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「その手は、震えていたとしても」

「……ふう」


 ティナの肩をそっと押して立たせると、彼女は何度もこくこくと頷いた。

 涙はもう止まっていた。けれど、その手はまだ震えている。


 俺はそんなティナに、優しく語りかける。


「大丈夫だ。怖いのは当たり前。でも、それを乗り越える一歩を踏み出せば、必ず変わる」


「……私、変われますか?」


「変われるさ。俺が保証する。お前は強くなれる」


 その一言に、ティナは小さく息を吸って、ほんの少しだけ笑った。

 その笑顔は、どこか儚くて、それでも確かに“前を向こう”とする決意がにじんでいた。


 いい傾向だ。あとは、適切な課題を与えて、経験を積ませるだけ。


(さて……問題は、次に出てくる“敵”だな)


 俺はふと、先ほどの女子生徒たちの態度を思い返す。

 あれは“ただの不良”のそれじゃない。

 “誰かに許されている”という自信があった。つまり――背後に“権力”がいる。


 それが、今この学園で最も厄介な存在――レイナ=エルバートである可能性が高い。


 王族に連なる血筋。魔法の才能、政治的手腕、見た目、カリスマ性、すべてを兼ね備えた“学園の女王”。


 そしてその裏で、気に入らない存在を徹底的に潰してきたという噂もある。


(やれやれ……いよいよ火種が燃え上がってきたか)


 俺はティナを保健室に送り届け、職員室には報告だけ残して、教室へと戻った。




【教室】


「先生、遅かったですね〜。筋トレ手伝ってたとか?」


 出迎えたのは、脳筋元気印のガルド。相変わらずいい意味で空気を読まない男だ。


「ちょっとした用事だよ。それより、ガルド。お前、今日の補習授業、逃げるなよ?」


「うっ……! やっぱそうなるッスか……」


「筋力は裏切らなくても、試験の点数は誤魔化せないからな」


 その隣では、ユーフェリアが頬杖をついてこちらを見ていた。


「ティナは? 保健室って書き置きがあったけど」


「ああ、少し休ませてる。……ちょっと嫌なことがあってな」


「……ふぅん。じゃあ、私からも一言言っておかないとね。“いじめ”は嫌いなのよ」


 その瞳が、わずかに赤く光る。彼女の魔力が揺れた。

 やはり――あの一件、他の生徒にも響いている。


「で、先生?」


 今度は、リシェルが席からこちらを睨んできた。珍しくペンを持って、真面目にノートを開いている。


「誰がやったの? ティナを泣かせたやつ。私、そういうの、ほんっとムカつくんだけど」


「おいおい、君ら暴走すんなよ?」


「教師が“制裁”しないなら、生徒がやるしかないでしょ?」


 ……言ってることは正しい。間違ってるのは、やり方だけ。


 俺は一拍置いてから、告げた。


「安心しろ。俺が“教える”。お前らには、“正しいやり方”で勝たせてやる」


「……へぇ、教師らしいこと言うじゃん」


 リシェルが口元をゆるめ、ふいと視線を逸らす。


「だったら、次の授業――“その方法”を教えてよ」


 教室に、静かな緊張が走る。


 このクラスの空気が、確かに変わってきている。

 バラバラだった問題児たちが、少しずつ“クラス”になろうとしている。


(さて、準備するか。俺の戦い方を――次は“お前たち”に、教える番だ)




【その頃・レイナ=エルバー】


「教師が、生徒を本気で守る? ふふ……理想論ね」


 紅茶を啜りながら、レイナ=エルバートは笑った。


「なら、壊してみましょう。その“理想”を」


 彼女の命令で、動き出す上級生たち。

 学園の“上”と“下”――明確な力の差が、今試されようとしていた。



ここまで読んでくださりありがとうございます!


面白い!と思ってくださった方はブクマ、☆、評価の方をよろしくお願いします!


しばらくの間、毎日投稿しますのでよろしくお願いします!

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