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俺を好きなやつの魔力を吸い取って奇跡を起こせる件。奴隷少女よ、だからといってそんなに俺にくっつくな  作者: 羽黒楓


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第29話 ダークドラゴンが消息を絶った土地

 本当に呆れたやつだ。


「返させてやっただろ。っていうかココもお前のパンツもらったところで困るだけだと思うぞ……」


 アリアはパッと顔を上げると、ハスキーな声で言った。


「じゃあ、ご主人様、ボクと勝負しましょう。モンスターカードってゲーム知ってますか?」

「知らん! なんだそりゃ」

「モンスターの知識を生かして勝負するカードゲームで……」

「そんなもん俺が勝てるわけないだろ! とにかくちゃんと服を着ろ。スカートがはだけてパンツ見えてるんだよ!」

「パンツは減らないんで大丈夫です」

「俺の視線が吸い寄せられちゃうんだよ!」

「じゃあサイコロで勝負ですね」

「なにが『じゃあ』だよ! 接続詞の使い方間違ってるよ! だいたい俺の奴隷ってことはお前の持ち物全部俺のもの……じゃないかなあ?」


 ニッキーがうなずいて、


「まあそうですね」


 と言う。


「ってことは俺の持ち物同士が俺の持ち物の持ち物を賭けて勝手にギャンブルやってたのか……。禁止だ禁止。ココ、今後賭け事はいっさいやるなよ。アリアもだ」


 それを聞いて、アリアは絶望の表情を浮かべた。

 ついでにビコンッ! と音が鳴り響いた。


身体能力 D

▲ A

■ D

魔力 S

信仰心 C⇒D


 くそ、こいつ、まじ扱いにくそうだな……。


「そ、そんな! ボクからギャンブルを取ったら処女しか残らなくなる! ご主人様、じゃあボクとサイコロで賭けをしましょう」

「だから『じゃあ』の使い方間違っているんだよ!」

「ボク、処女を賭けます。その代わり、ボクが買ったら賭け事を許してください」

「だからダメだって」

「じゃあボクからいきます。出た目の合計が多い方が勝ちですよ! えいっ」


 こいつ……人の話をいっさい聞かない系かよ。

 縁が欠けたティーカップの中に小さなサイコロを三つ投げ入れるアリア。

 音をたてて転がって、出た目は⚀⚀⚀。


「……ピンゾロか……。チンチロだったらお前の勝ちだったが……出た目の合計ってルールはお前が決めたんだぞ……」


「うう……じゃあボクの処女あげます。さ、どうぞ」


 その場で服を脱ごうとするアリア、


「初めてなら準備が必要なのでは……? 濡れないと殿方も痛いですし、私、手伝いましょうか?」


 などと抜かして両手の指をワキワキ動かすニッキー、悪ノリしてやがるな。

 っていうかニッキーみたいに見た目清楚なメイドの口からそういう言葉が出てちょっとショックだったのは秘密だ。


「むしろなんで奴隷になるまで処女を守れてたんだよ……。その権利は保留だ。

ココ、この馬鹿に倫理観というものを教えてやってくれ」

「はい、貴族の令嬢の名にかけてきちんと教育してさしあげますわ」


 アリアはまた顔を手で覆って、


「うえ~~~ん、こんな変な子にモノを教えられるなんて……」


 とか言って泣いてる。

 俺から見るとお前の方がよっぽど変だぞ。

 うーん、まじで失敗したな、この買い物……。


「まあいいから荷造り手伝え、荷造り」


 そう、俺たちは三日後に長い旅に出るのだ。

 入念な準備をしておきたい。


     ★


 屋敷の外に出て、馬小屋のそばに停めてある馬車のところへ行く。

 二人乗りだが、荷室もあってそこそこ荷物を積めそうだ。


 日が傾いてきている。

 急いで荷物を馬車に積んでおこう。

 と思ったんだけど、夕焼けがとてもきれいでついつい見とれてしまった。


 東側には山があるが、西側は広い平野になっている。

 地平線の向こう側にはとても広い川があるそうだ。

 魔王軍との戦線はそこからさらに西の方面。


 山と川に囲まれたこの土地は、今まであまり外敵にも襲われず、それなりに平和だったそうだ。

 東側は王国の領土だし、西には川。

 ドラゴンみたいな空を飛ぶモンスターでもない限り、ここが魔王軍に襲われることはそうそうないだろう、と俺は思った。


 それは俺の思い違いだった。

 魔王軍の中でも強力なモンスターであったダークドラゴンが消息を絶った土地。

 そこに、魔王がなんの感心も持たない、など、ありえないことだったのだ。


 夕日が落ちていくところを眺めていると。

 遠くで、その光を背に黒い影がボコッと地面から飛び出るのが見えた。

 

 空からが駄目なら、地面を掘り進めるという手がある。

 そして、ある程度の大きさのトンネルを掘れたならば、そこから大量のモンスターを送り込めることもできる、というわけだった。


 ダークドラゴンの死からこの一か月と少しのあいだ、魔王軍はなにもしてないわけじゃなかった。

 地面の下を掘り進んできていたのだ。


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