表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/108

ーウッドオウルー


「魔境!それにスタンピード!

 こんなに薬草が多いのが魔力が増えてる証なら大変じゃん、何とかしないと!」


〈うん?まだこの量じゃ問題ないぞ、鳥形の魔物は虫や木の実などを食すからのう。

 ほれ辺りを見てみろまだ生えておるじゃろう。じゃからまだ心配はいらん。これが肉食の魔物であったら緊急事態一歩手前ってとこじゃろうがな〉


 ユーグたちが遭遇した異変は鳥形の魔物しか出会っていないこととその数、そして薬草等の魔力が豊富な自然素材が多く生えていることだけであった。それ以外森の中は、ユーグがこれまでいた森と変わらず木の実が生えていたり、虫や動物も生息していた。


〈ホントにスタンピード間近ならこんなもんじゃないのう。

 数も今より多く、森の中には魔物しかおらんくなり、その魔物も感知範囲内に入った瞬間に襲い掛かってくるのじゃよ〉


「それは怖い……。じゃあまだ安心なんだね」


〈ああ、じゃがユーグ気づいておるか?〉


「うん?何に?」


〈わしらが進む方向に進めば進むほど、魔物の数が増えておるということにじゃ。

 一日経つごとに魔物との遭遇率が上がっておる。もしかするとこの先にこの異変の元凶がおるかもしれん〉


「えっ!?じゃあどうすれば、僕らで勝てる?」


〈うむ、ここではちとわからんのう。

 じゃからお主らも気を付けて進むのじゃよ、この先これ以上に魔物が増えてくるのなら確実におるからのう〉


「わかった」 「ぐるぅ」 「ゴブ」


 *****


 それから数日経ち、ユーグたちが遭遇する魔物の数は日に日に微増ではあるが増してきていた。


〈これはもしかするともしかするかもしれんのう〉


「この先に元凶の魔物がいるってこと?」


〈そうじゃ、少しずつじゃが増えてきておる。多分じゃが元凶の魔物が先にこの辺りの魔物を駆逐したのじゃろう。

 そして鳥形の魔物がここから増え始め、その周辺に広まったってことじゃな〉


「この先ってことは……もしかすると北の魔境から来たの?」


〈そうかもしれんし、そうじゃないかもしれん。

 ただ確実に辺境都市の方面にはいるじゃろうな〉


「そうなのか、じゃあ見つからないように慎重に移動して行こうか」


 ユーグたちはだいたいの方向で森の中を進んで行っているため、確実な北の辺境都市への道を進んでいるわけではなかった。そのため今の位置から街道に出ることは難しかった。ただその方向に進めば辺境都市があることだけは確かなので進むのである。

 

・・・


「あれ?この魔力は……」


 ユーグは魔力感知で複数の魔力を発見したが、魔力があると思われる場所には木の幹しか見えなかった。だからフォレストオウルの時と同様よく注視して見てみる。


「うん?確実に魔力はあるんだけど、姿が全然確認できないよ」


〈ふむ……もしかするとフォレストオウル以上の擬態能力がある魔物がおるかもしれん。

 魔法で先制攻撃をしてみるのじゃ!〉


「わかった……ウォーターアロ―×5!」


 ユーグの元に水の矢が5本具現化され、魔力の反応があった場所に飛ぶ。魔力の反応は3つあり、反応があるところはユーグの視界では木の枝でしかなかった。水の矢は真っすぐとその木の枝に当たり突き刺さる。


「「「クェエエエエ!」」」


「えっ!?あれは?」


〈あれはウッドオウルじゃ。フォレストオウルの上位種で擬態に特化してるから、攻撃はそこまで脅威ではないのじゃ。

 お主らでも倒せるのじゃ〉


 ウッドオウルは、梟形の魔物でフォレストオウルの上位種である。上位種ではあるがそこまで高位の魔物ではない。フォレストオウルの上位種であるため擬態能力は高く、その姿を完璧に木の枝や木の幹に擬態できる。木の枝や木の幹に擬態することで天敵から身を隠すことができ、狩りの際も姿を隠したまま通り過ぎた獲物を狙う。

 またその体の硬さも木と同じ強度を持つ。フォレストオウルよりも魔力の使い方には長けるため魔力による身体強化を使用できる。収穫できる素材は肉と魔石だけである。硬さの強度はフォレストオウルよりも硬いために羽はその分重く、矢羽根には向いていないためである。


「わかった。その前に……ウォーターウォール!」


 ユーグたちの前に水の壁が具現化され、魔法での攻撃で正体がバレたウッドオウルの攻撃をけん制する。


「ブリューは前に出て僕らの方にウッドオウルが来ないように守ってて。

 隙があれば攻撃して倒しちゃってもいいよ」


「ぐるぅ」


「ブラブは僕と一緒に魔法で攻撃ね。僕は右のウッドオウルを狙うから君は左のね。先に倒した方が最後のウッドオウルを攻撃ってことで」


「ゴブ」


「それじゃ、行くよ!……ウォーターランス!」


 ユーグは水の槍を具現化させ、その槍で3体いた内のユーグたちから見て右のウッドオウルを狙う。水の槍はそのウッドオウルに飛ぶが、身体強化によりウッドオウルは飛ぶスピードを加速させ、水の槍を避ける。


「この魔物スピードが速い!」


 ウッドオウルは水の槍を躱したあと、そのままユーグに向かって攻撃しようと突撃を仕掛ける。しかしそれをブリューが横からウッドオウルに爪撃を仕掛けることで阻んだ。ウッドオウルはその爪撃をまた躱す。


「速いなら、そのスピードを止める!……ウォーターウォール!」


 ブリューの爪撃を躱したウッドオウルは、またユーグを狙い突撃を仕掛けてくるが、ウッドオウルの目の前に再び水の壁が具現化され、突撃を阻害する。そのまま水の壁に突っ込むと思われたウッドオウルは直前で避け、上空に逃げた。


「このウッドオウル、速いだけじゃなくて飛行能力も高いよ!」


 ユーグが使える魔法で動きを止めるのに最適なのは、ウォーターバインドの水の輪であるが、ウォーターバインド自体の操作スピードはあまり早くすることが出来ず、動きが速い敵に対してはウォーターウォールを使い動きを阻害してからウォーターバインドを使っていた。

 しかし今戦っているウッドオウルは動きが速いかつ飛行能力も高くウォーターウォールを使用しても直前で避けてしまうのであった。


「僕の操作能力じゃ、ウッドオウルをまだ捉えられないのか……」


 ユーグの魔力操作の技量は同世代に比べてずば抜けているが、それが魔法の操作は少し上手いくらいのものであった。それは今まで戦ってきた魔物がそこまで強くなく、スピードがある魔物との闘いの経験がなかったことに機縁する。通常飛行する魔物は、陸上歩行の魔物より討伐難易度が上がる。陸上歩行の魔物は基本的には2次元的な動きしかしてこないが、飛行する魔物は常に3次元的な動きをしてくる。

 それに加えウッドオウルなどの鳥形の魔物は飛行のプロフェショナルであるため飛行しながら機敏に動け、体躯も比較的小さいものも多い。フォレストオウルやフォレストピジョン、また鳥形だが陸上歩行する魔物は弱く、飛行能力も高くないためユーグは簡単に捉えることができた。しかしフォレストオウルから上位種に進化したウッドオウルの身体強化を加えたスピードには対応できなかったのである。

 魔法操作の鍛錬は、実際に魔法を具現化させ操作させる必要があり、魔力操作の鍛錬より魔力の消費量が多い。そのためユーグは、魔力操作の鍛錬の方を良くしており、魔法操作の鍛錬はあまりしていなかった。また魔法操作の鍛錬も自身のイメージと合わせる緻密な動きの向上を目的とした鍛錬をしていたので、魔法のスピードは通常と変わらないのであった。

 

「僕からは打つ手がないか、それなら防御に専念するしかない!」


 そこからユーグは、ウッドオウルの攻撃をウォーターウォールなどでガードし、ウォーターアロ―を使って牽制する。ブラブも同じように魔法のスピードは速くないため、アースウォールで防御しつつ、アースアローやダークフォグで牽制を入れていた。


「ぐるぅわぁ!」


「ホー!」


 しばらく膠着状態が続いていたが、ブリューを狙っていたウッドオウルが攻撃を仕掛けたときにカウンターで爪撃を入れて1体撃破することに成功した。


「ブリュー!こっちはまだ大丈夫だから、ブラブの方を手助けして」


「ぐぅ!」


 ユーグの方はまだウッドオウルの攻撃に対して余裕があり、魔力量もまだ十分あった。ブラブはまだ魔法や魔力の使い方を覚えたばかりであるため魔法の具現化するスピードもユーグほどはないためウッドオウルの攻撃をギリギリで防御できてる状態であった。

 そのためユーグは先にブリューをブラブの助けに回した。2対1の戦いになったためブラブと相対したウッドオウルはすぐに倒され、最終的に3対1になったユーグの方のウッドオウルもその後すぐに終わった。

明日も19時と21時に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ