毒ガス
「この小説、会話だけで作られてるらしいよ」
「マジか。それは…えらい挑戦的だな」
「ね。しかも、基本的に話ごとの繋がりがないから、一話一話が独立してるらしい。つまりどっからでも読んで良いってことだね」
「……つまり、一話一話が薄っぺらいってことか?」
「……それは言わない方がいい。作者に消されるぞ」
「それで消されたらお前、作者が認めたようなもんじゃねぇかよ笑」
「確かに笑 じゃあ消えろ」
「え? なにーー」
「これでよしっと」
「なあ。あれどう思う?」
「どうって言われてもねぇ……つまんなそうな顔してんなって」
「わざわざこんなとこまで来てるのにスマホばっか見てるって、悲しくなんないのかな」
「悲しくなかったらあんな顔してねぇだろうよ」
「確かに、それは言えてる。あ、今度は笑った。ホントになに見てるんだろう?」
「鷲が飛ぶ動画でも見てんじゃねぇの?」
「それであの顔だったら感情分からなすぎる」
「感情なんてみんな分かんねぇだろ」
「ボクは分かるよ」
「へぇ? じゃあオレの感情当ててみろよ」
「いいよ。……ふん!」
「クッセ! お前屁こいたな! オ゙エ゙ェ! クッセ!!」
「分かった。君の感情は怒りだ!」
「お前ふざけんじゃねぇよ!!」
「ゴメンゴメンって……クッサ!」
「お前も食らってんじゃねぇか!」
「あ、食らうといえばさ、最近ご飯の味変わったよね」
「なんで屁のあとにご飯の話できんだよ!」
「まあまあ。でさ、あの小さい木の枝みたいな形のご飯あるじゃん?」
「……ったく。あるな」
「あれさ、前より苦くなったよね」
「あー、そう言われりゃそうかもな」
「色もウンチみたいな色になったじゃん?」
「よし終わり。この話はここまでだ」
「え、でも――」
「うるさい。喋るな。黙れ。口を開くな。俺のご飯タイムに影響が出る」
「ハハッ。それで言ったらウンチって言った時点でもう出てるっしょ」
「よし。殺す」
「あー! ゴメン!! ゴメンって!! ボクが悪かった!! ほら! みんな見てるから! 動画撮られてるから!!」
「チッ……」
「ハァ…ハァ…ハァ……危ない危ない」
「次やったら俺の屁で殺す。いいな?」
「死因が友達の屁とか嫌すぎる」
「なら気を付けろ」
「はい!」
「いつも返事だけは立派なんだよなコイツ」
「あ、見てあれ。キリンみたいな服着てる人いる!」
「どれどれ………どれだ?」
「ほら、あの白い帽子被ってる人!」
「あ、あれ……か? あれはキリンか……?」
「どうみてもキリンでしょ! 黄色と茶色だし!」
「でもお前、あれシマウマみてぇな柄してるぞ」
「シマウマもキリンだろ!」
「おいおい。それは暴論が過ぎるぜ」
「シマウマも、ギリギリキリンだろ! キリンだけにギリギリね!」
「おー。ウマくもなんともねぇな。シマウマだけに」
「おもんな」
「よっしゃ。ケツに力入れてっと……」
「ゴメンゴメン。ジョーダン! ジョーダンだから!」
「ハッ。やるわけねぇだろ」
「あ、ゴメン。出る」
「は?」
「……ふぅ」
「おま! マジか! クッ……オ゙ェエ゙! ガハッゴホッ!! ……クッサ! あぁ、視界が……お、俺は……もうダメだ……」
「おい! しっかりしろー! クソッ! なんでこんなことオ゙ェエ゙……! ……あ、これダメなやつだ。ゴホッ……あ、飼育員さんだ……スミマセン……ス、スカンク専門の医者を、お願……い……しま……す……」
「読んでくれてありがとう!」
「ございました!」