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ー『嵐豹』ー


「おっ着いたぞ、ここが俺たちが良く利用している宿、『嵐豹』だ」


 冒険者ギルドから距離的にはそこまで遠くなく、しかし入り組んだ路地を通った先にその宿屋はあった。


「『嵐豹』、宿屋の名前にしてはちょっと剣呑な感じですね。獣人族の方がやってるんですか?」


「まぁそれは入ってからのお楽しみだな、じゃあ入るぞ!

 ……こんばんは!」


「あっいらっしゃいませってニルスさんじゃないですか、それに[熊の腕]の皆さんも。

 依頼から戻ってきたんですか?」


 宿屋に入るとそこには女の子が一人で店番をしていた。その子が[熊の腕]に気づき声をかける。


「ああそうだよ、アンネちゃん。

 今日帰って来てさっきまでギルドにいたんだ。マスターやマリーさんは食堂の方かな」


「はい、そうですよ。もう夜の時間なんでお父さんとお母さんはそっちの方にいます」


「そうかユーグ君を紹介したかったんだが、それはあとでいいか。

 とりあえず俺たちはまだ部屋が残っているよね?」


「やだな、忘れちゃったんですか?

 皆さんは月単位で払ってもらっているので大丈夫ですよ。

 うん?その子は新しいお客さんですか?それに従魔たちも」


「そうだよ、アンネちゃん。この子はユーグ君で従魔たちはこの子の従魔よ。

 依頼の最中に知り合ってグリムノーデンに来たいっていうから一緒に来たの。

 この子の分の部屋ってまだ空いてるかしら?」


 ニルスと少女との会話の途中、ユーグに気づいた少女にロッテがユーグの紹介をする。

 

「そうなんですね!初めまして私はアンネって言います。この宿の店主の娘でここで働ています。

 よろしくお願いします!」


「あっ初めまして僕はユーグです。

 このモモンガ形の従魔がソタでクマ形がブリュー、ゴブリンのブラブです。よろしくお願いします」


〈よろしくじゃ!〉 「くるっ!」 「ゴブ!」


「えーと、ユーグさんの部屋ですね。ゴブリンさんもいるから2人部屋の方がいいですよねー。えー部屋は」


「えっそんな大丈夫ですよ2人部屋じゃなくても。

 僕とブラブは大きくないので1人部屋でも十分です」


「いいからいいから、2人部屋に泊まりなさい。

 今回の滞在費用は私たちで出すから遠慮しないで」


「えっでも」 「いいから、アンネちゃん2人部屋は空いてそう?」


「はい、空いてます。じゃあユーグさんの部屋はロッテさんの言う通りに2人部屋で」


 アンネという少女の自己紹介にユーグは自分と従魔たちの紹介をした。そしてユーグは遠慮したが、ロッテのごり押しで2人部屋になった。


「夜ご飯はどうします?

 ここ最近、トリ形の魔物の肉が大量に仕入れられたので食べられますけど」


「もちろん、ここで取らせてもらうよ。

 野営飯でさんざん食べたけど、やっぱりマスターとマリーさんのご飯は別格だからな。

 ユーグ君も楽しみにしてな」


「ありがとうございます。それじゃあお母さんに言っときますので、部屋に荷物置いたら食堂に来てください。

 それとユーグさんは何泊しますか?」


 アンネの食事の勧めに対してニルスは当然のようにもらうことにする。またアンネはユーグにどのくらい滞在するのか問う。


「うーん、どのくらいがいいんだろう?」


「ユーグ君ならそれほど時間かけずにシルバーランクまで上がってこれるんじゃないか。

 だから長期滞在してもいいんじゃないか?」


「だけどシルバーランクに上がってすぐに魔境の森に入れるわけじゃないだろう?

 長期滞在しても魔境の森で活動できなければここまで戻るのは大変だ。

 だから長期滞在はしなくてもいいと思うぞ」


 どのくらい滞在するのか問われたユーグは悩むが、それに対してニルスは長期滞在を推し、クラウスは短期滞在を推す。

 ニルスはユーグならすぐにシルバーランクまで上がり、魔境の森で活動できるようになると思うため、魔境の森に近いこの宿の長期滞在を推し、クラウスはシルバーランクに上がってもすぐに魔境の森では活動できないことから、その際活動のメインはグリムフォアになるため短期滞在を推す。

 魔境の森での活動はランク制限がかかっている。その上で魔境の森に入るのに魔境のみに生息する植物などを覚える必要もあった。それは魔境の森の危険な素材を街に持ち込ませないためであった。そのためランクが上がっただけでは魔境の森での活動は許可されないのである。


〈ユーグよ、それなら短期滞在で良いんじゃないか?

 お主の事じゃから色んなを見て回ってみたいじゃろ?〉


「うーん、そうだね。初めてこんな大きな街に来たから、色んなところ回りたいかも。

 それにグリムフォアもあまり見てないからね」


〈じゃあ短期でいいじゃろ。3泊ほどでどうじゃ〉


「わかった、それで僕もいいと思うよ。それじゃあアンネさん3泊でお願いします」


 悩むユーグにソタが短期滞在で大丈夫じゃないかと言う。ユーグの事を考え、ユーグのこの街の色んなとこを見て回るという目的には少し宿『嵐豹』は不便なとこにあった。


「はい、わかりました。

 えーと、ユーグさんのお部屋代はどうすればいいですか?さっきおっしゃってように[熊の腕]の皆さんに請求する形で大丈夫ですか?」


「ああ、それで大丈夫だ。俺たちへの請求に今回の分を足してくれ」


「本当に大丈夫ですか?僕も料金は聞いてないですけどお金はありますから、自分で払いますよ」


「大丈夫よ、ユーグ君。

 森の中で出会えたおかげで早く依頼を終えることができたし、それに私たちこれでもけっこう稼いでいるのよ」


「それじゃあお言葉に甘えて、お世話になります。

 ニルスさん、ロッテさん、クラウスさん、カールさん、ニーナさんありがとうございます。」

 

「くるぅ」 「ゴブ」 〈ありがとなのじゃ〉

  

「料金の件わかりました。それじゃあこれがユーグさんのお部屋の鍵で、[熊の腕]の皆さんのはこちらですね。

 ユーグさんのお部屋は皆さんのお部屋の近くにしておきました。2階に上がって奥の部屋ですね。[熊の腕]の皆さんはいつもの部屋で」


 アンネは滞在日数も費用の請求先も決まったため、部屋の鍵をユーグたちに渡す。その鍵は少し大きめサイズの正しく鍵であった。

 

「その鍵に魔力を流してもらえますか?

 鍵は魔道具になっているので、一度魔力を流せば個人の魔力を登録して登録者以外では鍵が使えないようになるので」


「えっ魔道具!?ソタこれって魔道具だってどうなっているんだろう?」


〈ほう、これも魔道具なのか。わしも初めて見るのう。

 でも軽く見た限りだとそこまで複雑な作りではないみたいじゃな〉

 

 宿屋『嵐豹』は魔道具の鍵を使用していた。人に宿っている魔力は各々で違っている。多くの個人設定ができる魔道具はその個人で違う魔力を判別して設定されている。『嵐豹』で使われている鍵の魔道具もそういったものであった。この類の魔道具は比較的この世界で流通されているもので魔道具の中ではポピュラーであり、普通の鍵も使用されているが宿屋では多く利用されていた。しかし安価な宿屋の中には普通の鍵を利用していたり鍵がないとこもあり、セキュリティの面で不安な部分がある。


「それじゃあ部屋に荷物を置いたら、食堂までお越しください。

 夜ごはんの準備をしておくので」


「ああわかった、すぐに行くよ」


 そう言ってユーグは[熊の腕]に続いて2階に上がった。


 ・・・・・


「それじゃあユーグ君、荷物置いたらすぐに食堂集合で。

 ここは従魔たちも食堂に連れてきて大丈夫だから安心して一緒に来な」


「はい、わかりました。すぐ行きます!」

 

 一度[熊の腕]の皆とは部屋の前で別れ、各々の部屋に入っていく。ユーグも自分の部屋の鍵に魔力を流し自身の魔力を登録したあと使用する。部屋の扉の開けるとそこには2人部屋なので当然ベッドは2台に窓の近くには机が1台あった。机の上にはランプもあり、夜になっても机を利用することができるようになっていた。


「うわー、いい部屋だね」

明日も21時に投稿します。

平日の5日間は投稿で、

土日はお休みさせていただきます。

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