第15話 聖なる女神の力よ
俺たちは避難してきた村人たちを見て回る。
中には、重篤な大やけどを負った人が何人かいた。
子どもまでいる。
十歳かそこら、ミラリスと同じような年齢の男の子。
焼けた木材が背中に落ちてきたとかで、その部分がひどいやけどになっているそうだ。
その部分には薬が塗られ、粗末な布を当てられているので俺からは患部が見えない。
ただ、本人は昨日から意識を取り戻すこともなく、とんでもない高熱を発しているそうだ。
「パルート! パルート! しっかりして……うう……」
母親らしき女性が顔を覆って泣いている。
俺は医学には詳しくないが、このままでは助からないだろうという予感はする。
パルートのステータスも低い。
● F-
▲ D
■ F-
魔力 F-
★ C
だが、俺なら、俺たちならやれる!
「よし、ココ、やるぞ」
俺が言うと、ココはムン、とでかい胸を張り、気合を入れた表情で、
「はい!」
と元気よく答えた。
「さあさあ救世主様がいらっしゃいましたよ! 救世主様が! 助けてくださいます!」
泣いていた母親は顔を上げて、驚いた顔を見せた。
「で、でも……」
「お任せくださいですわ! うふふ、救世主様を信じれば救われますわ!」
ココは俺の手を引っ掴み、少年の手を握る。
「早く早く! 救世主様!」
「よし、やるか」
「はい、やりますわよ!」
なんか掛け声とかいるのだろうか。
うーん、いいの思いつかないな。
キュアップ・ラパパじゃプリキュアおじさんということがバレるし……。
まあなんでもいいか。
「聖なる女神の力よ……この者を癒せ……」
おお!
なんかそれっぽくてかっこいい!
あとは……。
そうだ、こんなのはどうだ?
「天にある太陽よ、その光で我に力をあた――」
まだ言い終わらないうちにピンク色の光が俺たちを包んだ。
なんだよ、最後まで言わせてくれよ!
キュイーン!
音が鳴ってココのステータスが変化する。
● E
▲ D
■ E
魔力 SSSSS⇒SSSA
★ Ultra
あ、この魔力の数値SSSSAになったってことは、大雑把にSを一つずつ消費するんじゃなくて、内部に数値があるってことかな?
たとえば、魔力が10000あればS、8000ならAとか。
それはそれとして。
あっという間だった。
十秒もたたないうちにパルートはパッと目を覚ます。
そのまま起き上がり、キョロキョロと辺りを見回す。
「あれ? 僕、どうしたんだっけ?」
その途端、母親が叫んだ。
「パルート! パルート! 大丈夫なの? 背中を、背中を見せておくれ!」
上半身裸になっている少年の裸はそれはもうすべすべのピカピカに滑らかな綺麗な皮膚に戻っている。
「きゃーーー!」
母親は口を手で覆って、大喜びだ。
そのまま、ココに抱きつく。
「ありがとう! ありがとう! ありがとう!」
そして二人、抱き合ったままぴょんぴょんと飛び跳ね始めた。
「私の力ではありません。この、救世主様、トモキ様のおかげなのです!」
ココが言うと、今度は俺に抱きついてくる母親。
「ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます! こんな治癒魔法……宮廷治癒魔術師でもなければ無理だと思ったのに……。まさか、まさか……」
そして俺にすがりついたまま膝をつく母親。
「ありがとうございます、ありがとうございます、ああ、ほんとに奇跡だ、奇跡だ、ありがとう、ありがとう……」
そしてそのまま俺のニューバランスのスニーカーにキスをする。
「いやいや! よしてください、そこまでのことじゃないですよ」
「そこまでのことです、息子が……息子が……ううーーっありがとうございます」
ビコンッ!
音が鳴って母親のステータスが変化。
● D
▲ D
■ E
魔力 E
★ C⇒SS
それを見ていた別の村人が声をかけてくる。
「あの……うちのおふくろもおおやけどを負っていて……診てもらえんかね」
「ああ、もちろ……」
俺が答える前にココが元気な声を出した。
「もちろんですわ! この救世主様であるトモキ様の力にかかれば、どんな怪我人でも治してみせますわ!」
そして、ココの魔力が尽きるまで俺は村人たちを回復してまわった。
それを繰り返していくうちに、俺のさじ加減でココに消費させられる魔力の量が調節できることも分かってきた。
こいつは収穫だぞ。
さて。
問題はここからだ。
重傷者は治したけど、まだやけどや傷を負っている村人はたくさんいる。
ココの魔力はENPになったし、この先はどうしようかな?