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ー神殿ー


「やっぱり、全然違いますね!

 短剣の時は少し剣身が伸ばせることくらいしかできなかったのに、ショートソードは結構自由に動かせます。

 それに切れ味も上がってますね」


 ユーグは斬った巻き藁の斬れ跡を見ながら感想を述べる。魔力を流さず斬ったものと魔力を流して斬ったものを見比べると、明らかに魔力を流したものの方がキレイな斬れ跡になっていた。


「まぁこれでも魔力の親和性が低いんだよ。

 魔法合金や親和性が高い鉱物を素材にすると、魔法の増幅器としても使えるからな。

 もちろん切れ味や武器の強度その他いろいろ上がるぞ。

 それでユーグ、どの剣にするんだ?」


 ユーグの感想にグスタフは魔法合金と親和性が高い鉱物を素材にした場合の効果の説明をする。そしてどの剣にするかをユーグに問う。


「そうですね、やっぱりグスタフさんがおススメしてくれたショートソードにします。

 他の2つは僕には扱いそうにないので」


 ユーグは長剣と短剣は自分に合ってないと判断し、ショートソードを購入することにした。

 

「そうだな、ユーグは初心者っていうわけではなさそうだが、はじめのうちはある程度扱いやすい武器の方が上達しやすいもんだ。

 それと剣帯はどうする?ユーグは持ってないだろ?」


「剣帯?」


「剣帯っていうのは剣を装備するときのベルトのことよ」


「それは必要ですね、でもいくらですか?」


「剣帯はそんなにしないぞ、400ドーラだな」 


「それなら剣帯もお願いします」


「じゃあショートソードはロックリザードの素材と引き換えで、剣帯だけの請求で400ドーラだな。

 他に何か買うものはないか?」


 グスタフはユーグに剣帯が必要かどうか訊く。剣帯を知らなかったユーグはその説明をロッテにしてもらい、剣帯の購入もすることに。


「あまり僕はわからないんですけど、他に何か必要ですか?」


「そうだな、砥石とか日々の整備に必要なもんだが、普通の商店でも置いてるやつだ。

 別にうちの店で買わなくても大丈夫だし、毎日した方が良いもんだが、数日は手入れせんでも平気だ。

 だから金があるときにした方がいいぞ」


 グスタフはユーグの質問に砥石などの整備に必要なものを教えるが、それは今無理して買わなくてもいいものであると言う。


「わかりました。それじゃあ400ドーラ払いますね」


 そう言うとユーグは保管庫から400ドーラを取り出し、グスタフに渡す。


「おう、毎度あり。ショートソードは今着けてくか?」


「はい、お願いします!」


 グスタフはユーグのショートソードと剣帯をユーグの体格に合うように調整した。


「よし!これでいいぞ!うん、中々様になってるじゃないか」


「本当ですね、ユーグ君良く似合ってるわよ」


「見た目は新米冒険者って感じだな。実力は新米どころじゃないけどな。

 今は防具は必要ないかもしれないが、このままランクが上がれば必要になるからな、そのために金を貯めとけよ」


 ユーグが今着ている服は、洞窟生活をしている時に自分で作ったものだった。その上に剣帯を腰に付け、ショートソードを帯剣している。防具類は持っていないため装備していない。その見た目は新米冒険者なものであるが、ユーグにはよく似合っていた。[熊の腕]の皆やアンネ、グスタフもユーグのことを褒める。


「そうですよね」


「ああ、低ランクの内なら大丈夫だけどな、ランクが上がると防具もちゃんと考えんといかんぞ」


「ユーグ君の場合は魔法で今まで何とか出来てたかもだけど、防具もちゃんとしたらある程度無茶な行動もできるからね」


「金が足りんかったら、素材持ち込みでも大丈夫な店もあるからな。

 俺の店は武器専門だが知り合いにも防具屋やってる奴もいるし、紹介することもできるからその時が来れば俺んとこにまた来いよ!」


「はい、ありがとうございます!」


「じゃあそろそろ出るか。グスタフさんまた今度武器の調整をお願いします」


「私もまた武器の調整頼みに来ますね!」

 

「おう、待ってるぞ!じゃあな!」


 ・・・・・


「さて、次はどうしようか?

 まだ宿に戻るには早い時間だしな」


「ユーグ君はどこか行きたいとこない?

 どこかの商店とか冒険者用品扱ってるお店とかはどう?」


『グスタフの店』を出たユーグたちは大通りまで戻ってきた。そこでロッテはユーグに次にどこに行きたいか訊く。


「うーん、そうですね……。あっ、そうだ!

 さっき、グスタフさんが言ってた神殿に行きたいです!

 世界樹の話もそうなんですが、神話の話も聞いたことがないんで、聞いてみたいんです」


「そうか、神殿ならこの近くにもあるからいいんじゃないか?」


「そうね、じゃあ皆で神殿に行きましょうか」


「すみません、私とマリブは仕事があるのでここで宿に戻ります。

 ユーグ君今日はありがとね、今度は私が戦うとこ見せてあげるから」


「はい、お願いします!」


「アンネちゃん夜までには帰るから、マスターたちには夜ご飯をお願いしますって伝えておいてくれない?」


「わかりました。じゃあまた宿で!」


 アンネとマリブはユーグたちと別れ、宿に戻った。


「じゃあ、俺達も行くか、神殿はすぐそこにあるからな」


 ・・・・・


 ニルスの言う通り神殿は大通りからさほど遠くない場所にあった。大通りを魔境の森側に進み、路地に少し入ったところである。


「うわー、凄いですね。

 冒険者ギルドよりは小さいですけど、周りの建物に比べたら大きいし、それに建物の感じが全然違います!」


「ぐるぅー」 「ゴブー」


 ユーグたちは初めて見る神殿に圧倒されていた。ユエルゴア男爵領にいた頃は町の中を自由に歩くことが出来ず、天職の儀の際は男爵の屋敷で行っていたため、神殿に訪れるのは初めてのことであった。

 ドライツェン王国の神殿は地域に合わせた建築物になっており、ここグリムノーデンでは周りの建物同様石造りで建てられていた。しかしその外見は似ておらず、神殿は厳かかつ神聖な雰囲気もどこか感じるものであった。


「グリムノーデンの神殿はここだけじゃなくて反対側の大通りの方にもあるのよ、そっちの方が大きくてここより凄いわよ!」


「そうだったんですか?でもなんで2つも?」


「それはな元々この神殿しかなかったんだが、グリムノーデンが発展していくことで、この神殿だけでは足りなくなったんだ。

 それであの外壁の町を作るときの区画整備の際にもう一つ神殿を建てたわけだ」


「だからこの神殿は旧神殿って呼ばれ、新しい方の神殿はそのまま神殿って呼ぶんだ。

 まぁなんていうか今では旧神殿は古いだけで訪れるのはたまに来る俺達のような冒険者しかいないんだけどな」


 ユーグたちが旧神殿を見て感嘆しているとロッテとニルス、クラウスが神殿について解説してくれる。その解説を聞いてもう一度ユーグは旧神殿を見る。


「確かに古い感じはしますけど僕は好きですよ!

 この古い感じがなんか歴史を感じるというか……」


「ハハハッ!そんな大層な歴史もないんだけどな、神殿には。

 じゃあ中に入るか、管理している司祭たちがいるはずだからな」


 そうクラウスは言うと、神殿の扉に手をかけて中に入る。それにユーグたち、他の[熊の腕]のメンバーも続いて中に入った。


「中も凄い!外の雰囲気に似てなんだか神聖な感じがします」


「そうか?俺はそんな感じはしないんだが」


「私はしますよ、兄さん。子どもの頃からここにいるとなんだが落ち着いた感じがしますし」


「クラウスは子どもの時から入り浸っていたから慣れちゃったんだろ。

 ニーナはあれかな、【ジョブ】の影響じゃないか?」


「クラウスさんとニーナさんはよく旧神殿に来てたんですか?」


「ああ、俺達はここの孤児院出身だからよく来てたというか実家みたいなもんだな」


「今は孤児院も神殿の方に移設してますけど、旧神殿しかないときはここにあったんですよ」


「どなたか参拝しにいらした方ですか?」


 ユーグたちが神殿の入口のあたりで話していると奥から誰かが声をかけてきた。

明日も21時に投稿します。

しばらくの間は平日の5日間は投稿で、

土日はお休みさせていただきます。

また来週から投稿時間は平日20時に変更します。

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