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ー従魔部隊ー

3話公開は本日までです。

明日からは2話ずつ投稿します。


 ダンジョンのために横道に逸れてしまった道程を、元のドライツェン王国に向かう道に戻って2日経った。その道中も特に大きな問題も起こらず平和に進んでいた。


「ドライツェン王国まであとどのくらいかかるんだろう?

 もう国境は超えているのかな?」


〈うーむ、どうかのう?

 わしもここまで来るのは久々じゃしのう、森の中じゃからわかりづらいのじゃ〉


「そっか、ドライツェン王国の街に入ったら普通に僕話せるかな。

 あの国境の街じゃ全然人と話せなかったから、今からなんか緊張してきた」


〈ドライツェン王国ではブリューやブラブもわしも表立って一緒にいれるからのう。

 そんな心配せんでも大丈夫じゃ。いざとなったらわしらも頑張るからのう〉


「ぐぅ!」


「ゴブ!」 

 

「うん、ありがとう!みんな!」


話しながら進み続け、少し開けたところを見つけたユーグたちはそこで休憩を取ることにした。

 しかしその休憩地に向かう複数の影がドライツェン王国側からやってきていた。


 *****


 ユーグたちが休憩を取る数時間前


「いやー、今日もいつもと変わらない森っすね。

 特に魔物の生態も変わらず、密入国者も見当たらないみたいで」


 赤毛の男が誰かに向けて話していた。その男の腰には剣帯が装備してあった。


「くぅるくー」


 そして赤毛の男の肩には1体のリス形の魔物がいた。


「なぁそうだろう、アレキサンダー。

 お前もそう思うよな。もう今日の警らはこの辺でいいんじゃないっすか?隊長」


「ダメだ、まだ規定の順路を回っていない。

 それに今日は何か少し森の雰囲気が違うみたいだとトトが言っている」


「がう」


 隊長と呼ばれた男が、赤毛の男に答える。

 その傍らには黒いオオカミ型の魔物がいた。後方には、大柄の男が周りを警戒しながら歩いていた。


「そうっすか、まぁ明日からうちの分隊は休みだからいいっすけどね。

 ああ早く街に行きたいっす」


「がう!」


「どうしたトト?何か見つけたのか?

 ……ここから5キロくらい先から人と魔物の臭いがするのか。5キロ先ならまだこっちの領域には入ってないのだが、こんな国境の森を歩いているというのは少しおかしいな。

 よしユッタ!お前なら相手にバレずに追跡できるだろ。

追跡して彼らが国境を越えてこっちに来たなら教えてくれ。

 この時間帯で国境を超えるとしたらあの休憩地で休憩を取るだろう、そこで合流しよう」


「ピューイ!」


 隊長の後ろの木がかすかに揺れる。空をみると緑の影が飛んでロワイシュバリー王国の方に向かっていくのだった。


 *****

 

「休憩もそろそろ終えて、出発しようか」


〈そう……っ!気をつけろ、ユーグ、ブリュー、ブラブわしら何かに囲まれておるぞ。

 魔力感知を使ってみろ。それと会話は声に出さないでするのじゃ〉


「ぐるぅ?」


「ゴブ?」


「えっ……

 〈わかった。うん!?これは何か薄い魔力で周囲を覆われている?〉」


〈そうじゃ、たぶん闇魔法で自身の臭いや気配、魔力などを誤魔化して、わしらに感知させないようにしておる。

 しかももしそれでもバレてしまったときは闇魔法を周囲に漂わせて数もわからないよう欺瞞工作もしておる。

 これは中々の手練れじゃぞ〉


〈どうしよう、ソタ?〉


〈ここは少し様子見じゃのう、向こうもそうしているみたいじゃしのう〉


 ・・・


 ユーグたちが休憩地に到着する前


「よし、ユッタから合図があった。

 合流地点に向かおう、その前にトト、闇魔法で俺たちの気配などを隠してくれ」


「がう!」


 隊長と呼ばれた男の近くにいた黒いオオカミから黒い影が広がり、辺りを包み込んでいく。

 

「ユッタからの情報だと密入国者は子ども1人に熊形の魔物1体、ゴブリン1体と小動物形の魔物も1体いるらしい。

 まぁ十中八九その子どもはテイマーだな」


「そうっすね、子どもで3体も魔物を連れていけるのはテイマーくらいしかいないっすもんね。

 それでどうします?流石に子どもで工作員の可能性はないと思うっすけど」


「そうだな、一応事情を聞いて一緒に砦に戻ることになるだろうな。

 テイマーならあの国で過ごすには、難しいだろうしな」


「わかりました、じゃあ急いで行きますか」


 そう赤毛の男が言うと、3人と2体が急いで移動を始めた。

 

 ・・・


「事前の情報通り、1人と3体だな。

 ちょうど休憩中に間に合ってよかった」


「しかしあの熊は珍しいですね。

 フォレストベアに似ていますけど、体色が違いますよね?何て種なんだろう?」


「そういうのはあとにしとけ、彼らに怪しいところがないか観察するんだぞ。

 万が一工作員だとしたら大変だからな」


「いやでもロワイシュバリー王国がテイマーを工作員にするとは思いませんね。

 ましてや我が国に送り出すなんて」


「それでも警戒は必要だ」


 3人の男と3体の魔物が、ユーグたちの周りを包囲するように散らばり観察を始める。

 しかしそれにソタが気づきユーグたちに警戒を促した。


「どうやら気づいてしまったようだな。しょうがない、こちらから声をかけるか……

 今から魔法を解く、警戒をするなとは言わないがこちらのことは攻撃しないでくれ!」


 *****


「今から魔法を解く、警戒をするなとは言わないがこちらのことは攻撃しないでくれ!」


 ユーグたちにその声が聞こえると、辺りの魔力が消えていく。

 そこに現れたのは3人の男と2体の魔物だった。


「あなたたちは?」


「俺たちはドライツェン王国従魔部隊第1分隊だ。

 君たちの目的地はドライツェン王国で間違いないな?」

 

〈ユーグ、こいつらは中々の強敵じゃ。

 ここは言う通りにした方が良い〉


「……。はい、そうです」


「この森を進んで、ドライツェン王国に向かっていたということは正規のルートではないというのは理解しているな。

 それで目的は?」


「……。冒険者になるために来ました。

 ロワイシュバリー王国では冒険者があまり活躍できないって聞いたから」


「ふむ、そうか……。

 ロベルト、フランツ、お前らはどう見る?」


「俺は大丈夫だと思うっすよ。

 そもそもロワイシュバリー王国でのテイマーの工作員なんて考える方がおかしいっすからね」


「私もそう思います。

 見たところあまり武術の鍛錬もされていないようにも見れるので工作員の可能性は低いかと」


「それなら予定通り砦に!……(この魔力は!)」


「……!ぐっ」


「……!」


〈お前らは俺たちをどうする気だ!〉


 3人の男の内の1人が話してる途中に、ソタが急激に魔力を練り上げ威圧し始める。


「(この魔力は!)

 ……落ち着い……てください。

 我々はあなた方……を保護す……るため砦に向か……おうとしただ……けです。

 砦で正式に入……国の手続きを行え……ば大丈夫ですから」


「ソタ……少し……落ち着ついて、ちょっと魔力がキツイ」


〈おう、そうか、それはすまんかったのう〉


 ユーグの声を聞き少し落ち着くソタであったが、まだ男たちを警戒していた。

 

「ふぅ、すみません、ちゃんと説明してから話を進めば良かったですね。

 我々従魔部隊第1分隊はこの国境の森の警らについてまして、怪しいものが越境しないか周っていたのです。

 それで警ら中にあなた方を発見して怪しいものじゃなければ砦で正式な入国の手続きをしてもらおうと考えていたのですが……」


「ふぅ、えっと説明ありがとうございます。

 僕はそれでいいと思うんですけど、ソタが……あっソタっていうのは、このモモンガの魔物なんですけど」


「はぁ、ソタ様ですか……」


〈わしらを拘束したりしないんじゃったら、大丈夫じゃ。

 さっきは少し取り乱したりして申し訳なかったのう〉


「い、いえ、こちらこそ説明が足りなくて申し訳ございません」


「良かった、そういえば自己紹介してなかったですね。えっと僕はユーグって言います。

 【ジョブ】はテイマーです。それでこの熊形の魔物がブリューって名前でこのゴブリンはブラブって名前です」


 ユーグは自分の自己紹介をし、ブリューとブラブの紹介を従魔部隊の人たちにしていく。


「あっ、ありがとう。そうだなではこちらも自己紹介といこうか。

 私はユルゲン・ザクセンと言うものだ。そして私の従魔のトトともう1体、来い、ユッタ!」


「ピューイ!」


 そう言いながらユルゲンは手を前に出すとユーグたちの後方から1体の鷲形の魔物が現れ、ユルゲンの手に乗った。


「わっ全然気が付かなかった!」


「ぐぅる!?」


「ゴブ!?」


「ははは、この子はちょっとばかし隠れるのが上手いからね、簡単には見つけられないよ。よしあとは……」

 

 ユルゲンはそう言いながら顔を従魔部隊の面々に向ける。


「じゃあ先に私から第1分隊隊員のロベルト・ベッカーです。

 私はテイマーじゃないんですけど一応この部隊に配属されています。それとユーグ君一応自分の【ジョブ】は話さず、人の【ジョブ】も聞かない方が良いですよ。それがマナーですからね。

 と言ってもテイマーの方々は言わなくてもわかってしまうものですけど」


「あっはい、ありがとうございます!」


「次は俺っすね。俺はフランツだ。

 隊長やロベルト違って俺は普通の平民だからな。そんなに緊張しなくても大丈夫だぞ。

 そしてこのリス形の魔物が俺の従魔アレキサンダーだ」


「くるぅ!」


「これでお互いの自己紹介が済んだようだな、そうだな詳しい話は移動しながら話すとするか。

 ユーグ君たちも、もう移動する準備は終わってるかな?」

 

「はい、大丈夫です!」


「じゃあ移動を始めるか」


 

明日からは2話です

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