第43話 おべべ
「そういや、ココの着ている服……ずいぶん年季が入っているよなあ。な、シュリア、村人たちから俺がもらった、俺の金品とか、全部俺が使ってもいいんだよな?」
「そりゃそうよ。トモキはたくさんの人の命を救ったし、家まで再建した。そのお礼にもらったものはトモキが好きに使っていいと思うけど」
村人たちが感謝の言葉とともに俺にくれた貨幣。
合計で銀貨300枚くらいある。
この世界では大型金貨1枚で銀貨100枚分の価値があり、銀貨1枚で銅貨100枚の価値。
それぞれには魔法で国家の刻印が刻まれており、偽造ができないようにしてある。
ざっといろんな人にいろいろ聞きまわった結果、どうやら金貨1枚が、日本円で100万円くらいの価値みたいだ。
つまり銀貨一枚で一万円。
銅貨一枚で100円だな。
つまり、今俺は300万円くらい持っている、ということになる。
ちなみに奴隷を一人買うのに、その奴隷の質にもよるが、金貨1枚から金貨10枚くらいだそうだ。
日本で自動車買うのと同じくらいの感覚だろうか。
まあ、メシは食わせなきゃいけないから、維持費は自動車以上だろうが。
「次の町についたら、多分衣服を扱っている店もあると思う。そこで、ココとアリアに服を買ってやろう」
ココがビクンッと反応した。
「ココ、どういうのが好きなんだ?」
「どういうのが好きって……私はおしゃれとかファッションとかよくわかりませんけど……」
「貴族の令嬢がそれじゃダメだろ。シュリアにも聞いて、おしゃれなのを選んでもらってくれ。今までは農作業していたからその恰好でよかっただろうけど、これから行くのは王都だからな」
「ほ、本当に服を買ってくださるのですか……?」
「ああ、ちゃんと新品のいいやつを買ってやるぞ」
ビコンッ!
信仰心★ B⇒A
面白いようにあがるなあ。
っていうかさ。
違うわ、これ。
信仰心じゃない。
女神テネスに対するココの信仰心はずっと揺るいでいなかった。
俺が救世主である、ということもずっと信じ続けている。
じゃあこのステータスがなにを表しているのかというと。
「ココ、俺はお前を守るからな。お前も俺の力になってくれ。信じているぞ」
ビコンッ!
★ A⇒S
「ほ、ほほほほ! 当然ですわ! 私はトモキさんの一番のパートナーとして、全力でトモキさんの力になりますわ!」
救世主様呼びに変わっていたのが、また名前呼びに戻ったな。
っていうか、このステータス。
信仰心じゃなくてもしかしたら……。
いや、もう少し試してみよう。
「そういやさ、話変わるけど、いいか?」
「ええ。なんでございましょう?」
機嫌のよさそうな声でココが答える。
俺は言った。
「女の子ってどんなパンツをはいているんだろうな、っていつも思ってる」
ビココンッ!
シュリア
★ S⇒C
ココ
★ S⇒C
「……って、言っている友達がいたんだよな。あの勇者と似てたからふと思い出しちゃったぜ。そんなこという奴なんて最低だよな。だから、友達付き合いをやめてやった」
ビコン!
シュリア
★ C⇒S
ココ
★ C⇒S
「いきなり何を言ってるの……突然話題を変えるのはよしてよ。あとそういう話題を突然持ち出すの、モテないわよ」
ジト目で俺に言うシュリア。
うーん、この★……。
多分なんだけど……。
信仰心じゃなくて。
【俺への好感度】だわ……。
なんてこった。
今まで大きな勘違いをしていたぜ。
俺はボソッと呟いた。
「ってことは、ココのやつ、かなりのチョロインだな……Fから一気にSになったもんな」
「なにをおっしゃってますの? 私はチョロインなんて名前ではありませんわ! 私はライラネック家の令嬢、ココ・ライラネックですわよ! おーほっほっほっほ!」
なんか声のトーンも元に戻ってるし。
やっぱり女の子はおべべを買ってあげると喜ぶんだなあ。
と、そこで御者席と客席の間の小窓が開かれ、アリアが顔を覗かせて言った。
「そろそろ町に着きますよ。日が暮れますのでここで泊まるとガルニ様が言っています」
「いや、その前に服屋を探してそこに行ってくれ」
「服屋?」
「ああ、ココとアリア、お前の服を買ってやるよ」
「ボクの服を!?」
アリアが目と口を開いて驚きの表情を見せる。
同時に、ビコンッ!
好感度 S⇒SC
アリアの好感度もあがった。
こいつもチョロインであった。
やっぱり女の子はおべべを買ってやると喜ぶよな、マジで。
……おべべって言い方、古いかな?
まあ俺は中身おっさんだから許してくれ。