第45話 ほーら見てください!
まず、目に入ったのはココだった。
胸元にフリルがたくさん入った白いブラウス、リボンは青色。
金色に光る髪の毛にも青いリボン。
そのサラサラの髪が風に吹かれて揺れている。
ひざ丈のスカートも青色で、そこから真っ白な肌の足が伸びていた。
「おお、似合っているじゃないか」
俺が言うと、ココはほっぺたを赤くして、
「えへへ! えへへへーー! えっへへへへへへーーー!」
と嬉しそうに照れ笑いしている。
かわいいじゃないか。
もともと美少女だったけど、こうしてちゃんとした服を着ると、よりいっそうかわいく見えるな。
「……トモキとココちゃんって、仲いいよね」
そんなことを言うシュリア。
「まあ、俺の奴隷だからな……。でも、いつか奴隷じゃなくしてやるけどな」
「トモキ、ココちゃんのためなら一生懸命になるんだね」
「まあ、な。変な奴だけど、人なつっこいところとか、一緒にいて疲れない感じがしていいやつじゃないか。……いや、疲れないってことはないか……?」
どうだろう、ただ、一緒にいて面白い奴なことは確かだな。
「そ。ま、ご主人様としてココちゃんのこと、大切にしたげてね」
笑顔でそう言ってるんだけど、その笑顔が100%喜びの表情かと言われると、なにかこう、寂しそうな、悲しそうな、そんな感情も見え隠れした。
あれかな、やっぱり貴族の令嬢としては、奴隷階級の女の子を好待遇したり、ましてや奴隷じゃなくしてやるなんていうのは、複雑な思いがあるのかもしれないな。
「ね、ね、ご主人様! ボクのことも見てよ!」
アリアが俺に声をかける。
彼女が選んだ服装は……。
ミニだった。
めっちゃ太ももが出ているミニスカート。
淡いピンク色のブラウスが、水色の髪の毛にぴったりと合っている。
アリアの身長はココよりも少し低いのだが、ミニスカートから覗くすらりとした太ももが足を長く見せている。
「ふふふ。ご主人様、どうよ?」
水色の髪の毛をかきあげてポーズをとるアリア。
今は長めのツインテールにしている。
「うんうん、アリアもココもかわいいぞ」
俺の言葉に、二人の少女は顔を見合わせ、頬を少し赤く染めてニッコリと笑いあった。
「ちょっとちょっと」
結局服は買わなかったシュリアが、アリアのミニスカートを見て慌てたように、
「あなた、御者でしょ? それで御者席に座る気?」
「余裕ですよ」
「いや、無理だと思うわ……。ズボンも買いなさいよ、お金はまだ残っているはずよ」
「大丈夫ですって。賭けますか? ボクが買ったら銅貨10枚ください。負けたらボクのパンツあげますよ」
「いらな……」
シュリアの返答を聞く前に、ひらりと御者席に座るアリア。
「ほーら見てください! ね、余裕でしょ? このスカートでも馬を操作できますよ! ご主人様も見てください!」
「……見て、いいのか?」
いやほらだってさ、馬車の御者席って、結構高さがあるわけよ。
で、こんなスカートで御者席に座ると、ちょうど俺の目の高さにスカートが来るわけよ。
ミニスカートだから、丸見えなわけよ。
なにがとは言わないけどさ。
とにかく丸見えなんだよ!
髪の毛と同じ色の、水色水玉が!
丸見え!
女神テネス様、ありがとー!
俺は脳裏に水玉を焼きつけたあと、ふっと目を逸らし、空を見上げた。
ああ、なんという青い空。
しかし、この大自然の青よりも美しい水色を、俺は今見たのだ。
俺は真面目な顔を作って、努めて渋い声で言った。
「アリア、お前の負けだ……」
「ええ~~? なんで~~~?」
「とにかくそれはそれでいいから、馬車を御するときはその恰好はやめろ。いますぐズボンも買ってこい。……ココもだ、ズボンも買ってこい」
だって、御者席って別に風防があるわけじゃないから、風に吹かれたらココだって丸見えだと思うんだよな。
……ココは、何色だろう?
あ、やべ、死んでも口には出せんわ、これ言うと好感度が下がるやつだった。
そんな俺の姿をじーっと見つめていたメイドのニッキーが、ニコッとさわやかな笑顔で言った。
「私はドロワーズです」
いや乗ってくるなよ、っていうか俺の考えてることニッキーにはバレてたわ、ニッキーって案外食えない人だよな。
「もういいわ。とにかく、宿に行きましょう。このあたりって、温泉が湧いていて素敵な露店風呂があるそうよ。みんなでお風呂を楽しみましょう?」