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第16話 人間の数のうちに入ってない

「うう……痛え……」


 うめいている40歳くらいの男の人。

 骨折したみたいで、腕を三角巾のようなもので吊っている。

 なおしてあげたいが……。

 ココのステータスを見る。


● E

▲ D

■ E

魔力 ENP

★ Ultra


 うーん、これじゃあなあ。


「ね、ね、救世主様、この方も治してあげましょう!」


 ココは息せき切ってそう言うけどさ。

 お前の魔力はもう枯渇しちゃっているからな……。

 俺は周りを見渡す。

 数人の村人がいたけど、


● C

▲ C

■ E

魔力 F

★ C


 こんな感じの村人だらけだ。

 気づいたけど、魔力がE以上ある人って、思ったよりもすくない。

 それで考えると、ミラリスが魔力Cもあったのってすごいことなのかもしれない。


「ココ、お前の魔力はすごいものがあるなあ。ほとんどの人は魔力なんて持っていないじゃないか」


「本当ですか? 私の魔力、そんなにすごいですか! おほほほほほ、やっぱり! 救世主様が私の魔力を認めてくださった! なにしろ、強力な魔法を使える、というのが貴族の血筋の証でもありますから! 魔法を使えないものは貴族の舞踏会でも肩身が狭いのですわよ! やはり! やはり私には魔力があったのですね! ……でも、魔力がそんなにあるのになぜ私は魔法を使えないのでしょう……」


 魔法の技術と魔力は別物だ、っていうからな。

 ココは自分を貴族だと思い込んでいる奴隷なわけで、魔法が使えないのは不思議じゃない。

 まあそれはいい。

 とりあえず、ココだけじゃなくてシュリアでも俺の能力は発揮できた。

 ってことは、魔力を持つ人が他にいたら、同じようにできるんじゃないか?


 村人たちの間を歩いて回る。

 俺のうわさは文字通りあっという間に村人たちの間にまわったみたいで、


「救世主様! どうかうちのおっかあを治してくだせえ!」

「救世主様! うちの子が熱を出して……」


 あちこちで声をかけられる。

 治してやりたいけど、魔力がなあ……。

 ココなんか、魔力がENPになったせいなのか、足取りもおぼつかず、なんか酔っ払ってるみたいにふらふらと歩いている。


「おい、ココ、大丈夫か?」

「大丈夫ですわ! お任せくださいですわ!」

「ほんとのところは? 無理そ?」

「……無理そうですわ……」


 素直じゃないか。

 太陽はだんだんと上ってきていて、日差しも強くなってきている。

 俺たちは大きな木の木陰で休むことにした。

 ココを昼寝させれば魔力も回復するかもしれないしな。

 ……まるでココを道具のように扱ってるみたいで気が引けるけど。

 木陰の草むらに横たわると、ココはあっという間に寝息を立て始めた。

 その顔を眺める。

 綺麗な顔をしてる。

 嘘だろっていうくらいに白い肌、奴隷労働しているのに日焼けしていないのは体質だろうか。

 その白い肌に映える薄桃色の唇、形のよい眉にながいまつげ。

 金髪の髪の毛もさらさらだし、奴隷じゃなかったらさぞかしモテただろう。

  

 そのときだった。

 

「あのー」


 二人組が俺たちに声をかけてきた。


「すごい治癒魔法を使ってどんな怪我もなおしてくれるって聞いたんだけど……」


 十五歳くらいの少年二人。

 どちらも粗末な服を着て、やせこけていた。


「タルミ、やめようぜ、怒られるぞ」

「何いってんだ、あのままじゃミーシャは死んじゃうぞ? ナニーニはそれでいいのかよ!?」


 二人のステータスを見る。


 タルミ。

● C

▲ D

■ E

魔力 C

★ S


 ナニーニ。

● D

▲ D

■ E

魔力 B

★ D


 ナニーニと呼ばれた方の少年はこう言う。


「どうせ救世主とかインチキだよ。それに、俺たちが勝手にこんなことしたら怒られるぞ」

「いや絶対女神様が遣わした救世主だって! 間違いないよ」


 まあどうあれ、ほかに怪我人がいるらしい。


「いいぞ。怪我人はどこにいるんだ?」


 俺が聞くと、タルミが俺の袖を引っ張って、


「こっちです! こっちこっち! もう……死んでるかも……。とにかく急いで!」


 寝ているココを置いて、俺は少年たちにひっぱられその場所へ行く。


 そこに横たわっているのはミラリスとそう年齢の変わらない、小学生くらいの女の子だった。


 だが、そのやけどの仕方はひどい。

 右腕が焼け焦げ、炭の棒みたいになっている。

 高熱を発しているのだろう、全身汗びっしょりで顔色は土気色だ。


「おい、ミーシャ、救世主様を連れてきたぞ!」


 タルミが言う。

 意識があるのかないのか、返事はない。


● F-

▲ F-

■ F-

魔力 F

★ D


 ……瀕死だな。

 思わず俺は呟いた。


「ひどいな……まだ子どもだし、どうして村人たちはこの子を優先しなかったんだ?」


 すると、ナニーニはぶっきらぼうに言う。


「決まってるさ。俺たち、奴隷だからな。俺たちは人間の数のうちに入ってないんだよ」



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