表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/108

ー鳥形の魔物たちー

今日も21時に投稿します。


「それにしてもこの森鳥形魔物多くない?」


 ユーグたちは森の中を北東に向かい、進んでいた。国境の町から森の中に入って3日が経ち、出会った魔物は鳥形の魔物だけであった。


〈ふむ、そうじゃのうダンジョンの中では同じ形の魔物しか出てこないというのじゃあり得ることなんじゃが、ここは普通の森じゃしのう。

 魔力の反応からもフィールド型ダンジョンでもないじゃろうし〉


「フィールド型ダンジョン?」


〈うむ、フィールド型ダンジョンとは、この前ユーグが入ったダンジョンのように魔力で作られる空間が別に作られるのではなく、その環境の上に構成されるダンジョンじゃ。

 その場合階層が作られるのではなく魔力がドームのように広がり、その中に魔物などが生成されたりするのじゃよ〉


 フィールド型ダンジョンは、通常階層型洞窟ダンジョンと違い魔力が別空間を構成せずに、その環境に上乗せするように魔力を広げる。広げられた魔力はドームのような形に展開し、ダンジョンを構成する。この場合別空間を作り出したり、階層になったりせずにそのままの環境でダンジョンになるため俗にフィールド型ダンジョンと呼ばれる。その場合、元々その魔力の範囲内にいた魔物がダンジョンの魔物として構成されることが多い。

 ダンジョンコアはフィールド型ダンジョンの中央部にあり、そこを守護者が守っているのは階層型ダンジョンと変わりはないのである。またフィールド型ダンジョンは環境そのものがダンジョンに変わるため、魔力由来の自然素材を作り出すことが多く階層型ダンジョンと同じく人の手によって管理されることが多い。


「そういうダンジョンもあるんだね。でもこことは違うんでしょ?」


〈ああ、そうじゃ。フィールド型ダンジョンも階層型ダンジョンと同じくダンジョンであることには変わりはないのじゃ。

 じゃから魔力の反応が自然と違う。ここはそう変わりないじゃろ?だから違うのじゃ〉


「確かにこの森はいつもと変わらない魔力の反応しかないね、鳥形の魔物しかいないっていうのを除くと」


〈それなら考えられることは何らかの原因による環境変化じゃな〉


「例えば?」


〈そうじゃのう、まぁだいたいこういったことが起きる原因は魔力によるものか、魔物によるものしかないのじゃが。

 魔力の反応はいつもと変わらないのであれば魔物が原因じゃろうな。強力な魔物が誕生したか来たことにより生態系が破壊されたのじゃろう〉


 この世界では魔物と言えど生きた生物である。魔物を含めた人や動物がいて生態系が成り立っている。もしそこにただそこにいなかった生物が来た程度では元々いた魔物などが駆逐して変わらずの生態系を営み続ける。これは魔物が、同種以外の魔物を襲う傾向にあるためである。

 しかしそこにいたよりも強力な魔物が生まれるもしくは来ることにより、既存の生態系を破壊してしまうことがある。通常強い魔物は魔力の多い環境を好むため、自身より弱い低位の魔物が生息している魔力が適さない環境には行かない及び魔力が少ないため誕生もしない。

 だが、何らかの原因で強い魔物の移動が起きたり、魔力の一時的な上昇で強い魔物が誕生してしまうことがある。今回の異変はこれらが原因とソタは考えていた。


〈それでユーグよ、どうする?わしらでこの異変を解決するか?

 それとも強い魔物が生息していると思われる場所を避けつつ移動するか?〉

 

 この辺りには村や町などが近くにはなく、一番近距離の報告する場所といえば第1分隊の面々と別れた町であった。その町の近くには砦もあり、軍が駐留してることからこの程度の異変ではものともしないと考え、町への報告はいらないと判断したのであった。

 それは鳥形の魔物しかいないとは言え出会ったのは低位の魔物のみだったためである。実際、大量発生しているわけでもなく強い魔物が人里近くに現れない限り、村程度でも大丈夫であった。


「うん、その魔物がどれくらい強いのかわからないから、今は移動を優先しよう。

 もしかするとユルゲンさんの従魔ほどの魔物かもしれないからね」


〈その可能性は限りなく低いと思うのじゃが、良い判断じゃ。それじゃあこれ以上森の奥には行かず、北の辺境都市の方に移動しよう。

 ちょうど森の奥に当たるのは北西のほうじゃからな。このまま東に進めば良いじゃろう〉


「うん!わかった」 「ぐるぅ!」 「ゴブ!」


 そうしてユーグたちは森を東に進むことにしたのであった。


 *****


 ユーグたちは森の中を東へと進み続けていた。その間にまた新たにいくつかの鳥形の魔物に遭遇していた。その魔物はフォレストペッカーとフォレストピジョンである。


 フォレストペッカーはキツツキ形の魔物である。鳥形の低位の魔物であり、素材はくちばしと魔石と羽が収穫できる。攻撃方法はくちばしを矢と見立てた突撃である。

 フォレストペッカーのくちばしは木を貫けるくらいだが、上位種になると鉱物も貫き砕くことができるようになる。

 

 フォレストピジョンは鳩形の魔物である。この魔物も鳥形の低位の魔物であり、素材として魔石と羽と肉が獲れる。肉はビックハーンとビックヘンヌほど人気はないが、好事家が好む。攻撃方法はビックハーンなどと同じく体を使った攻撃であった。

 ちなみにフォレストという名前がつく魔物はその形の中でも最も低い位の魔物である。


 ユーグたちと遭遇したフォレストペッカーは、多くても同時に2,3体までだったのでウォーターウォールで矢のような突撃を躱した後、ウォーターウォールの影響で動きが遅くなったフォレストペッカーたちを各個撃破した。

 

 フォレストピジョンはフォレストペッカーよりも一度に相対した数は多く5,6体であったが、フォレストペッカーほど動きが早くなく、ユーグの目でも動きが見えたため、各個をアロー系の魔法の一撃で倒していった。


「鳥形の魔物でもフォレストペッカーとフォレストピジョンは一度に戦う数が多かったね。

 そんなに強くなかったから大変ではなかったけど」


〈同じ形の魔物でも群れる魔物と群れない魔物もおるかのう。フォレストペッカーたちは前者でフォレストオウルは後者なんじゃろう。

 まぁ今回は上位種もおらず統率が取れてなかったのじゃが、もしいたらあの数でも厄介なことになるからのう。上位種の存在には注意するのじゃぞ〉


「うん、わかった。

 でもこんなに鳥形の魔物と遭遇して、お肉がいっぱい手に入ったし、薬草とかもいつも以上に生息してて鳥形の魔物だけなら森にとってもいいことだらけなんじゃ」


 ユーグたちは今しがた倒したフォレストオウルを解体しながら話していた。フォレストペッカーやフォレストピジョンが現れるようになってからフォレストオウルたちが出なくなったわけではなく、フォレストペッカーなどを含め魔物との遭遇率は上がっていた。

 しかしビックハーンたちとは遭遇しなくなっていた。元々狩りで人気の種であるので有名な生息地以外ではその数は少ないため、鳥形の魔物が増えたとしても他の種に比べ少ないようだ。


〈うむ、そういうわけにはいかんと思うのじゃがな。この魔物との遭遇率は少し異常じゃ。いくら環境が魔物に影響を与えると言っても魔物の数が多くなるとその逆もあり得る。

 つまり環境の魔力が多くなるのじゃ、そうするとますます強い魔物が生まれるようになり、果てには魔境になってしまうかもしれん。そこまでいかなくても魔物たちの食物がなくなり、食べるものを求めてスタンピードになってしまうのじゃ。

 それに薬草は魔力の量に比例してその数が増える、じゃからこの森でも魔力の量が多くなっているのじゃよ〉


 魔物は環境の魔力の影響受ける。基本的には魔力の影響はこの一方向のみであるが、いくつかの条件があればその逆つまりは魔物の魔力に環境が影響を受けることもあり得る。それが魔物の数である。魔物の数が多くなると、排泄物や生きているだけで放出する魔力がその場に留まりその環境の魔力が多くなる、そしてまた魔物が強い魔物に進化したり、その数も増やしていく。それが繰り返されるのちに生まれるのが魔境である。

 

 しかし魔境になるケースはほとんどない。それは魔物が数を増やしていく段階で、生態系を破壊し魔物の食物も食べきってしまい、その環境では生きられなくなった魔物たちが食物を求めて元いた環境から飛び出て大移動を起こすからである。これが俗にいうスタンピードである。魔境化はこのスタンピードが起こらず魔物の進化と数が増えることを繰り返し行われる末に起きることでこの世界でも数えるほどしか起きていない。スタンピードは魔物の駆除をしっかりと行われてる地域でも数十年に1回は起こることであった。ユーグたちがいる森でも薬草などの自然素材が増えているということは、通常と比べて魔力の量が多いという証拠でもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ