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俺を好きなやつの魔力を吸い取って奇跡を起こせる件。奴隷少女よ、だからといってそんなに俺にくっつくな  作者: 羽黒楓


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第54話 アホだけど

「本当か?」

「ええ。私とアリアちゃんが上の下で、ココちゃんが下、そしてニッキーが中くらいでしょ? 多分……」


 そしてシュリアは俺たちの方を振り向いて、


「ここよ」


 と頭を指さした。


「え……! まさかですわ。私の頭が悪いとおっしゃるの? そんなわけないですわ、おほほ!」


 ココが一笑に付す。

 俺も納得がいかない。


「いや、待て、他の人はともかく……アリアの頭がいいとは思えんぞ」

「いいえ、アリアは馬鹿じゃないわよ」

「いや、今あいつがはいているパンツは俺のものになってんだぞ。アホだろ」

「頭がいいけどアホなのよ」


 う。

 たしかにそういうやつはいるけどさ……。


「アリアって、ギャンブルの知識はすごいわ。私も奴隷と仲良くしなきゃと思って少し話したけど、モンスターカードの勉強で得たモンスターの知識は本物よ。アホだけど。つまり、その値は、いわゆる地頭、知能の素質だけじゃなくて、今まで学んできた知識量も含めての――そう、『教養』みたいなものじゃないかしら。アリアはもともと自由民だし、それなりに読書も好きみたいだし、話していれば教養があるのはわかるわ。アホだけど」


 なるほどなあ。

 言われてみれば、そうかもしれない。


「あの! 私が教養がないってのはみなさん納得してる感じですの!?」


 ココが抗議の声をあげるが、こいつ、子どもの作り方もまだ知らないみたいだしな。

 ……うん、いつまでもそのままのお前でいてくれよ。


 俺は事実を少しぼかしながら言う。


「で、俺に魔力を使われた人間は……その量に応じて、俺に対して嫌悪感を抱くようになるみたいだ」

「…………なにそれ」


 シュリアの言うとおりで、俺自身もなにそれ、と思うぜ。

 ただなにせ、自分のミスで命を落とした人間の前でトウモロコシをバリバリかじる女神のやることだからな。


「そっか、だから……さっきからトモキの声を聞くといやな気持になってたのね……。不思議に思っていたけど」


     ★


 シュリアは、ほっとしていた。

 さっきから、トモキの声を聞くだけで自分の胸の中にいやな気持が沸き起こるのを感じていたからだった。

 シュリアはそれを『やきもち』と解釈していた。

 決してトモキとは結ばれることのない、貴族である自分。

 それが、奴隷であるココとばかり仲良くして、今だって隣同士で座っていて……。

 それを見ただけで吐き気がするほどの最悪の気分になっていたのだ。

 たとえていうなら、気持ち悪い虫を見てしまったときと同じような、胃の奥がムカムカするような、そんな感覚。

 よかった、私は嫉妬で相手のことを憎むような、そんな女じゃなかった。

 トモキを見るだけでいやな思いをするのは、トモキの能力のせいだったのだ。


 わかってしまえばなんということもない。

 なんだ、嫉妬じゃないんだ。

 大丈夫、私はトモキのことなんか好きじゃない、だから嫉妬なんかでもない。

 能力のせいで、嫌な気持ちになっているだけだった。

 そう思うと、逆にトモキに対する嫌悪感が少し薄らぐのを感じた。

 シュリアは安堵して、トモキの顔を見ながらこう言った。


「トモキって、変な顔してるわよね。見るだけで胸が苦しくなるほど変な顔だわ。これも、その能力のせいかしら」


     ★


 どストレートに俺の容姿を馬鹿にされてしまった。

 見るだけで胸が苦しくなるってどんだけだよ!

 さすが高感度Fだぜ。

 ひどいことを平気で言うなあ。

 シュリアはさらに続けて、


「しかも、声も変だし。今もココちゃんと手を繋いでいるけど。女好きの変態ね。バカップルっぽくて気持ち悪い」


 口を極めて俺をののしるシュリア。

 いやたしかにココと手を繋いでいるけど、これはいついかなるときでも敵が襲ってきたときに反撃できるようにだな、そうしているだけであって。

 それに手を離すとココのやつ、体ごとくっついてこようとするから仕方がなくこうしているだけであって……。

 シュリアはふっ、と馬鹿にするような笑いを見せ、


「ま、せいぜい仲良くしてなさいな。私たちの裸もじっくりと見てたし、スケベで女好きの変態救世主ね」


 と言った。

 ビコンッ!

 音が鳴って、


好感度F⇒C


 なぜかシュリアの好感度があがった。

 なんだこいつ、ひょっとしてスケベな男が好きなのか?


 その時、小窓が開いて御者席のアリアが顔を覗かせた。


「もう少しで次の街につくよ」


 それは、商業都市ゴーラ。

 俺たちがその街についたそのとき、年に一度の大きな奴隷オークションの会場となっていた。

 そこで俺はもう一度対決することになる。

 そう、やつとだ。



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