表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

ニュートンのバランスボール

 蕎麦王は火曜日と木曜日が蕎麦専門になる。官田が本郷道場に行くので野上が厨房に入り羽川が割烹着にエプロンで客席を担当する。それでも洋食を無理に頼む客がいるのでパスタ位なら提供する。


 本郷道場健康コースの稽古が終わり官田と廣尾卓(ひろお)がやって来た。

「蕎麦以外は何にする。」

 野上が二人に声を掛けた。

「生姜焼も、ラム酒でフランベ。」

と官田は言う。

「俺はお任せ。どうせ怜さんが企んでるんだろ。」

 (すぐる)はニヤニヤしながら言った。

 野上は官田と卓に蕎麦を出し、怜も二人に生姜焼を出した。

「これだけじゃないよね。」

 卓が言うと怜は

「赤ペペロンチーノもあるのよ。」

とハバネロをたっぷりまぶしたペペロンチーノも出した。

「これ食べたらどうなるの。」

「全部食べたら後ろ回し蹴り(うしろまわし)の利息払ってあげる。」

 卓の問いに怜が答える。

 二人は何かに付けて腹筋ごっこと言って腹を小突きあっている。只、最近は卓の拳が当たると怜が悶絶するようになった。

 卓が

「危ないから、止めにしない。」

と言っても怜は

「自惚れんな。絶対捌く。」

と気丈に言う。本郷と野上は二人に〈程々に。〉と注意するようになった。

 卓は真っ赤なペペロンチーノを平らげた。怜は

(オタク)の身体は中も外も普通じゃないよね。」

と呆れている。


 店が閉店すると怜はエプロンを外し割烹着を脱いで、

「利息返すわ。」

とジムウェア姿になった。卓は怜に対峙する。少し間が空き自然体から卓の(こぶし)が突然弾けるように怜の腹を打った。怜は無言で腹部を押さえ(うずく)まる。

「怜さん、もうやめよう。本当に危ないから。」

 卓は心配そうに怜の顔を覗き込む。

「今日で最後にしよう。危険だ。」

 野上が卓に言うと官田も首を縦に振った。怜は呼吸が整うと卓に、

「どうしたらあんな風に打てる訳。理科の実験の何だっけ、そうニュートンのバランスボール。」

と苦しそうな表情で問い掛ける。

「真面目に稽古してるだけ。あれよりゆっくりだと怜さんに捌かれる。」

 卓の言葉に怜は

「そんな褒め方嬉しくない。」

と涙目で返した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ