ー冒険者ギルドー
「ここが冒険者ギルドかー」
ユーグたちは冒険者ギルドグリムノーデン支部の中に入った。中には広々としたスペースとカウンターがあり、そのカウンターの奥には幾人かが働いていた。
「もうこの時間はほとんど人もいないな。職員だけだな」
「あら?ニルスさんじゃないですか?それに[熊の腕]の皆さんも。
確かギルドからの依頼で西の森の調査に出かけていたんじゃ?
それにその男の子と従魔かしら?は一体どなたたちでしょうか?」
もうすでに日も暮れ夜になっていたため、冒険者ギルドの中は閑散としていた。中にいたのは冒険者ギルドの職員たちであり、その中の1人がニルスたちに声をかけてきた。
「ナディネさんがいて良かった。依頼のことなんですけど一応異変の原因は発見できたんですけどね。
そのことで支部長に報告しないといけないかもしれないんで、遅くなってすみませんが支部長を呼んでもらえますか?
この子たちもそのことに関係あるんで」
「支部長にですか?わかりました。
まだギルドで仕事をしているので呼んできます」
「ありがとうございます」
ニルスはナディネと呼んでいた職員に冒険者ギルドグリムノーデン支部の支部長を報告のために来てもらえるよう頼んだ。頼まれたナディネはすぐに仕事の手を止めカウンターの奥にある階段を上がっていった。
「支部長もいて良かったわね。
いなかったらまた来て2回同じ報告をしなかったかもだったから、ちょっとめんどくさかったのよね」
「まぁこの時間だったらまだいるだろうとは思ってたけどな。
もう少し遅い時間だったらわからなかったけど」
基本的に冒険者ギルドは支部ごとに営業を任されていた。グリムノーデン支部は魔境の森に隣接しているため冒険者が多く、ギルドの需要が高いことからどの時間でも対応ができるように24時間営業をしていた。しかし基本的には夜遅い時間から朝の早い時間までは夜勤対応のギルド職員しかいない。
今回の[熊の腕]の依頼の報告は支部長へ直接行う必要があるとニルスたちは判断したため、職員だけに報告を入れてもまた後日来ないといけないことになる危惧があった。そのため街の観光をせずに若干急ぎ足でギルドに来たのである。
「お待たせしました。支部長から部屋へ案内するよう言われましたのでカウンター奥の階段から2階へ上がってください。
そちらの従魔はモモンガ形とゴブリンなら2階へ上がれますがクマ形の従魔は厩舎でお待ちしていただけますか?少し大きすぎるので」
支部長を呼びに行ったナディネはすぐに戻ってきて、ユーグたちを2階へ行くよう指示した。
しかしブリューはまだ小型化スキルを使っていなく元の大きな身体のままだったため、厩舎で待っているように言われる。
「あっ忘れてました。
ブリュー小さくなってもらっていい?」
「ぐるぅ!」
ユーグは小型化するのを忘れてたのを思い出し、ブリューに頼んだ。ブリューはすぐに了承し、小さくなる。
「なぁ!」 「えっ!」 「……!」 「おっ!」 「かわいいー!」
ユーグからの頼みでブリューが小型化するとそれを初めて見る[熊の腕]の皆は驚きのあまり止まってしまう。ニーナだけはあまり驚かず小さくなったブリューの可愛さに抱きかかえようと近づくが、その前にブリューはユーグに抱き上げられた。
「あら、その子は小型化スキルが使えるのね。その大きさなら大丈夫ですね。じゃあ行きましょうか。
ほら、[熊の腕]の皆さんも行きますよ」
ギルド職員のナディネもあまり驚かず小型化スキルを使えるブリューに感心する。そのまま[熊の腕]に再起を促し、ユーグたちを連れて2階へ上がる。少し遅れて慌てた様子で[熊の腕]も2階へと上がるのだった。
・・・・・
「こちらの部屋ですね。すぐに支部長を連れてきますので、お座りになってお待ちください」
2階へと上がり、すぐ近くの部屋に通されたユーグたち。その部屋にはテーブルとソファーが2台あり、応接室だと思われる部屋であった。
「とりあえず座るか、でもソファーだけじゃ足りんか」
「それじゃ、僕は座らなくても大丈夫なんで[熊の腕]の皆さんは座ってください」
「いや今回の依頼の報告はユーグがメインになる。
だからお前は座ってないとダメだろ」
「いや、でもそれだと皆さんが」
ソファーは3人分くらいのスペースしかなく、片方のソファーは支部長が座るものだと思われるためユーグと[熊の腕]の合わせて6人では足りなかった。
そのためユーグは[熊の腕]の皆に譲ろうとしたが、それにクラウスが逆にユーグを座るようにと譲り合いが起きてしまった。
「あれ?まだ座ってなかったんですか?
ああ私たちの分は別によかったのに」
「うん、なんじゃ?座ってなかったのか。
ったくお前らは冒険者なのに真面目じゃのう」
どう座るか迷ってる間にナディネが支部長と共に部屋へと戻ってきた。その手には椅子を1脚ずつ持っており、ユーグたちが悩む必要はなかった。
・・・・・
「よし、そこの坊主はわしらのことを知らんから、まずはわしから自己紹介をしよう。
わしの名前はハンス、ここの支部長をしておるもんじゃ」
ユーグたちがソファーに座り、まず支部長からの紹介が始まった。ハンスは高年の男性で長いひげが生えていた。背は低いが筋骨隆々で見た目はまさしくドワーフと思われるものであった。
「私はナディネです。一応ここの副支部長をしています。よろしくお願いします」
先ほどからユーグたちを案内してくれたナディネという職員は副支部長であった。ナディネは瘦身で背が高くまだ若いように思われる顔立ちをしていた。またかなりの美形でもあった。
「よろしくお願いします、ナディネさん、ハンスさん!
僕はユーグって言います。このモモンガ形の従魔はソタでクマ形がブリュー、そしてゴブリンのブラブです!」
「くぅ!」 「ゴブ!」 〈……よろしくじゃ〉
「それでニルスよ、依頼の件はどうだったのじゃ?」
「その件ですがあの森にミミックオウルが出現したのを確認しました。
それもグリムノーデンから2日ほどの距離に」
ハンスたちの自己紹介にユーグも自分の紹介を返し、それが終わるとすぐにハンスはニルスに依頼の報告を求めた。ニルスは簡潔に森の異変の原因と考えられるミミックオウルの話をする。
「ふむ、ミミックオウルか。少しあの森には合わん魔物じゃのう」
「そうですね、あの森には高くてもシルバーの魔物しかいなかったはず。
それがミミックオウルが現れたのであれば、ミミックオウルがトリ形の魔物以外を駆逐してトリ形の魔物が異常繁殖してしまってもおかしくはありませんね」
魔物は魔石が体に有している生物である。見た目は普通の動物などに似ている魔物もおり、そういった魔物はケモノ形と呼ばれる。トリ形の魔物もその一種であり、ケモノ形の魔物の基本的な生態はその見た目の動物と変わらないものも多い。
フクロウ形の魔物もそれであり、獲物として小動物形の魔物などを狩る。また基本的には魔物としての位が上がるほど魔力が豊富な環境を好むため普通の森などの環境には低位の魔物しかいない。
「ニルスたちが言うように今回の南西の森の異変はミミックオウルが原因とみて良いじゃろう。
だが、何故あの森にミミックオウルが出現したのかが問題じゃ」
「そうですね。
あの森でニルスさん何体のミミックオウルと遭遇しましたか?」
「えっーと、俺たちが遭ったのはユーグたちと合流してからの1匹だったんで、あっ、あとユーグも倒してたよな?」
「はい!僕たちも1匹遭遇して倒しました」
明日も21時に投稿します。
しばらくの間は平日の5日間は投稿で、
土日はお休みさせていただきます。
(ストックがあまりないものですみません)




