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ーテイムー

初作品となります。拙い文章ではございますが、お楽しみいただければ幸いです。


 山の近くでスモールリザードと遭遇戦闘をし、倒したスモールリザードを解体し終えたユーグたちは、スモールリザードが現れた場所へ移動し彼らが出てきたと思われる洞窟を探し始めた。

 ブリューの魔力による五感強化でスモールリザードの痕跡を見つけすぐに洞窟を見つけることができた。


「おっ!ここの洞窟はちょうど良いんじゃない?広すぎず、狭すぎずで」


〈そうじゃのう、お主とわしとブリューで住むには十分の広さじゃな。もう夕方になるしこれ以上良い場所を見つけるのも難しそうじゃからここを拠点にした方が良いじゃろう〉


「やったよ!ブリュー!僕たちの住む場所を見つけたよ!」


「くぅ!くぅ!くぅ!」


 ユーグは生まれてからこのかた安全な家で暮らしたことがなかった。男爵家の屋敷では虐待を受けていたためである。母親が生きているときはそこまでではなかったが、冷遇はあり子供ながら家は安息の場所ではないと感じていた。

 それが家でもない粗末な洞窟でも安息の場所となり得るところを見つけたので興奮したのであった。


〈ほれほれ、落ち着けユーグ。もうじき暗くなるからそこまでの掃除はできんかもしれんが、泊まるための掃除くらいはせんとな。

 わしが風魔法で塵と臭いを飛ばすから、そのあとにお主の水魔法で全体の汚れを取ってくれ〉


「わかった!」


 そうしてユーグたちは自分たちの家となる洞窟を掃除し始めた。ソタの風魔法で塵と臭いを取り、ユーグが水魔法で全体の汚れを取った。水魔法で汚れを取ったため水を乾燥させる必要もなく、汚れと合わさった水をそのまま操作して、洞窟の外に捨てた。

 水で洞窟を流すように掃除したため、洞窟の中にいた虫も全て排出させている。


〈よし、このあとはこの虫よけの薬を全体に塗るのじゃ。水薬じゃからお主の魔法の練習も兼ねて魔法操作でやってみろ、これが終わればご飯じゃな〉


 通常魔法は属性に変化させてから具現化し、放出操作させる、しかし属性に変化させず、魔力のまま放出して属性に対応した物質を操作することもできるのである。これもいわゆる魔法であった。


「うん!行くぞ!」


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「スモールリザードの肉も美味しいね!けっこう大きかったからしばらく狩りは必要ないかもね」


「くぅ!」


〈そうじゃな、量はかなりあるが、保存がな。お主の保管庫にはまだ時間操作ができないから、そこまで持たんじゃろ。余ったら干し肉にでもするかのう〉


「そうだね、干し肉にして冬の間食べればいいんだね!」


〈そうじゃ、ところでユーグ何か忘れておることがないかのう?〉


「忘れてること?何だっけ?そんなのあった?」


〈お主のジョブのことじゃ、拠点を作ったら使い方を説明すると言っておったじゃろ〉


「ああ、そうだったね!6日前に自分のジョブを知ったばかりだから忘れてた」


〈全くお主は……、そうじゃな、まずはテイムとは契約魔法の応用と説明したな。契約魔法の応用によって魔物と主従関係を結ぶのがテイムじゃ。

 魔物と戦闘をしたり、相手の求むものを渡したりして自分の優位を見せてからテイムによって契約を結ぶ。これが通常の方法じゃな〉


「通常?通常じゃないテイムの仕方があるの?」


〈ほう?よく気が付いたのじゃ。そう通常ではないテイムの仕方もあるのじゃ。戦闘によるテイムの仕方じゃと魔物との絆は100%とはいえないというのはわかるじゃろ?〉


「うん、なんとなく人でも戦って勝った相手の下になっても100%信用できないというのと同じでしょ」


〈そうじゃ、勝った負けたのやり取りじゃとお互いに100%信用できるものじゃないのじゃ、それはテイムでも同じこと戦いでも、ものをあげるやり方でもそうじゃ。

 でもまれに例えばお主とブリューのような関係、子供のときから一緒に育っていくような関係でテイムすると主従ではなく対等で繋がった絆契約となるのじゃ。

 まぁこれらは主従契約でのテイムでもお互いの絆が100%になり、お互いが受け入れると絆契約に変更できるからのう、通常というのは主従から始めるのが普通というの意味じゃな〉


「僕とブリューのような関係……うん?じゃあ僕はブリューと絆契約ができるってこと!?わーい、やったー!!!」


〈落ち着けユーグ……そんなに主従の関係が嫌じゃったのか、まぁそういうことでな、まずはお主とブリュー絆契約をするとしよう。

 魔力を放出しそれをブリューの魔石に繋げるのじゃ。魔物の魔石に魔力を繋げると、繋げたものと繋がったものがお互いに結び付く状態になり、そしてお互いのことを想いながらテイムと唱えれば終わりじゃ〉


「えっ!?そんな簡単なの?」


〈そもそもテイムスキル自体は比較的魔力の操作ができるものなら簡単に覚えることができるのじゃが、テイムした魔物を強化させたり、絆を結ぶのは【ジョブ】がテイマー以外じゃとちと大変になってしまうのじゃ〉


「なるほどね、じゃあブリューとの絆契約を始めるよ!」

 

「くぅ!」


 ユーグは魔力を放出し、それをブリューの心臓近くにある魔石と繋げた。動物形の魔物は基本的に心臓近くに魔石があり、熊の魔物であるブリューもそれは同じであった。お互いが結び付いた状態になったので、ユーグはブリューを想う。

 

 ……森でソタと出会ってから寂しくはなくなり、見つけた生まれて間もない熊の魔物、以前の自分より弱弱しく今すぐに死にそうだった、たぶん家族に見捨てられたのであろうその姿を見て自分と重ねた、守らなきゃと思った、このまま見捨てることはできなかった、そして拾いソタに助けられながら兄弟のように一緒に育ったあの日々を……

 

 ブリューもユーグを想う。


 ……最初の記憶は寒くておなかが空いて動けなかったこと、生まれてすぐに捨てられたから記憶もろくにないけどもう死ぬと思ってたことは覚えてる、急に何か暖かいものが自分に降り注いだ、目を開けるとそこには暖かい光があった、それがユーグだった、気づいたときにはいつも一緒にいた、一緒に育った僕の兄弟……


 ユーグとブリューが光りだす。しばらくそのまま光ったまま数分、徐々に光が収まりだす。そしてその光はブリューには胸に、ユーグには手の甲に収まり紋章が浮かびだし、消えた。


「えっ……これがテイム、絆契約なの?あの紋章は何?」


「くぅ??」


〈そうじゃ、これがテイムじゃ。まぁ光りが長く続くのと紋章がつくのは絆契約だからこそなんじゃがな。

 その紋章は絆の紋章と呼ばれ絆契約に至ったものにつくものじゃ、その効果は補助魔法の効率が上がったり、完璧な感覚共有、そして長距離念話があるのう〉


「ほへぇー、なんか色々凄いんだね!ところで補助魔法って何?」


〈補助魔法は魔力使った身体強化を他人が扱う魔法じゃ。

 通常は身体強化などの魔力のみで行う魔法は体内で扱うため他人に使うことはできないのじゃが、テイムなどで他と魔力で繋がったものは魔力の繋がりを通して身体強化などの魔法を使うことができるのじゃ〉


「なるほど、僕とブリューはテイムで魔力が繋がったからそれができるんだね」


〈そうじゃ、そしてお主らは絆契約でもあるからその効率は通常よりも上ということじゃ。

 ……ところでユーグお主はブリューのみのテイムで良いのか?〉


「えっそれってどういうこと?

 だって僕にはブリューとソタしかいないんだよ。ブリューとテイムしたらあとは………えーーー!?ソタともテイムできるってこと??」


〈もちろんじゃよ、わしも魔物じゃよ、それにわしとは絆もないと言うのか?〉


「いや、そんなことはないけど、ソタとなんか契約するとは思わなかったから」


〈それでどうする?わしとも契約するか?〉


「もちろんだよ!お願いします!」


〈うむ、それじゃ始めるのじゃ!〉


 ユーグは魔力を放出し、ソタの魔石に繋げた。そしてお互いが結び付いた状態になったので、ユーグはソタを想う。


 ……ユーグは想い出す、母親が亡くなり、家族からもいないように扱われ時には暴力があった、食事もなくなり生きるため森に入ったことを、そこで出会った小さな生き物、体は小さくても知恵は人以上にあり色んなことを教えてくれた、時には守ってくれることもあった、寂しくて寂しくてこのまま一人なのかと思った日々に終わりを告げた存在、僕の家族……


 ソタはユーグを想う。


 ……ある日拾った存在。最初見たときは町にいる貧困層の子供より酷い状態だった、時には酷い暴力を受けた跡もあった、このまま放置はできなかった、傷ついた跡は治したり、色々なことを教えた、そして今はあの酷い親の下から離れた、まだ自分のことは全ては教えてないけど家族の同じ存在……


 ユーグとソタは光り出す。そして光はソタは胸に収まりだし、ユーグは手の甲に収まり紋章が浮かび上がった。


〈これで絆契約は終わりじゃ、まぁ特に今までと変わりはないがのう〉


「うん、これからもよろしくね、ソタ、ブリュー!」

 


 

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