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俺を好きなやつの魔力を吸い取って奇跡を起こせる件。奴隷少女よ、だからといってそんなに俺にくっつくな  作者: 羽黒楓


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第57話 まつ毛まで

 魔力がS?

 そりゃ高いけどさ、天才魔術師ってならもっともっと、それこそココと同じように、SSSSSくらいあるもんだと思っていた。

 いやしかし。

 俺はこの世界の魔法体系についてそんなに知らない。

 それに、魔法ってのは技術だとも聞いた。

 つまり、魔力がSでも、ステータスに現れ出ない魔法技術がやばいレベルってことかもしれんな。


「女王陛下が、直々に……?」


 シュリアが怪訝な顔をする。


「そうそう! あのね、女王陛下がね、私に言ったのさ! 『女神テネス様が遣わしたという救世主様が本物かどうか見てきなさい』って!」

「俺が言うのもなんだけど、本物かどうかだなんて見て分かるのか?」


 俺がそう聞くと、メールエはいかにも愉快そうに笑った。


「わかんないかもー! だって、超強力な魔法使いが救世主を名乗っているだけかもしれないし! 女神様の奇跡か、人の魔法か。そこに明確な線引きがあるわけでもないしさー。あなたが本物かどうか。そこはね、あんまり重要じゃないんだよねー!」

「どういうことだ?」

「うひひひ! 重要なのは……」


メールエはそこで少し声を低くして言った。


「女王陛下が――いや、国家が本物であると認めるかどうか、なんだよね! あんたたち、あの勇者ガルアドとガチで戦ったんでしょ? しかも勝った、っていうじゃない! 国家が認めた正式な勇者相手に!」


 そうだ。

 だからこそ、デールは娘のシュリアを人質として王都に送ることにしたのだ。

 一つ間違えば、国家への反逆とも捉えられかねないからな。

 メールエは言う。


「ぶっちゃけ、女王陛下はテネス様の直系子孫、ってことになってる。その叔父様である戦いの神リューン様を信奉する一派にとって、リューン様の聖典にある勇者が現れ、それを国家が認めたって出来事は大きかった。国家の重鎮であり、大領主であり、王国随一の魔法の使い手でもある筆頭宮廷魔術師、シャイアのじいさんのゴリ押しがあったとは言え、ね。勇者が活躍するほどに、シャイアのじじいの権力は増す一方なわけさ!」


「あんた、そのシャイア閣下に認められて出世したんだろう? いいのか、そんな言い草」


「まあ最初はね! でもあいつ、私の魔法研究の成果をぜーーーんぶ横取りしやがったから! 私もこういう性格だからさー。曲がったことが大嫌いでさー。もう今は口も聞きたくない、あのクソじじい」


 ニッキーが紅茶のポットを持ってきて、メールエの目の前のカップに注ぐ。

 メールエはそれをすぐに手にとり、ゴクゴクと飲み干す。

 熱くねーのかよ、こいつ猫舌の反対だな。

 こういうのは何舌っていうんだ、龍舌とでもいうんかね。


「で、ここから重要なんだけど。テネス様の子孫たる女王陛下にしてみれば、リューン様の使徒である勇者ばっかりが活躍するのは面白くないわけさ! というか、女王陛下にしてみればお尻に火がついてる」


「は? そんな切羽つまっているのか?」


「うん、そう。なにしろ、今の陛下を廃位しようという動きがあるんだ。シャイア閣下の孫娘は王族に嫁いでる。その子どもは今二十歳なんだ。もちろん、普通だったら王位継承権なんて十番目くらいなんだけど、そこはゴリ押しが得意なじいさん。そいつを次の王にしようとしている」


 うっわーー。

 超ドロドロの権力闘争の真っ最中じゃねえか!


 シュリアは少し青ざめた顔で、


「でも、お父様は……たしかシャイア閣下にいろいろと便宜をはかっていただいたことが……」


 メールエはビッ! とシュリアを指さして言った。


「そのとおり! あなたの父上、デール卿はじじい派! あんたら、王都に着いたら直接女王陛下に謁見する手はずにはなっていなかったでしょう? まずはとある貴族の屋敷に行くことになっていたはず! その貴族って、普通にじじいの手下よ」


 なるほど。

 少し状況が見えてきたぞ。

 俺は、シュリアの父、デールが言ったことを思い出していた。


【これで私が女王陛下に反逆の意志がないことを示したい。とはいえ、それでも万が一、我が領土を女王陛下が奪おうというのなら……】


 デールが王位を簒奪しようとしているシャイア一派の人間だとすると、あのセリフの受け取り方もまた違ってくるなあ。

 いやあ、ドロドロしてるぜ、マジで。


「つまり、シャイア閣下は勇者ガルアドだけじゃなく、俺たちまで抱き込もうとしたってことか」


「そのとーり! 救世主ちゃん、察しがいいね! そこで女王陛下は考えた! 勇者はじじいの影響力下にある! その上、テネス様の救世主までじじいにとられたら、まじで王位をおんだされるぞ、とね。だからね、私は救世主ちゃん、あなたを――」


 メールエは俺の顔をじっと見た。

 まつ毛まで金色なんだな、と俺は思った。


「誘惑にきたんだ」



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