なぎに振る。
ジローモはそれを自らの剣で受けるが――。
「だああああああああっ!」
ギャリンッ! という音とともに、俺の光る剣がジローモの剣を真っ二つに折った。
俺はその勢いのまま、剣を薙ぎ払う。
剣の刃がジローモの胴体を捉え――そして彼の身体を腹部から真っ二つにした。
ジローモの上半身はふっとんで床に転がり、下半身はくたりと膝から折れて崩れ落ちた。
「ひぃっ」
シュリアの悲鳴。
ま、無理もないやな、俺だって普段だったら悲鳴あげていたところだったぜ。
だけど、俺の脳内はいまやアドレナリンでタプタプしているぞ。
「トモキさん!」
ココが俺に抱き着いてきた。
やわらかな胸がおしつけられる。
ありがたい。
いや、おっぱいがありがたいんじゃなくて、魔力が枯渇しているから、ココにくっついてもらうのがありがたかった。
まだ戦えるぞ。
……ほんとはおっぱいもありがたい。
と、そのとき。
メールエとシャイアが、お互いの最強魔法を撃ちあおうとしていた。
「月光の爆発!」
「太陽の咆哮!」
馬鹿野郎、こんな室内で!
俺は瞬時に魔法を発動した。
「イージスアンブレラ!」
キュイーン!
ココ
魔力SSSS⇒SSS
その瞬間、魔法と魔法がぶつかり合って大爆発が起こった。




