ー出会いー
初作品となります。拙い文章ではございますが、お楽しみいただければ幸いです。
ゴブリンを多く見かけるようになって数日経ったある春の日、この日もユーグは森に出てゴブリンを駆除しながら素材集めをしていた。
「今日もゴブリンが多いな、もう5匹のグループ2つ狩ったよ」
〈まぁこの程度ならまだ問題ないじゃろ。もっと数が増えて10匹のグループになってきたらあぶないじゃろな〉
「まだ5匹のグループばかりだから安心だね、これからもこのままだと良いんだけど…」
〈それはできないじゃろな、たぶんじゃけどこの森でゴブリンを狩ってるのはわしらくらいしかおらんじゃろうし、わしらだけでも数はそこまで減らせんからのう〉
「そうだよね、はぁー、せっかく作った家なのに捨てないといけないなんて」
〈まぁそう言うな、ユーグ、中で作って置いてあるものは移動するときは持っていけばいいじゃろうし、外の野菜や薬草類も収穫できるもんは持っていくからのう〉
「うん、そうするしかないか…うん?この魔力はゴブリン?だけど1つだけ大きい魔力があるし、別の魔力を囲ってる?」
〈どうした?ユーグ〉
「たぶんゴブリンのグループなんだろうけど、1体だけ大きな魔力があるんだよ。それにほかの魔力が1つの魔力を囲って何かをしてるみたい」
〈その魔力は全てゴブリンなんじゃろ?〉
「そう、大きな魔力も多分ゴブリンだと思うけど、普通のゴブリンに比べてはかなり大きい」
〈ふーん、どうじゃろうな?予測はつくが合ってるかはわからんからのう。数はどのくらいおるんじゃ?〉
「大きいのと囲まれてるの含めて6体だね」
〈6体か、それならまだ対応できる数だと思うが、まぁゴブリンも索敵能力が高いわけじゃないからわしらを発見できんと思うからちと見に行くか〉
「了解、じゃあここからは隠密優先で行くよ」
*****
〈うむ、あれか、大きい魔力の正体はたぶんゴブリンチーフじゃろうな、ゴブリンの上位種じゃ、ほれ、あの大きいゴブリンじゃ〉
「上位種か、僕らでも勝てるかな?」
魔物は魔石に魔力を蓄える。その魔力が魔石の容量以上に蓄えられた時、魔物は進化し、上位種へとなる。
例えば蜥蜴形の魔物であるスモールリザードは進化するとロックリザードなどの上位種になる。ブリューのようなジャイアントベアの幼生体がジャイアントベアの成体になることは進化とは言えない。そこからまた上位種になることを進化という。
〈まぁ大丈夫じゃろ、何かあればわしが手助けすれば平気じゃろう〉
「わかった。でも何かあのゴブリンたち変だね。
1体のゴブリンをほかの4体のゴブリンが囲って逃げないようにしてゴブリンチーフがちょっと離れてるとこで見てるけど…うん?あれ殴られてる囲われてるゴブリンはボロボロだ、それにほかのゴブリンに比べて少し小さいような」
〈なるほど、小さいからいじめられてるのじゃろ、あんなにボロボロされて。ここのゴブリンはなかなかに悪辣じゃな、自分より小さなものをいじめるなんてな〉
「あの小さいゴブリンあんな目に遭ってるのに、まだ気持ちで負けてないように見える。生き残ろうとしてる」
〈どうする?ユーグ、このまま立ち去ってもいいが、あいつらも駆除するか?〉
「僕はあの小さなゴブリンを助けたい!あんな目に遭っているのに頑張ろうとしているあの子を」
「ぐぅ!」
〈よし、わかった。まぁこれも1つの訓練にもなりそうじゃから大丈夫じゃ。それでユーグ、どういう作戦で行くか〉
「うーん、まずはあのゴブリンの安全を確保しないといけないから囲ってる4体のゴブリンをどうにかしないとね。僕のウォーターピラーだとあの小さなゴブリンも効果範囲に入っちゃうよ…ソタにも手伝ってもらっていい?
僕とソタで4体のゴブリンを拘束して、それをブリューに処理してもらって、その隙に僕がゴブリンリーダーに対処するよ」
〈あの小さなゴブリンの安全を配慮するにはそれが良いかもな、よしそれでいくかのう〉
「ぐぅぅぅーん」
「オッケー!じゃあいくよ、ウォータバインド×2」
〈アースバインド×2〉
ユーグとソタの魔法の掛け声と共に土と水の拘束具が4体のゴブリンを抑えにかかった。土の拘束具はゴブリンの足元から2体のゴブリンを抑え、水の拘束具はユーグと手元から飛び2体のゴブリンを水の輪にかけ抑える。
「今だよ!ブリュー!」
「ぐぅ!」
抑えられたゴブリンに向かって、ブリューが走り出す。一番近くにいたゴブリンを一瞬のうちに倒し、もう1体に向かう。まだ混乱からゴブリンたちが抜け出せない中、ユーグも駆け出しゴブリンチーフに向かった。ゴブリンは人の大人の中でも小さい人程度の大きさである。ゴブリンチーフはそれより少し大きく人の大人程度でゴブリンより体格が良い。
そのゴブリンチーフにユーグは、木の枝に魔力を纏わせた長剣で一撃を当てようとする。まだゴブリンチーフは混乱から抜け出していなかったが、その一撃には気づき自身が持っていた剣で防いだ。
しかしユーグの魔力でできた長剣は、ユーグの日々の鍛錬で鍛えた魔力操作のおかげで切れ味が上がっており、ゴブリンチーフの剣ごと腹部を斬った。腹部を斬られたことで動きが鈍ったゴブリンチーフの隙をユーグは見逃すはずがなく、そのまま次の一手で仕留めた。すでにブリューの方も戦闘を終え、4体のゴブリンは倒されていた。
「ふぅ、やっぱり上位種は普通のゴブリンとは違うな。最初の一撃に反応するなんて、この枝じゃなかったら防がれてたよ」
〈うん?剣ごと切れたのはその枝だけの力じゃないのじゃよ、お主の魔力操作の力もあるぞ。あの枝はただ魔力を纏わせやすいものじゃからな、まぁある程度の威力は強くはなるけど切れ味は魔力操作が元になるのじゃよ。まぁそんなことより早くそこのゴブリンの治療をした方がいいじゃろ〉
「へぇー、そうなんだ。そうだね、治療はポーションで大丈夫だよね?」
〈うむ、それで問題はないのじゃが、ポーションの前にお主の水魔法か何かで傷口を洗った方がよいじゃろ〉
「了解、早く治療してあげないとね」
ユーグはそう言うと水魔法で水を具現化して、ゴブリンの傷を洗おうとするが、そのゴブリンは震えながら後ずさっていく。その様子から仲間を急に倒した相手におびえてるように見えた。仲間から日常的に暴力を受けていたゴブリンも目の前でその暴力をしていた仲間たちの倒されていく様子を見て自分も同じようになるのではないかと思っているようだった。
後ずさっていくゴブリンだが、その様子を見ていたブリューがすでに後ろに回っており、それに気づいたゴブリンはブリューにもおびえその場で停止する。その隙にユーグはすでに具現化していた水でゴブリンを洗った。
「とりあえず傷口を洗うのはこれで良しとして、ほらこのポーションを傷のところに流しな…やっぱり中々受け取ってくれないね。あっそうだ!」
ユーグは取り出したポーションを受け取ってくれないゴブリンを見て、そのポーションを自分の腕に流したあと少し残ったのを飲んだ。そしてもう1つポーションを保管庫から取り出す。その様子を見ていたゴブリンは、仲間を倒していった彼らは自分を倒すために残っているわけじゃないと徐々に理解していった。
またよくわかっていなかったが、ポーションをユーグから受け取り見よう見まねでポーションを体に振りかけた。そのポーションの力で体にあった傷が治っていく様を見たゴブリンは彼らが自分を助けてくれたのだと理解したのであった。




