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ーグリムノーデンー


「よし、グリムノーデンに戻って来れたな。

 冒険者ギルドは反対側の門の近くにあるから少し距離がある。この時間帯ならそこまでギルドも混んでないだろう」


「そうよね、ギルドが混む時間は暗くなる前だもんね」


 グリムノーデンに入り、冒険者ギルドに向かって歩きながら[熊の腕]はユーグにグリムノーデンの冒険者ギルドについて説明する。


「そうなんですか?」


「ああそうだぞ。普通、冒険者は暗くなる前に依頼や狩りなど町の外に出る行動を終えるんだ。

 これは暗くなったら視界が悪くて行動しづらいっていうのと魔物は夜目が良いものも多いからな。夜間での戦闘は俺たちに不利なんだ。

 だから暗くなる前に行動を終えて、町に戻ってくるのが多いんだ。そうするとギルドが混むのは帰ってきた直後、だいたい夕方前から夕方くらいになるな。

 まぁ遠征のときは、その日に戻れんからな。これには当てはまらないな」


「それだけじゃないのよ。冒険者はお酒を飲むのが好きな人も多いからね。夜はお酒が飲みたくて早く戻ってくる冒険者もいるのよ」


「そ、そんな理由で……」

 

 冒険者が夜には町に戻る理由の一つにあきれるユーグであった。


 ・・・・・


 「うわぁー、建物が高い。それに人がいっぱいだ」


「ぐぅうー!」 「ゴブブ!」


 グリムノーデンの街はユーグが今まで訪れた街町の中で一番大きい都市であった。

 多くの建物は石造りで建てられ、ユーグが見る限り階数も最低2階以上ある。街の雰囲気も石の冷たい感じではなく何故か暖かさを感じられるものであった。


 門から中に入ると正面には大通りが通っており、その先には街の中心に建つ領主館に続いていた。その大通りにはもう夜になる時間帯にもかかわらず多くの人が行き交っていた。


「凄いだろ、グリムノーデンは辺境都市の中でも一番の規模があるからな。ドライツェンの中でも上位の都市でもあるんだぞ」


「この街は国の中で冒険者の一大拠点になってるからな。

 他にも冒険者が集まるダンジョン都市もあるがそれよりも規模としてはこの街の方が上らしいぞ」


 ユーグたちの驚嘆にニルスとカールが反応する。

 魔境自体この世界において数えるくらいしか存在していない。ましてやユーグたちがいる大陸には2つしか魔境はない。そんな数少ない魔境に接しているグリムノーデンは、そこでしか取れないものや魔物を狙って数多くの冒険者が集まる都市で有名であった。


 「一応この街の近くにもダンジョンがあるのよ。しかも低ランク向けのダンジョンがね。

 だから高ランクだけじゃなく駆け出しの冒険者も集まるから余計に人が多くなるのよね」


 ロッテがニルスとカールの説明に補足を入れる。

 魔境はその危険性を考慮して入場がランクで制限されている。魔境の森に向いている門の利用をランクで制限しているのである。そのためもう一つのユーグたちが使った方の門を出れば魔境の森に入ることは可能なのである。だから年に何人かは低ランクでありながら魔境の森に入ってしまい、その命を散らしてしまう。

 魔境の森だけしかなければ高ランクの冒険者しかグリムノーデンには集まらなかっただろう。しかしグリムノーデンにはダンジョンがあったのである。そのダンジョンは低ランク向けの難度であり、駆け出しの冒険者に使われている。そのためグリムノーデンは低ランクも高ランクも集まる都市であった。


「へぇー、じゃあ僕はまずダンジョンの攻略を目指せばいいんですね!」


「そうだな、でもユーグの実力を見る限りダンジョンの攻略はそこまで時間かかるもんじゃないだろう。駆け出しとは比べもんにならないくらいの実力はあるようだからな」


「私たちの駆け出しの時とも大違いよねぇー」


「そうそう。俺たちは駆け出しのころ、ずいぶんダンジョンにお世話になったものだ」


「そうですね。その時に皆さんと出会ってパーティを組むようになりましたよね」


「懐かしいな。最初は俺たち3人だけだったからな、クラウスとニーナと会ってしばらくしてパーティを組むようになったんだな」


「それでダンジョンを攻略できるようになって魔境の森で活動するようになったのよね」


「そうなんですね!皆さんはグリムノーデン出身なんですか?」


「いや俺とニーナだけだな。この街出身なのは、でも俺たちは孤児院の出だからそこまで良いもんじゃねぇよ」


「俺とロッテとカールは村から冒険者になるためにここに来たんだ。

 まぁ村も辺境伯領の村だからそこまで遠くはないけどな」


 グリムノーデンのダンジョンの話から[熊の腕]の駆け出しの時の話は移っていく。

 

 [熊の腕]は駆け出しの時から堅実な冒険者として有名であった。それはメンバー全員が辺境伯領出身であるため小さい頃から魔境の恐ろしさを知り、身近にも冒険者が多かったのでグリムノーデンでの冒険者生活を十分知っていたからであった。その堅実さゆえに今回の森での異変の調査という依頼を受けることになったのであった。


 ・・・・・


「遠目で見ても大きさにビックリしたんですけど、

 近くで見るともっと大きいですね!ここはお城ですか?」


「なんだその感想は、、、

 でも確かにな。ここは辺境伯様の屋敷だ。内壁があるから城のように見えるけどな」


「このお屋敷がグリムノーデンの中心になる。

 内壁に沿って移動すると反対側に冒険者ギルドや魔境の森への門があるんだ」


 ユーグたちは大通りを通って、辺境伯の住まう領主館の前に来ていた。その館は初めて見るものにとっては、城のように見えるほど大きな内壁とところどころにある塔で囲まれていた。魅せる城というより城砦に近いものであった。

 この領主館を中心として北東側に魔境の森への門があり、南西側にグリムフォアがある。南西側の大通りには住民のための商店などが多くあり、反対側の北東側の大通りには冒険者のための施設などがある。


「すまんな、ユーグあまり案内もできずに通りすぎるだけで。

 今度ちゃんと案内できるように時間取るから今回は許してくれ」


「いえ、全然大丈夫です!こうして見ているだけで楽しいですから!」


「ホントにね、この大通りの方のお店で美味しいところがあるから今度行きましょう!」


「はい!」 「ぐるぅ!」


「ブリューも行きたいって言ってますね」


「そうだな、今日はたぶんもうその店は混んでるから入れないけど街案内の時にでも行こう」


 大通りをただ通過するだけになってしまい謝るニルスに対してユーグは初めて訪れた大都市に興奮して答えた。ロッテの提案に対しても好意的に返事をし、次回の約束を決めるのであった。


 ・・・・・


「よし、こっちが魔境の森側の大通りだな。もう見えてるあそこが冒険者ギルドグリムノーデン支部だ」


 ユーグたちは領主館をぐるっと迂回し、北東側の大通りに着いた。ニルスが指さした先にはこの大通りの中でもひと際大きな建物が建っていた。


「この街の建物みんな大きかったですけど、冒険者ギルドはなんか大きいの規模が違いますね!」


「そうだろう。まぁ領主館を除外するとギルドが一番大きいかな」


「縦は他の建物とそう変わらないけどね、広さが違うのよ。あの中にも色んな施設が入っているからね」


 冒険者ギルドは階数はそこまで周りの建物と変わらなかったが、その敷地が違った。そのためひと際目立っていた。ロッテが言うように冒険者ギルドグリムノーデン支部には冒険者が必要な施設を有しているためにグリムノーデン一の広さを誇っていた(公共施設を除く)。


「よし、中に入るぞ!報告も早く済ませて、ユーグにグリムノーデンの名物を食べさせてやらんとな!」


 こうしてユーグは冒険者ギルドに初めて訪れるのであった。

 


明日も21時に投稿します。

しばらくの間は平日の5日間は投稿で、

土日はお休みさせていただきます。

(ストックがあまりないものですみません)

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