死神の夢
私は、君がこの世に生を受けるところを見ていた。
当初はそれだけを見届けるつもりが、
君があまりに無垢で、無機質なものだから
その後も目が離せなくなってしまっていた———。
君の天性には誰しもが羨むものがあった。
「恵まれている」と、よく言われていたね。
この世に恵まれているも、
貧しいもないというのに。
天はただ、
やはり二物を与えず
それに等しい負を与えるというのに―――。
やがて君は成長し、
決められた台本通りの役を得て
たちまち「死神」と称えられた。
そんなことは気にも留めず
ただ役目を果たし続ける君が、
いつしか私のことを
目で追うようになっていた。
それが何を意味するか、君はまだ気づかない。
そもそも君は、
昔から自身の感情というものに無頓着すぎる。
私には分かってしまうのだ。
君は、君という人生そのものに嫌気がさしていた。
無意識ながらに、誰よりも強く死を欲していた。
君の場合、望まずとも急かさずとも、
その時は遅からず来るというのに———。
ある時、気つけば私は囚われの身となっていた。
捕らえた者の姿は見ていない。
この世界での私は、不吉な存在であり
狩られる側。
時間の問題で仕方のないことだった。
時を待たずして、月光が差し込む夜
鉄格子の扉が開け放たれた。
すぐに君だと分かったよ。
私の手を取り、外へ連れ出す君に問うた。
「私を殺すの?」
「いいや」
「じゃあ何で?」
「さあ、自分でも分からない
…ただ、君がどこかに導いてくれるような気がした」
「この国を? それとも、この世界?」
「俺を」
「へえ。君をどこへ導けばいいのかしら」
「分からない」
なんて哀れなのだろう。
私は、君が真に望みさえすれば
連れていってあげたんだよ。
たとえ、それが禁忌だったとしても。
それに君には一つの光が この先に用意されていた。
君の潜在意識の中にある望みは
その光と同時にかなう。
無意識にずっと、私に救いを求めていた君よ。
見守ることしかできない私を、
どうか許して———。
必ず迎えに来るとだけ約束して
私はその場を去った———。
「また」と見送る君の姿を見て、
結局、シナリオどおりに進むしかないのだと
痛感させられた。
今——、目の前にいる君が、
私の膝の上で眠る君が目を覚ます。
「おかえり」
「ただいま。
…ずっと、見守ってくれていたんだね」
「見守ることしかできなかったけれど」
「いいや、俺はそれに救われていたよ。
奪うばかりで、
ずっと君を追い求めてばかりいた。
でもね…
そんな俺にも何かは残せた気がするんだ」
「ええ。ぜひ聞かせて」




