ー守護者ー
投稿遅れました。
3話公開は本日までです。
ユーグは、守護者の間の前で十分な休憩を取り、その間へと続く門の扉に手をかけた。扉を開け中を見ると何も存在していなかった。
「あれ?守護者は?」
〈通常守護者は、守護者の間に侵入者が入った時点で現れるのじゃ。
じゃからまだ扉を開けた程度じゃ現れん〉
「そうなんだ、じゃあ入ろうか!」
「ぐぅ!」
「ゴブ!」
そう言うとユーグたちは、守護者の間に足を踏み入れる。
ユーグたち全員が守護者の間に侵入し、数歩歩くと、部屋の中央に黒い煙が3つほど現れ渦を巻き始める。その3つの黒い煙が形となり魔物が現れた。
「あれは?」
〈ふむ、あれはロックビーストじゃな。岩の獣じゃな。
岩そのものが獣の形になってる魔物じゃ、岩じゃけど動きは俊敏であるから、そこは気を付けるのじゃぞ〉
ロックビーストは、岩そのものが四つ足の獣の形になっている魔物である。ロックリザードなどと同格の魔物で大きさはフォレストウルフ程度はある。
体躯が岩そのものであるため、防御には秀でており、また獣の形でもあるために岩の体躯とは思えない俊敏性を有している。
「よし、まずは全体の動きを止めて一体を速攻で倒す!
…………ウォーターピラー!」
ユーグはいつもウォーターピラーにかけてる魔力より多く、魔力を込めウォーターピラーを放出する。
3体のロックビーストを巻き込むようにその足元から水の柱が出現した。3体のロックビーストが水の柱に囚われた隙をブリューは逃さず、その中の一体に向かって走り出す。
「ぐるぅあ!」
ブリューは思っていた。以前ロックリザードに対した時は、自身の魔力を込めた爪の一撃でも倒せなかったことを。
あのときあの岩をも貫くことができていたらと。ロックリザードを倒したときも、ユーグと力を合わせて戦ったので特に苦戦したわけではなかったが、今まで倒してきた魔物に比べて強敵と言えたロックリザードを自身の爪で倒せなかったことはブリューの野生のプライドを刺激していた。
それが今回のロックリザードと似て岩の体躯をしているロックビーストを見て、その気持ちに拍車をかける。そしてその思いが今までの鍛錬と合わさり形となって新たな力をブリューにもたらした。
爪に今まで以上の魔力が集まり光り始めた。光が収まると、そこには爪に纏うように氷爪ができていた。ブリューは、その氷爪でロックビーストに斬撃を浴びせる。今までであればロックビーストの体に傷をつける程度であった攻撃が、ロックビーストの体を真っ二つに切り裂いた。
〈ほう、ブリューもやるようになったじゃないか。
自身の属性を種を乗り越え扱えるようになるとは〉
ブリューは新たな力でロックビーストを倒したが、使い始めた力は慣れていないため、想像以上に魔力を必要としすでに疲れているように見えた。
「よし、残りの二体は僕とブラブで倒そう!
ブリューは倒さなくていいから一体を抑えといて」
「……ぐぅ!」
「行くよ!ブラブ!」
「ゴブ!」
ウォーターピラーの効果が切れ、ロックビーストたちは解き放たれた。一体はブリューが相対し、もう一体はユーグとブラブが二人がかりで戦う。
先の氷爪での攻撃を見ていたロックビーストはブリューを警戒し、動きが少し鈍っていた。その隙にユーグが再び対応しているロックビーストを拘束しようとする。
「よし!今だ、ウォーターバインド!」
ユーグの元からロックビーストに向かって水の輪が飛ぶ。
その輪が動きが鈍ったロックビーストに当たり、その体躯を拘束する。
「ゴブブブ!」
ブラブの手元に1本の土の槍が現れ、拘束されたロックビーストに飛んでいく。その槍がロックビーストに当たるが、突き刺さるほどの威力はなく、傷をつける程度であった。
「ブラブの魔法の練度じゃ、まだ突き刺さるほどのダメージは与えられないか……、
よし、ここは数で勝負だ!」
「ウォーターアロー×10!」
「ゴブブ×5!」
ウォーターバインドで拘束したまま、ユーグは新たに水の矢を10本出現させロックビーストに飛ばす。負けじとブラブも5本の土の矢を出現させ飛ばす。
水の矢と土の矢ともに、先が台形の形になっており、突き刺さるというより打撃のダメージを与えるようにユーグ、ブラブともにイメージしたものであった。
一度に15本の矢が、ロックビーストの体に当たり、岩の体躯にひびが入りはじめた。
「よし、そのひびに向かって、今度はウォーターランス×2!」
ユーグの元に水の槍が2本現れ、その槍がロックビーストのひびに向かって飛んでいく。すでにウォーターバインドの拘束は解除されており、動きを止めるようにブラブがアースアローで牽制していた。
1本の水の槍がロックビーストに突き刺さる。突き刺さり槍の動きが止まった瞬間に普通の水に戻り、そのあとすぐに2本目の槍がより深くに突き刺さる。この2本の槍がとどめとなり、ロックビーストは動きを止めた。
「うん、うまくいった!あとは最後のロックビーストだね」
残り一体のロックビーストはブリューの牽制もあり、全く動けずにいた。
その隙に二体目のロックビーストを倒したような手順でユーグとブラブは攻撃を加え、最後のロックビーストも倒したのであった。
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「ふぅ、疲れた。
ロックビースト三体は結構強かったかも。ブリューが頑張ってくれなきゃ負けてたかも」
〈そうじゃのう。
ブリューが自身の魔法属性を使えるようになっておらんかったら、わしが手伝う必要があったのう。こればかりはブリューのおかげじゃな〉
「ぐぅるるる!」
「それにしても、ブリューも魔法を使えるようになるなんて凄いね!
これで魔法だけで遠距離から狩りができるね!」
〈いや、ブリューはまだ魔法属性を使えるようになっただけで、魔法は使えはしないのじゃよ。
まだまだ魔法に対する練度が足りんのじゃ。まぁでも属性を具現化できるようになってブリューの攻撃力が上がったのは変わりないのう〉
「ぐぅる!」
「うん、そうだね。これからも鍛錬をしていって、魔法を使えるようになればいいね。
よし、とりあえず魔石を拾って、あとは……あっあそこに宝箱が出てる」
「ぐるぅ!」
「ゴブブ!」
今まで何もなかった部屋の隅に宝箱が出現していた。その宝箱は土の箱をしており、地面から生えている形で表れていた。ダンジョン特有の現象である。
外観はそのダンジョンに対応した形をしており、階層型洞窟ダンジョンではそれに合わせ、土の箱であった。宝箱の中身は、素材や道具、武器、防具などが入っており、基本的には魔力によって生み出されていた。
何故このような形でダンジョンが物を生み出しているかは、未だに謎であり、多くの学者が頭を悩ましている。
〈そうじゃのう、宝箱を開けるとするか。
難度1の宝箱にはトラップも仕掛けられてはいないからの、誰が開けても大丈夫じゃ〉
「じゃあ僕が開けたい!それでいい?ブリュー、ブラブ」
「ぐぅ」
「ゴブ」
「ありがとう!じゃあ開けるね」
ユーグは宝箱に近づき、箱の上部を手に取って開いた。中には3つの岩の塊が入っていた。
「岩?初めての宝箱が岩なんてそんなことある?」
〈まぁ難度1じゃからな、そういうこともあるのじゃよ。それに魔力感知を使ってみるのじゃ〉
「魔力感知?……うん?
この岩たち魔力が普通の岩よりある」
〈そうじゃ、それに色もよく見ると黒っぽいじゃろう?
これは鉄鉱石じゃ、それに普通の鉄鉱石より魔力を帯びておる魔鉄鉱石にあたるものじゃのう〉
「魔鉄鉱石?何それ?」
〈魔鉄鉱石はいわゆる魔法鉱石の一種じゃのう。鉄よりも魔力が豊富にあり、その魔力をちゃんと練ってインゴットにすれば魔鉄になる。
それで武器などを作れば、お主の木の枝みたいに容易に魔力を流せたり、纏うこともできる武器になるのじゃよ〉
「へぇー、じゃあけっこうなお宝になるってこと?」
〈うーん、そこまで高値がつくような希少なものではないな、ベテランの冒険者なら魔鉄の武器を装備しておるじゃろうしな。
まぁ駆け出しにあたるお主の武器にするなら少し贅沢になるって感じじゃのう。これは売らずに良い鍛冶屋に武器を作る材料にした方が良いじゃろう〉
「うん、ソタのアドバイス通りにするよ!
よし、宝箱の開封も済んだところでダンジョンコアを見つけないと」
20時と21時にも投稿します。




