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ー[熊の腕]ー


「うん?

 えっえっーと、そ、そうか、それは大変だったな

 (3年も森ってどういうことだよ。絶対触れちゃいけない奴だよなぁ)」


「と、とりあえず私たちも自己紹介しない?

 向こうがちゃんと名前を教えてくれたんだから」


「そ、そうだな、俺はこのパーティー[熊の腕]のリーダーをやってるニルスだ。

 そして、」


 ニルスはそう言うと、顔をウサギの耳が付いている女性に向ける。


「私はロッテよ。

 このパーティーでは主にアタッカーをやってるわ。よろしくね、次は、」


「俺かな、俺はクラウス、よろしく!

 パーティーでの役割はロッテと同じアタッカーだな、まぁ見て分かるようにマジックアタッカーだがな。

 そしてこいつは」


「私はニーナです。ヒーラーをやっています。

 よろしくお願いします、ユーグさん。最後は」


「俺はカールだ。

 パーティーでは主にスカウトをやってるな。よろしく……」


 クラウスとニーナの見た目はユーグと変わらず同じ人族のように思える。

 しかしニルスとロッテ、カールには人族とは異なる特徴があった。ニルスには熊の耳が、ロッテにはウサギの耳、そしてカールには鳥の羽が付いていた。


「はい!よろしくお願いします」


「ねぇニルス、ユーグ君たちは森の中を進んできたって言ってたのだから、何か森の異変に気付いているんじゃない?」


「そうだな、国境の町から森の中を進んできたなら俺たちより早くこの森に入っている。

 ユーグ君はこの森で何か異変に遭ってないか?」


「異変ですか?

 もしかして鳥形の魔物しか森にいないってことですか?」


「ああ、そうだ。俺たちはその鳥形の魔物しか出てこない異変の調査に来たんだよ。

 それで、そのほかに何か異変みたいなものは見てないか?」


「そうですね……。

 ああ、確かある時から急にウッドオウルしか出てこなくなったんですが、ソタが言うには急にウッドオウルしか出てこなくなったのは異変の原因に近づいてきているらしいですけど……」


「確かに、そうだな」


「普通は徐々に魔物の生態系というのは変わっていくものだからな、それが急に同一種のみしか現れなくなったのなら通常とは言えない状態だな」


「それに上位種がその魔物たちを従えている可能性もあるわ。

 それが今回の異変の原因かもしれないわね」


「そういえばウッドオウルを避けて進んでいたら急にウッドオウルとミミックオウルっていう魔物に襲われたんですけど……」


「ミミックオウルか……。

 うん、その魔物が原因の異変である可能性が高いな」


「確かにな、ミミックオウル自体は防御があるパーティーではそこまで強い魔物ではないが、アイアンランクの冒険者では倒せる魔物じゃないしな。

 それにこの森を利用しているのは冒険者ではない一般の人々だ。ミミックオウルが1匹だけならまだしも集団で来たのなら生態系が壊れてしまう可能性はあるな」


「やっぱりこの異変の原因はミミックオウルなんじゃない?

 ミミックオウルなら魔境の森の外周部に生息しているのだから、そこから来たとしてもこの森ならおかしくないでしょ」


 ユーグの話にニルスとロッテ、クラウスが加わり話は進む。そして[熊の腕]は結論付ける。


「そうだな、これは1度ギルドへ報告に行った方がいいか。

 ミミックオウルはユーグが倒した1匹だけではないだろうからな。ギルドに戻ってこの森の奥をしばらくは侵入警告を出してもらった方がいいだろう」


「そうね、そうしたほうがいいわね。理想を言えばこの帰り道にミミックオウルがもう1匹出て来て複数いる証拠が欲しいけど。

 まぁユーグ君が狩ったミミックオウルだけでも、この森が通常より強い魔物がいる証明にもなるから大丈夫でしょう」


「あのー、皆さんそんな簡単に僕の話信じていいんですか?」


「うん?何だユーグは嘘言ってんのか?」


「いや、そういうわけじゃないですけど。ちゃんとミミックオウルの魔石とかもあるので。

 ただ皆さん証拠も見ずに僕の言葉だけで決めちゃったので……」


「いや、まぁな、普通の場所とかではもっと疑うが、こんなとこに魔物といる子どもなんて普通ではないしな。

 一応俺たちもそこそこ人の見る目はあるつもりだ、だから大丈夫だ。それにそんなこと聞いてくるやつに悪い人なんていないからな」


 そう言ってニルスは笑顔をユーグに向ける。


「それでこのあとはどうする?

 もう日が暮れそうだから野営でいいか?」


「ああ、そうだな。ユーグ君はどうする?

 俺たちと一緒に行くか?」


「少し相談してもいいですか?」


「えっ、相談か?も、もちろん、大丈夫だ。

 そこまで時間は取れないが相談するくらいはあるからな」


 そう言われたユーグたちは、[熊の腕]から少し離れたところに移動した。

 

「ソタ、どうする?僕は一緒に行動してもいいと思うんだけど」


〈そうじゃのう、あの者たちは特に悪い感じもせんから、一緒に行ってもいいんじゃないか。

 それにあの者たちといたら冒険者のことも聞けるんじゃないかのう〉


「あっ、そっか![熊の腕]の人たちは現役の冒険者だったんだ!

 じゃあ一緒にいたら冒険者の話聞いても大丈夫かな?」


〈あの者たちなら聞かれたら答えてくれんじゃないのかのう。まぁ聞くのは野営中にするのじゃよ。

 まだ異変が収まってないから、移動中は周囲の警戒に集中させた方が良いじゃろうからな〉


「うん、わかった!」

 

 ユーグたちはまた[熊の腕]の元に戻り、一緒に行くことを報告した。


「よし、それじゃ移動をするか。

 まだ少し日が暮れるまで時間があるからな、街の方に向かいながら野営に適したところを探そう」


 こうしてユーグたちは冒険者パーティー[熊の腕]と共に北の辺境都市に向かうことになった。


 *****


「今日はここらで野営をするか、ちょうどユーグ君も含めた俺たちが寝られるスペースもあるしな」

 

 ユーグたちは[熊の腕]と出会った場所から少し行ったっところに、ちょうど野営に良い場所を見つけて今夜はそこで過ごすことに決めた。


「とりあえず薪となる木を探して、夜飯の準備をしないとな」


「そうね、それにしても今回の調査依頼は森の中でしかも単一形の異変でそれが鳥形の魔物っていうのはラッキーだったわね」


「ホントにそうだよな」


「えっなんでラッキーなんですか?」


「それはですねユーグ君、調査依頼は基本的に何日もその異変の起こった場所で過ごして調査しないといけないのです。

 だから場所によっては全く食べ物がないところもあるのですよ」


「そっ、だからそういう場所での調査は街で仕入れた保存性のある食べ物、まぁ例えば干し肉や堅パンを持っていくしかないのだがな。それが不味いんだよ。

 だから森の中だと食べられる魔物や野生の動物もいるからな、それに今回は鳥形の魔物の単一形の異変だ。鳥形の魔物は食べられる種が多いからな、それでラッキーなんだよ」


「ユーグ君も、もし保存食を食べてみたかったら一応持ってきてるからな、それを食べてみるといい。あまりの不味さに驚くぞ」


「あ、ありがとうございます?でも僕も今日の分のご飯はあるんで大丈夫です。

 あっでも皆さんの分はこれから狩るんですか?見たところ獲ってきたものがないようなので。あっそうか時空間魔法で仕舞ってあるんですね」


「うん?空間魔法?

 いやいや違うぞ、マジックバックに入れてあるんだ」


「マジックバック?マジックバックって何ですか?」


「マジックバックを知らないのか?(しゃべり方や佇まいから村人や市民とは違う上流階級出身の子だと思ったんだが違うのか)

 マジックバックは空間魔法が付与された鞄のことだ。これは空間魔法が使える錬金術師が作ったものと、ダンジョンで見つかる魔道具のものがあるだよ。

 まぁどちらも高いが、後者は見つかることも稀だからその値段は錬金術師が作ったものの比じゃないな」


「へぇー、そうなんですね。

 僕も時空間魔法の保管庫が使えるんで皆さんと一緒ですね!」


「空間魔法?保管庫?

 ……えっえっーと、それは凄いな(レアな属性に加え、それを使いこなしてる?やっぱり訳ありな貴族出身か)」


「まぁニルスしゃべるのはそこら辺にして夜ご飯の準備をしないと暗くなっちゃうよ(ユーグ君が寝たら相談よ)」


「ああ、そうだな。とりあえず飯の準備を進めるか(わかった)」

明日も19時と21時に投稿します。

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