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俺を好きなやつの魔力を吸い取って奇跡を起こせる件。奴隷少女よ、だからといってそんなに俺にくっつくな  作者: 羽黒楓


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第77話 情報戦というならば

 教会の正門前、大きな広場。

 そこに即席で作られたステージ上に、俺たちは立っていた。

 俺から見て右端から、アリア、ココ、俺、そしてシュリア。みんな手をつないでいる。

 敵だって情報のやりとりはしているだろう。

 俺という救世主の力について知っている者にとって、四人が固く手を握り合っているこの光景の持つ意味はわかるはずだった。


「えへへ、ココっち、ご主人様の手を握ってるけど、場所間違ってない? 握るならほら、おち〇ち〇のほうじゃ……」


 言いかけたアリアの頭を、ココは真っ赤な顔でポカリと軽く殴った。

 なにやってんだか。


 さらに、反対側の端っこにはこの教会の主である司祭、プリソワーネがいる。


 さらには、救世主である俺を信じている人間――テネス教会の聖職者の中には、俺に対する好感度がS以上の者が何人もいた。

 女神テネスを信じている集団だから、そりゃ俺が救世主だと思っているやつならば、好感度マックスにもなろうというものだ。

 その人たちも、ステージの下の方で並べて待機させている。


 目の前にはものすごい数の群衆。

 千人以上はいるだろう。

 俺がココといちゃいちゃやっている時間に、教会の者が総出で町中に知らせまわり、人々を集めたのだ。

 ステータスをざっと眺めてみたけど、脅威になるようなのはいない。

 敵の暗殺者がまぎれこんでいるということはなさそうだった。


 さらには、ありったけの伝書ハルトをあちこちに飛ばしている。

 各地の貴族たちを女王かシャイアか、どちらが多く味方につけるか、という勝負でもあるのだ。


 天才魔術師メールエはまだ身体の回復が間に合っていないんだが、俺たちの作戦に必要だったので、無理をして王城の所定の位置についてもらっている。


「よし、ココ、行くぞ」

「はい!」


 俺はムンッ! と気合を入れる。

 すると、俺の手の中に何かが出現した。

 マイクだ。

 この世界にはないはずの現代機器。

 

 俺は、この作戦のことを通信魔法で話したときのメールエの言葉を思い出す。


『魔法というものは、イメージの力が重要なのです。この世にないもの、でもありありと想像できるもの。そういうものをイメージの力でこの世に具現させる。あなたは、別の世界からやってきたのでしょう? この世界にはなく、しかし以前生きた世界にはあった物質。それはあなたにとってイメージしやすいはずです。そういうものなら具現化させるのは簡単なのではないでしょうか?』


 メールエの言う通りだった。

 マイクならヒトカラでいくらでも握ったことがあるからな。

 簡単に具現化させることができた。

 ついでにスピーカーつきだ。


 ココの魔力を使ったんだが、ほとんど減っていない。

 この程度の具現化ならここまで簡単にできるんだな。

 これは、できることがかなり増えるぞ。


 俺は具現化させたマイクを、プリソワーネに渡す。

 プリソワーネはそのマイクを不思議そうに眺めた。


「それは声を大きくする魔法の道具だ。それに向かってしゃべってくれ」

「え、ええ……」


 プリソワーネはマイクを握って群衆に話しかけ始めた。


「皆様。今日はお集まりいただきましてありがとうございます。教会の司祭、プリソワーネ・カロールと申します。今日は皆様に大事な話があります。とても重大なお知らせです。昨今、世は乱れ、魔王軍の襲来はやまず、また人間同士でも争いが起こっています。この世を治めるのはやはり徳のある君主の力が必要です。われらの君主はどなたでしょうか? もちろん、女王陛下であるリリアーナ・オーレリア・テネスティア陛下でございます。今日は、その女王陛下その人にここにおいでいただいております」


 群衆がどよめく。

 女王陛下は王都にいるはずで、しかも勇者ガルアドの襲撃によって死亡した、という噂がまことしやかに流されていたからだ。

 もちろん、その噂を流したのはシャイアたちだろう。

 だが、情報戦というならば、俺たちが負けることはない。

 なにしろ、天才魔術師メールエと、この俺がいるんだからな。

 プリソワーネは続ける。


「ではさっそく、ありがたくも女王陛下のお言葉をいただきたいと思います」


 そしてステージの上に上がってくる一人の少女。


 青みのかかった金髪ショートカット、小さな頭に乗るのは大きな王冠。

 ギラギラに飾り立てられた白いドレス。

 そのドレスにも負けないほど綺麗な白い肌。

 穏やかそうな笑みをたたえている碧い目の美少女。


 彼女は壇上にたつと、プリソワーネが差し出すマイクに笑いかけた。


「うひゃひゃひゃ! 今日はみんな集まってくれてありがとうだよ!」


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