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第40話 全部吸い取って

「うおおおおおおお!」


 雄たけびをあげてガルアドが俺に斬りかかってくる。

 ココの魔力はもうSだけしか残っていない。

 一撃で勝負を決めるしかない。


 キュイーン!


 いつもの音が鳴る。


 ガルアドの剣が俺を狙う。

 まだだ。

 まだ――!

 十分引き付けてから、俺はココを抱きあげて横っ飛びに飛んだ。

 だがガルアドの剣先から放出された衝撃波を避けきることはできず、俺はココを抱きかかえたまま数メートル吹っ飛ばされた。


 俺たち二人は抱き合ったまま地面にゴロゴロと転がる。

 どこかの骨がポキッ! と折れた音がした。

 息ができなくなる。

 くそ、肋骨あたりか?

 全身が痛みでジンジンとしびれる。

 足の骨もやられちまったようだ。


「うう……」


 ココも額から血を流している。


「トモキさん……救世主様……」


 ココが呟く。

 よし、まだ意識はあるな。

 ガルアドは俺たちの前に降り立って言った。

 

「ふははははは! 自称救世主よ、貴様も世界平和のために死ねぇ! 世に神のみ使いは二人はいらぬ!」


 ドラゴンの背でガルアドは叫び、再び剣を振りかぶる。

 そして俺たちに襲い掛かろうとしたその瞬間。

 ボゴッ! とガルアドがいる場所のすぐ後方から、青く光輝く野球ボール大の光球が地面から飛び出した。


 魔王軍の作戦を参考にさせてもらったぜ。

 地中を掘り進んで攻撃するって方法もあるのだ。

 俺はさっき、地面へ向けて光球を発射し、地中に隠してチャンスをうかがっていたたってわけだ。


 その光球はガルアドの死角から時速数百キロのスピードでその後頭部に直撃した。


「グァウ!」


 という叫びとともにドラゴンの背からふっとばされるガルアド。

 ガルアドの巨体が地面にドサッと落ちる。


「く……貴様……!」


 ガルアドは地面にはいつくばって俺を睨む。

 そしてゆっくりと立ち上がる。

 くそ、俺はもう無理だぜ。

 肋骨と足の骨が折れている。

 それに、魔力を供給できる人ももういない。

 そのときだった。

 ココが地面に倒れたまま、同じく倒れている俺にずりずりとくっついてくる。


「トモキさん……私の力を……」


 だけど、個々の魔力はもうENPだ。


「いいえ……魔力だけではないですわ。私のほかの力も……全部吸い取っていいですから……」


 ココのステータス。


身体能力 E

▲ D

■ E

魔力 S⇒ENP

信仰心 Ultra


 もしそんなことができたとしても、ほかのステータスは全部低い。

 ガルアドが剣を杖にしてゆっくりと俺たちに歩いてくる。


「この似非救世主が……! やりおったな……! その奴隷ともども、剣の錆にしてくれるわ……」


 ガルアドは俺たちのすぐそばまでくると、剣を握りしめ、振り上げた。


「死ね、偽物よ!」


 その時、ココがとんでもない声で叫んだ。


「トモキさん! お願いしますわ、私の力を捧げますから世界を救ってくださいませ!」


 キュイーーン!

 音が鳴り。

 そして、ココのステータスが。

 変化した。


身体能力 E

▲ D

■ E

魔力 ENP

信仰心 Ultra⇒F


 振り下ろされるガルアドの剣、身体が軽く感じる、俺はパッと立ち上がり、剣の太刀筋を見極めてギリギリのところでよけると、


「うおおおおおお!」


 一歩、二歩踏み込んで握りしめたこぶしをガルアドの顎に叩き込んだ。


 ガルアドの身体からカクッと力が抜ける。

 そして剣を持ったままスローモーションのようにゆっくりと地面に倒れた。

 こいつ……。こいつは奴隷を殺す……。

 ここで、とどめを刺しておくべきか?


 そう逡巡する数秒のあいだに、ブレイブドラゴンがものすごい速さでこちらに飛んできて、ガルアドの首元にかみつくと、ガルアドを口にくわえたまま、空へと飛び立った。

 ブレイブドラゴンは、あっというまに地平線に向かって飛んでいく。

 くそ、逃がしたか……。


 いや、それよりも。

 ココは、大丈夫か? 


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