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ー仲間ー

初作品となります。拙い文章ではございますが、お楽しみいただければ幸いです。


 自分が助けられたことを理解したゴブリンは、ユーグたちに頭を下げた。ロワイシュバリー王国ではゴブリンには最低の知能もない野蛮な魔物と言われているため、この姿を見たら驚くことになるだろう。

 しかしユーグはテイマーとして常にソタとブリューといった知能が高い魔物と一緒にいるため、特にこのゴブリンの行動を見ても驚いた様子は見せなかった。


「ふぅー、やっと傷を治してくれたね。でもこの後このゴブリンはどうするんだろう?」


〈なんじゃ?そこも含めて考え助けたわけじゃないのか?〉


「いやー、そこまで考えて行動したわけじゃないというかなんというか」


〈全くお主は3年前とあまり変わってないのう…まぁそうじゃのうこのまま群れにもたぶん帰れんだろうな。

 多分じゃろうけど一緒にいたゴブリンだけじゃなく群れ全体からいじめに近い行いをされていたようじゃしな〉


「そっか……(そうか、そうなんだね、このゴブリンは3年前までの僕と同じだ、あの男爵家にいたときの僕と……)」


 仲間のゴブリンたちに囲われ暴力を振るわれていた小さなゴブリン見てユーグは昔の自分と重ねていた。あの男爵家にいたときの、母親を亡くしてから家族から虐待を受け、また使用人からもいないように扱われていた孤独な自分と、ユーグにはソタとブリューといった新しい家族といったものができたが、このゴブリンにはいない。


「お前も僕らと一緒に来るか……?」


 これはユーグの心の奥底から出た言葉であった。そう言いながらユーグは右手を差し出す。ゴブリンは言葉を理解してないはずなのになぜか強く頷きながらその右手を握った。


〈まぁこうなるとは思っておったけどな、ほれ、ブリュー新しい仲間だぞ〉


「ぐわぁ、ぐぅ!」


「そうだ!ソタ、普通のテイムの仕方教えてよ、あんまりやりたくないけどこのゴブリンとはまだ絆契約を結ぶほどの信頼はないでしょ?」


〈そうじゃの、さっき会ったばかりじゃしな、主従の方の契約ならさっきの戦闘をこのゴブリンも見てるから結べるじゃろ。

 普通のテイムは魔力を手から放出しそれを相手の魔物に触れながら名前を付けるのじゃよ。魔力を直接放出せずに、自身の手と相手の魔物の体に触れ魔力の繋がりを間接的に繋ぐのが主従の契約時のテイムじゃ。

 ちなみに普通はテイマーなりたてやあまりテイムを使わないものが最初に使うのがこのテイムの方法じゃから、あまり魔力操作の練度が必要ないのじゃよ。絆契約の時に名前を付けないのはすでに信頼関係がある間柄ならお互いの名前を知っとるじゃろうからな。

 とりあえずこの手順でやってみい〉


「わかった!」


 ユーグは魔力を手に纏わせて、ゴブリンに触れる。そうして間接的に魔力でゴブリンと繋がった。


「よし、これで、えっーと君の名前は……決めた、君の名前は『ブラブ』。ブラブだよ、これからよろしく」


 『ブラブ』とそう名付けられたゴブリンとユーグに魔力による確かな繋がりができた。そしてユーグとブラブは光りに包まれた。

 

「ゴブゴブ!」

 

「うん、よろしくね!あっそうそう、僕の名前はユーグだよ!そしてこの大きな熊はブリュー」


「ぐぅわぁーん」


「そしてこのモモンガはソタ、色々知ってて物知りだから何かあればソタに聞けば大丈夫だよ」


〈うん、わしがソタじゃ、ブラブこれからよろしくじゃ!〉


「ゴブ!」


「とりあえずの自己紹介も終わったところで、今日はこれからどうしようか?

 ブラブも傷が全部ポーションで治っても、あんな目に遭ってるから疲れてるでしょ?」


「ゴッゴブブゴ、ゴブゴゴゴブブゴゴ!」


「うん?そんなに疲れてないって、えっわからないけどさっきまでより元気になったって。どういうことだろう、ソタ?」


〈うーむ、ちぃと調べてみるか……うん?これは、ほぅそういうことか〉


「何か、わかったソタ?」


〈うむ、わかったのじゃ、ブラブは魔力操作をして自身の体力を回復していたようじゃな。多分無意識で魔力操作をしていたのじゃろう。

 そういえばあんなに囲まれ暴力を振るわれていたのにポーションだけで治療できたしのう。多分じゃろうが、あれが日常的に行われていて、まだ命があるというのは無意識のうちに魔力操作で身体強化をして身を守っていたのじゃろうな。

 ユーグと契約することで魔力増加の恩恵で今まで以上の身体強化が可能になったので、体力回復もできたのじゃな〉


「なるほどね、そういえば身体強化に体力増加の効果もあったよね。あまり僕は使ってなかったから忘れてたよ」


〈お主は魔力操作を使って魔法や枝の剣に使うからの。そうじゃのう、そろそろ身体の成長も安定してきたから、身体強化の鍛錬もした方が良いじゃろう〉

 

「わかった!じゃあブラブも、もう動けるようになるなら狩りにでも行こうか。そろそろお肉がなくなりそうだったから、今日か明日あたりに狩りに行こうと思ってたんだよね。

 でも狩りの間はブラブは見学かな、まだどういう動きができるか見てないからね」


〈そうじゃな、それでいいじゃろ。肉がないとブリューもうるさいしのう〉


「ぐぅぐぐぐ!」


〈なんじゃ、そうじゃろうが。冬の間の干し肉にも文句を言って、なくなりそうになった時も文句言うとったじゃろ〉


「ぐるぅるぅ!」


「まぁまぁソタもブリューも落ち着いてよ、ほらブラブも驚いてるよ。ほら、とりあえず岩山の方に狩り行くよ」


「ぐぅ!」


〈全くこやつは、はぁ~〉


「ゴゴブブ?」


 *****


「よし、とりあえずここら辺でブリューと一緒に獲物を探してみるね。ソタはその間ブラブに魔力操作をちゃんと教えといてよ」


〈うむ、よかろう。そうじゃなブラブお主はまず自分の魔力を自覚するとこ始めよう。

 まぁすでに無自覚に魔力操作を使ってるからのう、魔力の自覚は難しいもんじゃないじゃろう〉


「ゴブブ?ゴブ!…………ゴブゴブ!」


 魔力の自覚は、全ての魔法を使うものがしなければいけないものである。魔力で身体強化を行うものの中には、無意識で魔力操作を行い身体強化をしてるものもいるが、意識的に魔力を操作して身体強化を行った方が効率が良いのである。魔力の自覚は、主に他者の介入を受けずに自己の力で自覚する方法と他者の魔力操作を受け自分の魔力を自覚する方法がある。

 また後者の方は自覚させる方の魔力操作の練度が余程高くないと難しいためあまりしていない方法であった。もっとも人は【ジョブ】によってはこの魔力の自覚を容易にできるものもあるので、人の中ではこの他者による魔力の自覚を知らない地域もある。

 ブラブは、魔力の自覚がまだできていなかったため自発的な魔力操作による身体強化はしていなかったが、無意識に魔力による身体強化はしていたのでソタに言われて試し始めてからものの数分で魔力の自覚は完了した。


〈うむ、自分の魔力はわかったようじゃな。そう魔石ある力が魔力じゃ、その魔力を魔石から少しずつ放出して、血と同じように体中に巡らせれば身体強化はできるのじゃ。

 特に重点的に強化したい部位があればそこに魔力を留まらせるようにすればそこの部位が強化されるぞ〉


「ゴブブブ」


〈元々無意識に身体強化を行っておったようじゃから、意識的な魔力操作による身体強化も楽に習得したな。

 ……そうじゃのう、わしの見立てじゃとブラブお主は魔法も扱うことができると思うぞ〉

 

「ゴブ!?」


〈まずは生活魔法じゃな、とりあえず水、火、風、土を魔力で属性に変えて具現化してみるのじゃ〉


「ゴブブ!」


 ブラブはまず自分の魔力を水の属性へと変え具現化してみた。出てきたのはコップ1杯分くらいの量の水である。


〈うーん、このくらいの量ならブラブの属性は水ではないようじゃな〉


 ブラブは続けて、火、風、土に属性を変えて具現化してみせた。火は焚火の火種になりそうなくらいで、風は若干のそよ風というくらいである。そして土はブラブの膝下くらいまでの量の土山が具現化できた。


〈ブラブは土の属性の能力があるようじゃな、よし続いては光と闇じゃな。

 光はそのままこの辺りを照らせるような光点を具現化させてみるのじゃ。闇はその逆じゃなこの辺りを暗くさせる帳じゃな〉

 

 ブラブの光点は、そこまで強いものじゃなくせいぜい夜であれば足元を照らせるくらいであった。その逆に闇の帳はソタとブラブがいる辺りを完全に暗くすることができるほどの強さになった。


〈うむ、とりあえずはブラブの属性は土と闇のようじゃな、これからはこの2属性も扱えるように魔法の鍛錬をしていくからな、頑張るのじゃよ〉


「ゴブ!」


〈うん?どうやらユーグたちも戻ってきたようじゃ〉

 

「おーい、ソタとブラブー。こっちは一応狩りを終えたよ。今日はスモールリザード4匹くらい狩れたよ」

 

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