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ー冒険者協定ー

今日からしばらくは2話ずつです。


「そうなんだ。ユーグ君は3年も森に住んでたから、そんなに森の中歩くのも上手なんだね。

 それにしてもあれっすね、隊長、ロワイシュバリー王国はやっぱり酷い連中が多いっすね。

 子どもを【ジョブ】だけを理由に町からも追い出すなんて」


「そうだな、未だに戦争中と勘違いしてる奴らも多いと聞くしな。

 貴族の中でも戦時と思ってる奴らもいるんだろう。だから余計我々の仕事が重要になってくる」


「そうっすね」


「あのー、少し聞きたいことがあるんですけど良いですか?」


「あー、我々ばかり質問して申し訳ないね。

 何が聞きたいんだい?」


「あの皆さんが連れてる魔物がどういう魔物か知りたいんですけど……。

 こういうのって聞いてもいいんですか?」


「大丈夫だ。明確な弱点とかを聞かない限り、どんな種とかは聞いても問題はない。

 そうだな、私の従魔はシャドウウルフのトトとアサシンホークのユッタだ」


 シャドウウルフはオオカミ形の高位の魔物である。フォレストウルフ等の低位のオオカミ形の魔物の上位種ではあるが、その進化の道は果てしない。

 普通の森で見かけることはほぼ皆無の魔物である。その名の通り闇魔法で影を操ることを得意としている。ユーグたちが従魔部隊第1分隊の面々が、近づくのがわからなかったのもこの影の力のおかげである。


 アサシンホークは鷹形の高位の魔物である。この魔物もシャドウウルフ同様、鷹形の魔物の上位種で進化までするのが、かなり難しい魔物である。

 アサシンホークの特徴はその隠密性にあり、気配や魔力を消す術に長けており、飛翔音も消して飛ぶこともできる。またアサシンという名の通り一撃必殺の攻撃も得意としてる。


「俺のアレキサンダーはアーススクワロルだ。

 こんな小さいなりだけど度胸は凄いんだぜ」


 アーススクワロルはリス形の魔物である。土魔法を得意としている魔物で、魔法を使える動物形の魔物であるがそこまで高位の魔物ではない。

 しかしリス形の魔物自体、人前に出ることが稀であるため、従魔としても素材としても珍しい。


「そういえば、君の従魔のブリュー君は何ていう種なんだい?

 熊形の魔物なのはわかるが、種は全く見当もつかないのだが」


「僕もちゃんとはわかってないのですが、ソタが言うにはフォレストベアの変異種らしいです。

 まだ生まれて間もない頃に出会って、そこから一緒なんです」


「フォレストベアの変異種か、それはまた珍しい。

 なるほど、だからわからなかったのか」


「どういうこっすか?隊長」


「ああ、そうかドライツェン王国ではあまり変異種は出ないんだったな。

 変異種は通常種と違い姿や形、能力が違う。

 だからその変異種の親になる魔物も自分たちと異なる姿をしている変異種を子どものころに自分の群れから追い出すことがある。

 そのためここまで大きく成長した変異種は通常種とは見分けがつかないのだよ」


「ああなるほど、そういうことっすか。

 確か、それは前に兵士の訓練の時に勉強した気がするっす」


「だから我々も種まではわからなかったんだな。

 変異種を従魔にできるのは非常に幸運だからな、ユーグ君はブリュー君のことを大切にするんだよ」


「はい!もちろん大切な僕の家族です!」


「従魔を家族と呼べるほどの関係を築けてるのならユーグ君は良いテイマーになるだろうな。

 そうだな、他に聞きたいことはないか?」


「そうだ、ドライツェン王国について知りたいです!」


「我々の国について?……ドライツェン王国の何が知りたいんだい?」


「うーん、そうですね……。

 ドライツェン王国では冒険者はどういう感じですか?」


「冒険者か、そうだな……

 ユーグ君は冒険者協定を知っているか?」


「冒険者協定……?いや知らないです」


「まぁ簡単に言えば、国が冒険者の最低限の地位を保証し、その活動を支えることを約束するものだな。

 それと同時に冒険者は国の法律を守り、その国の依頼を優先的に受けるというものだ」


 冒険者という職が生まれたのは、人がまとまり国を作り未開の地を探索し始めた頃だと言われている。その未開の地を探索するのが冒険者であった。

 そのため元々冒険者は全体での結束を持っておらず、個々の集団でまとまっていた。それが徐々に国としてのまとまりが完成されてくると、冒険者も強大な魔物に対抗するためや広大な未開の地を探索するためにより大きく集団化していく。

 そしてその冒険者たちが上げていく成果に付随する富と名誉に気づいた貴族や国が冒険者たちを管理するようになり、冒険者ギルドが誕生した。

 それに加え冒険者は、ほかの職に就かないまた就けないものの受け皿になっていく。続いて中には伝説として有名のなり本として残される冒険者たちもいたが、そういう冒険者は稀であり、未開の地が徐々に減っていくと冒険者としての社会的な地位は下がり無頼の輩の集団として見られるようになった。

 そういう流れの中、ドライツェン王国は冒険者協定を作り出し冒険者の地位を上げ、無頼の輩を取り締まるようになっていく。そのおかげでドライツェン王国国内及び冒険者協定を結んでいる国の中では冒険者は無法者とは呼ばれなくなったのである。


「へぇー、そうだったんですね。

 僕、本の中でしか冒険者を見たことなくて。そんな風に言われてたなんて知らなかったです」


「未だに冒険者協定を結んでない国は、冒険者を無法者やら無頼の輩と見てるからな。

 それに実際そういったものは多いしな。隣の国のように。

 だからユーグ君の夢が冒険者になることならこの国に来たことは正解だったな。それに加えテイマーとしてもこの国では活躍できるんだよ」


「テイマーとして?それはどういうことですか?」


「我々を見ればわかると思うんだが、テイマーが国の軍の一部隊として活躍できるほどテイマーを重要視してるんだよ。

 テイマーというより魔物との関わりといった方が良いか。まぁそもそもこの国では【ジョブ】を優遇していないからな。【ジョブ】と関係がない職に就いてもこの国では大丈夫なんだが、まぁそこは置いといて、この国には魔物との関わり合いが優先される職は色んなのがあるからな。

 テイマーなら冒険者としてもそういった職の人の手助けができるから活躍ができるんだ」


「おおぅ!それは良かったです!」


「ユーグ君は冒険者になったらやりたいこととかあるんすか?」


「やりたいこと?……冒険者になることが目標だったから、そのあとのことはあまり……。

 でも、本に出てくるような冒険者になってみたいです、僕が憧れた冒険者のように未開の地の冒険をしてみたい!」


「うむ、それはいい夢、目標だな。それならば北の辺境都市を目指すと良いだろう。

 北の辺境都市は魔境の森の最前線に当たるところだ。そこには冒険者がたくさんいて、簡単な仕事から魔境の探索といったものもある。

 しかも土地の近くにはダンジョンもあるから研鑽を積むにもいい場所だよ」


 魔境とは現代にも残ってる未踏の地である。魔境には魔力が豊富にあり、強力な魔物も生息している。

 中には貴重な薬草や素材もあり、ドライツェン王国の冒険者は主にダンジョンとこの魔境の探索をしているものが多い。


「北の辺境都市……名前は何ていうところですか?」

 

「北の辺境都市、グリムノーデンだよ。辺境伯が治める領都でもあるからかなり大きい街だ」


〈うむ、魔境の近くか。

 それならお主の夢の実現に近いじゃろう。その都市は冒険者始めたばかりのものにも仕事はあるのか?〉


「はい、ソタ様。

 先ほども言いましたように簡単な仕事もありますが、魔境の森の浅い場所は低位の魔物も多く、それに薬草なども豊富にあるので冒険者になりたてのもの用の依頼もあるようです」


〈じゃあ、よかろう。さてユーグどうする?〉


「うん、僕でもできる仕事がその都市にあるならそこに行こうと思うよ」

 

2024/05/25誤字修正しました。

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