第27話 臭いのが好き
アリアを買った翌日。
早速、キャルル家の一室を借りてそこに収容した。
ココの隣の部屋らしい。
出発は三日後として、馬車や馬、それに荷物を準備する。
もちろん、デールやシュリアの援助によるものだ。
それだけじゃなく、俺が救った村の人々からも、金銭的なものも含めていろいろ援助をもらうことができた。
荷造りで忙しい中。
休憩ということでテラスでいつものようにシュリアをお茶を楽しむ。
そこでふとニッキーに言った。
「あのさ、ちょっとココとアリアの部屋ってどうなってるのか見てみたいんだけど」
ちょっとした好奇心だ。
それを聞いたニッキーがいつもの笑顔のまま、顔をひきつらせた。
「……買った奴隷の部屋に……? まだ午後三時ですよ……? お風呂沸いていませんけど……」
「ん? なにが?」
「ココとアリアの部屋に行くんですよね……? 奴隷のお風呂は一週間に二回だけですから……。ちょっとお待ちくださいましね、ココとアリアに身体を洗わせてきますわ……」
「だから、なんで突然お風呂の話に?」
「だって……買った女奴隷の部屋に殿方が行くなんて……。夜這いですよね? 昼だから昼這い……? あ、救世主様はあれですか、女の子は汚れてる方がいいタイプ……? 臭いのが好きって人もたまにいますから……」
俺はちょっと考え込んでから、ニッキーの言っている意味を理解して、叫んだ。
「違うよ! なんで救世主様が買った奴隷を……そんなことしないよ! テネスの女神様だって怒るよ!」
ところが、ニッキーの返答は予想外だった。
「あら、テネスの女神様は生と死をつかさどる神様。生は産まれて初めて始まるもの。つまり……」
シュリアは言葉を引き継いだ。
「テネスの女神様はね、男女の営みは推奨している神様だから。といっても自由民同士については結婚してから、という教えよ。……ただ、奴隷は別。好きにしていいんだけど……。奴隷ちゃん、男女の営みについてはなーーーーーーんにも知らないみたいだから、やさしくね」
うお。
まじか、じゃあやっぱり買った奴隷は好きにアレしていいのか。
しかも何も知らない少女相手に!
やりたい放題!
なにをしてもいいってことだよな!
じゃああんなことしてこんなことして!
やったーーーー!
異世界転生ばんざーい!
とは、ならない。
ま、正直、俺もどっちかというとスケベな方だし、そういう暗い情欲みたいなのはあるといえばあるが。
「あのなー。そういう性欲をコントロールしてこそ、人間が人間たりうる条件なんだよ。俺はそういうことはしない。奴隷に手を出したりはしないよ」
俺はエッチなことが好きだ。
そういう自分の性欲を肯定した上で、自分を律したい。
だってそういう男の方がかっこよくね?
少なくとも俺はそういうポリシーで35年間生きてきたんだ。
男は食わねど高楊枝、だ。
かっこいいじゃん!
それを聞いてシュリアは紅茶のカップに手を伸ばした。
「よかった。私も女の子だからね、そういうのは奴隷だとしてもちょっと……ちょっとだけど、かわいそうだなって思ってたから。ま、トモキはそういうこと、しないって思ってるけど。私も今部屋に行くって聞いて驚いちゃったわよ」
「まあなんならシュリアとニッキーもついてくるか?」
「私はやめとくわ。貴族の娘としてははしたないもの。ニッキー、あなたついていきなさい」
こうして、俺はニッキーに案内されてココとアリアのいる奴隷部屋に行くことになった。
そしてそこで俺が見たものは。
素っ裸で泣いているアリアの姿だった。